文芸表現学科

「都をどり短歌賞」大賞作品を展示しています —都をどりウェルカムアート

大学では4月1日から「都をどりin春秋座」を開催中です。
今年のウェルカムアートは全学科から募ったアイデアをもとに作成され、昨年から更ににぎやかになりました。
 
文芸表現学科からは上終歌会との協働で「都をどり短歌賞」を開催し、短歌を公募しました。
すでに瓜生通信webと上終歌会ツイッターにて発表されていますが、ここでも賞と選評を掲載します。
 
 
詠題「都をどり」
 
大賞
長時間露光のなかに咲きいづるだらりの帯の金糸の刺繍 (穂崎円)
 
次席
春はええなよーいやさーが始まるねんなんやろなあ嬉しなるねん (小山美保子)
 
佳作
まなざしは汀線に似てしとやかに袖口から四季をこぼして (駒田隼也)
 
《大賞作品選評》
芸妓さんの踊り姿をシャッタースピードを抑えた長時間露光で捉えるという発想は非常に独創的で、下の句の「だらりの帯の金糸の刺繍」のズームアップも見事です。長時間露光で描き出される幻想的なイメージに圧倒されました。
—辻本智哉(上終歌会・第二期部長)
 
 
 
詠題「春」
 
大賞
肌のあるものたちがみな肌を脱ぐ水平線を揺らす春風 (井村拓哉)
 
次席
指先から春はじわじわやって来て筋を取りつつ豆ご飯炊く (大江美典)
 
佳作
さみどりのきみのスカート特別なかたちで去ってゆく春もある (中山顕)
またなにか思ひだせさう春の窓陽が射してゐるのにつめたくて (山内優花)
 
《大賞作品選評》
「肌のあるものたちがみな肌を脱ぐ」から感じる心地よい潔さは、春を思う明るさを上手く表現しています。そこから下の句の情景描写への連なりも秀逸で、ありきたりな表現に頼らない作者の姿勢も含め、賞を贈りたいと思います。
—山内優花(上終歌会・第一期部長)
 
 
 
すでに回廊のガラス戸に大賞作品を展示しています。デザインは情報デザイン学科が担当しました!
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昨年から話題の「HANAO SHOES」の展示をはじめ、他学科のウェルカムアートもたくさんありますよ〜。
大きなガラス戸にずらっと展示している様子はなかなか迫力があります。
 
 
そして3月8日の選考会の様子を写真でお届け。
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撮影中にちらっと見えた、詠草の書き込みの密度がていねいな読みを表していました。
以下、選考にお越しくださった永田淳先生(歌人/本学科非常勤講師)からの全体の講評です。
 
 
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 小学生の微笑ましい歌から、70代以上のベテランの歌まで応募総数は137首であった。選考に当たったのは、上終歌会のメンバー9名に私を加えた10名。それぞれが持ち点、「都をどり」に関しては◎1つ、○4つ、「春」に関しては◎1つ、○5つを投票。◎を2点、○を1点とし、2点以上を集めた歌について集中的に討議した。
  
 題詠「都をどり」は芸舞妓に焦点を当てた歌、「よーいやさー」の掛け声、あるいは祇園の街並みを描写した歌などが多く見受けられたが、衣裳の帯に注目した一首が大賞に決まった。受賞作は結句に向けて、帯から金糸、そして刺繍へとカメラワークでズームしてゆくような視点の鮮やかさ、そしてその結句を予見させるような初句二句の「長時間露光」という撮影用語などに評価が集まった。また「都をどり」という題に相応しい三句目以降の絢爛、艶やかな雰囲気も、今回のウエルカムアートに最も適うという意見も多く出た。  
 
 次席となった一首の愛唱性の高さ、「よーいやさー」の掛け声と関西弁の相性のよさも高く評価され、カッティングシートで貼り出されるならこちらの方がインパクトが強い、という評も出た。ただ、第一回目ということもあり、今後の賞の方向性を強く規定してしまいかねない、という意見もあり惜しくも受賞とはならなかった。  
 
 題詠「春」に関しては、票がかなり分散し◎だけの歌が実に6首に及んだ。その中で受賞となった一首は、生きとし生けるものがみな身軽になっていく様子を「肌を脱ぐ」という抽象的かつ物理的にも手触りのある言葉で表現し、下の句の茫洋とした春らしさに繋げたところに高い評価が集まった。  
 
 佳作となった二首のような若い、あるいはひりひりとした感受性の歌に票が集まる一方で、次席となった一首のような生活に根ざした厨歌にも好意的な意見が多く寄せられた。ただ、筋を取るのは三度豆やサヤエンドウではないのか、「取りつつ」と「炊く」の同時性がおかしいのではないか、との意見もあった。  
 
 全体的に見ると、「都をどり」の方が題をこなしにくく、都をどりを正面から詠った歌がほとんど見受けられなかった。一首で表現するのは難しいとは思うが、なにかしらの切り口を見せてくれるような一首に今後、出合えたら嬉しいと思っている。  
 
 
永田淳(歌人)
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改めましてたくさんのご応募をいただき、本当にありがとうございました。
ウェルカムアートの展示は都をどりの最終日、4月24日までとなります。
ぜひとも春の瓜生山へお越しください!
 
 
都をどりin春秋座 公式HP
http://miyako-shunjuza.jp
 
 
 
 
 
(スタッフ・加藤)

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