文芸表現学科

にゃんこ大戦争の裏側にあるもの|企業取材記事

1回生の「アーティクルライティング」の授業では、さまざまな場所を訪問して取材したり、インタビューをしたりして、記事を書いています。12月には、京都市下京区にあるポノス株式会社を訪れました。学生の記事のなかから、ひとつを紹介します。
 
 
>> ポノス株式会社ホームページ
 
 
キモカワにゃんこを売りにしたスマホゲームをご存知だろうか。競争の激しいスマホゲーム業界の中で根強い人気を誇り、ついに今年2200万ダウンロードを突破した「にゃんこ大戦争」だ。誰でも描けそうなキモカワにゃんこと、単純明快なルールから、大人だけでなく小学生にも人気がある。キモカワにゃんこグッズもウケがいい。今回はそんな、にゃんこ大戦争を手がけるゲーム開発会社「PONOS」にお邪魔し、ゲーム作りの現場や働く人たちを取材した。
 
 
明るくて、開放的なオフィス
 
ポノスのオフィスは、京都の四条通りに面したビルにある。8階のオフィスからは、ちょうど祇園祭の山鉾巡行が見えるらしい。管理部の柏亮平さんと西野友彩さんに案内されて入ったオフィスは、思っていた以上に開放的で、会社というよりもお洒落なカフェに近かった。白とレンガを基調にした壁、360度ガラス張りの会議室、芝のようなカーペットが敷いてある広場など。ガラス張りの会議室の中では、ちょうどにゃんこ大戦争の開発メンバーによる会議が開かれていて、柏さんは「ガラス張りだとサボれないんですよ」と笑った。芝のようなカーペットの上では、ごはんを食べたり、会議をしたり、休み時間になると筋トレを始める人もいるそうだ。カフェに近いと書いたとおり、少し前までは会社の入り口に扉がなかったため、カフェだと間違えて入ってきた人もいたとか。今ではプロジェクションマッピングが投影された扉があり、インターフォンを押した訪問者を「Welcome」の文字で歓迎している。
 

柏亮平さんと西野友彩さん

柏亮平さんと西野友彩さん


ガラス張りのミーティングルーム

ガラス張りのミーティングルーム


「芝生」スペース。全員での会議や、採用説明会などにも利用。

「芝生」スペース。全員での会議や、採用説明会などにも利用。


 
 
オフィスの中にBARがある?
 
ポノスのオフィスを訪れて一番驚いたことは、オフィス内にお酒が飲めるバーがあることだ。しかも、フリードリンク。社員は午後7時以降、お酒が飲めるようになっている。お酒好きにとってはなんとも嬉しいサービスだ。
なぜ社内にバーがあるのか。それはゲーム開発会社ならではの理由だった。ポノスで働くのは、デザイナーやプログラマーといった人たちが多い。特にプログラマーはインドアな人が多く、普通のサラリーマンのような、いわゆる「飲みニケーション」をする機会が中々ない。そこで、社内にバーがあればそういった機会も作れるのでは? と社内にバーを作ったそうだ。ちなみにお酒以外にも野菜ジュースや水、レッドブル、炭酸飲料などがたくさんあった。もちろんどれも無料だ。無料でお酒が飲めるなら、みんな喜んでバーに集まる・・・かと思いきや、社内にあると逆に使わないらしい。今は週に1回ほど、お酒好きな人がバーテンをしている。飲み物は社員の好みで揃えるため、養命酒が入っていたこともあったそうだ。ちなみに、仕事中に飲むのはもちろん水である。
 
週末は誰かがバーテンになったりもする。

週末は誰かがバーテンになったりもする。


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ゲームを作っているのは、こんな人たち
 
どんなゲームでも普通は、プロデューサー、デザイナー、プログラマーの三つの役職の人たちが協力して製作する。ポノスの社員はにゃんこ大戦争を作った当時9名しかおらず、なんとにゃんこ大戦争はたった3名で製作された。もちろん、各役職が1人ずつしかいないので人手はかけられない。「誰でも描けそう」と言われているにゃんこ大戦争のにゃんこ達は、実は「人手のかからない簡単なデザインにする必要があった」という切ない事情から生まれていた。
そんなポノスは現在、75名の社員を抱える会社にまで成長した。ポノスでは女性社員も多く、75名の社員のうち、1/3が女性社員で構成されている。傾向としてプログラマーは男性が多く、デザイナーは女性が多いようだ。意外だったのは、外国人社員も多かったこと。なんと75名中、20名が外国人社員だった。にゃんこ大戦争は海外バージョンも制作されているため、それに合わせて韓国や中国、オランダ、ベルギー、南アフリカなど、様々な国からやってきた外国人社員たちが、海外版のにゃんこ大戦争を手助けしている。
 
もちろんポノスでは新卒もとっていて、今年は5人の新入社員を迎えたそうだ。驚いたのは、新入社員がチームを組んで、いきなりスマホゲームを開発するという新人研修があることだった。デザイン、開発からパブリッシュまでを通して体験することで、少しづついいものを作れるようになっていくそうだ。
ゲーム制作会社ということもあり、やはり社員はゲーム好きな人が多い。柏さんいわく「とんでもないゲーマー」もいるとか。ポノスの社内にいると、雰囲気や働く人たちから、ゲームに対する愛情がじわじわと伝わってくる。
 
長いフロアは奥へ行くほど高くなっていて、全体を広く見渡せる工夫がされている。

長いフロアは奥へ行くほど高くなっていて、全体を広く見渡せる工夫がされている。


 
にゃんこのぬいぐるみも、至るところに。

にゃんこのぬいぐるみも、至るところに。


 
 
ポノスを楽しむ
 
ポノスでは祇園祭になると、浴衣で出勤すると社長から金一封をもらえるという「浴衣デー」がある。しかもその日の昼は、社内でお酒を飲んだりして、仕事をしなくてもいい。8階のオフィスで祇園祭の山鉾巡行を見ながらお酒を飲むなんて、あの凄まじい人波に押しつぶされながら祭りを鑑賞するよりよっぽど優雅で贅沢な楽しみ方だ。うらやましい。ポノスでは浴衣デーの他にも、月に1回の飲み会や、年に1回の社員旅行、デジタル一切なしのキャンプなど様々な催し物がある。
自分の好きなフィギュアが仕事場に持ち込み可能だったり(仕事机にずらっと並んでいたフィギュアが衝撃的だった)、セーラー服での出勤がOKなど、面白い規則もたくさんある。取材中に思わず「こんな職場で働きたい」と思ってしまうほどに魅力的な職場だった。
 
今年で3周年を迎え、ますます色々な人たちに遊ばれるようになったにゃんこ大戦争。数多くの人を楽しませ続けているゲームの裏側には、同じようにゲーム作りを楽しむ作り手、そしてそれを支えるオフィスがあった。
 
 
文・ 西村有美香(文芸表現学科1年)
 
 
◇おなじ授業で、美術展に行ったときの記事はこちらからご覧いただけます
「はじめての美術展―「マグリット展」を観る」
 

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