- 2018年7月10日
- ニュース
舞台: したため #6 『文字移植』
以前にもお二人の紹介はさせていただきましたが、新たにお知らせです。
修了生で現在活躍中の和田ながらさんが演出・構成、林葵衣さんが美術を担当される舞台です。(最後にお二人の紹介も載せています)
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したため#6『文字移植』
わたしはどうしてもこの〈小説〉を翻訳してしまわないといけないと島へ来てからそのことばかり考えているくせに実際にはまだ何もしていなかった。あと一日しか残されていないというのにわたしはまだ何をどう訳せばいいのか見当もつかずにいた。
多和田葉子『文字移植』より(講談社文芸文庫「かかとを失くして|三人関係|文字移植」)
ドイツ語と日本語、ふたつの言語を往還しながら創作活動を展開する作家・多和田葉子の初期作『文字移植』は、読点のない地の文と読点のみで連ねられていく逐語的な翻訳文、そのふたつが交互にあらわれるという特異な構造をもった短編小説。移して植えかえたものがより強く生きるのか弱って死んでしまうのか、はたまたまったく別の変容を遂げてしまうのか、誰もわからない。けれど、多和田葉子の言葉を俳優に「移植」したいと望み、愚直な疾走に懸けた初演は、美術家・林葵衣の手がけた舞台美術と共に高い評価を得ました。
この夏、したためはふたたび走り出します。さらに遠くへ、もっと向こうへ。したため初の東京公演、どうぞご期待ください。
2016年初演時のレビュー
彼ら、彼女らはどのように言葉と向き合っているのだろうか。言葉の群れの生命を守ること。そのことを使命として与えられ、全員が一丸となってその命の火を決して絶やさないように、次から次へと新しい肉体へ移植し続けている、そのように見受けられるというのが個人的な見解である。――綾門優季(青年団リンク キュイ主宰/劇作家/演出家)
アトリエ劇研 CRITIQUE より一部抜粋
それぞれの人物は翻訳されようとして、未だ意味を決定されない文字に、見えてくる。または意味を決定されない人物に、見えてくる。意味が途中で剥奪された身体に、見えてくる。権威を聖ゲオルグに奪われた、竜に見えてくる。(中略)したため。それは豊穣さを呼びこむ、新しい作法なのかもしれない。――川崎歩(ダンス・映像作家)
アトリエ劇研 CRITIQUE より一部抜粋
「犠牲者」という単語は、ドイツ語では「O」の字で始まる(Opfer)。紙面を蝕む、「O」のかたち。それは、空虚な穴であり、犠牲者が沈黙の叫びをあげる口のかたちなのかもしれない。ドイツ語から日本語へ、書かれたテクストから生身の身体が発語する演劇へ、エフェメラルな音声から物質的な痕跡へ。(中略)俳優の身体表現と声、舞台装置によって、テクストの密度が音響的・立体的に立ち上がり、「テクストは平面ではない」ことが身体的に了解された、優れた公演だった。――高嶋慈(美術批評)「artscape」レビュー (大日本印刷発行、2016年7月15日号) より一部抜粋
公演情報
原作|多和田葉子
演出・構成|和田ながら
美術|林葵衣
出演|穐月萌 岸本昌也 菅一馬 多田香織(KAKUTA)
日程|2018年8月11日(土)~14日(火)
11日(土) 19:00*1
12日(日) 14:00*2/19:00*3
13日(月) 14:00*4/19:30
14日(火) 14:00
*受付は開演の40分前より開始いたします。開場は開演の20分前を予定しております。
ポストパフォーマンストーク|
終演後、ゲストをお招きして作品にまつわるトークを実施します。
*1 綾門優季(青年団リンク キュイ主宰/劇作家/演出家)
*2 蜂巣もも(グループ・野原/青年団演出部)
*3 渋革まろん(批評家/演出家)
*4 佐々木敦(批評家)
会場|こまばアゴラ劇場
〒153-0041 目黒区駒場1-11-13 TEL:03-3467-2743
*京王井の頭線「駒場東大前」駅 東口より徒歩3分
*会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際には公共交通機関をご利用ください。
■料金
一般 前売2,700円 当日3,000円
25歳以下 前売2,200円 当日2,500円
高校生以下 1,000円(前売・当日一律)
*日時指定・全席自由・整理番号付き
*25歳以下、高校生以下チケットをご利用の方は、当日受付にて証明できるものをご提示ください。
*未就学児童はご入場いただけません。
■チケット取り扱い ※6月9日(土)より受付開始
[ウェブ]専用フォームよりお申込みください。>>チケット予約フォーム
[メール]info.shitatame@gmail.com まで、希望公演日時/お名前/券種/人数/ご連絡先を明記の上メールをお送りください。こちらからの返信を以てご予約完了となります。
[演劇パスで(クレジットカード決済)]
http://engeki.jp/pass/events/detail/415
■クレジット
照明|吉田一弥
音響|甲田徹
衣装|清川敦子(atm)
舞台監督|北方こだち
宣伝美術|岸本昌也
メインビジュアル|林葵衣
制作|渡邉裕史
京都芸術センター制作支援事業
芸術総監督|平田オリザ
技術協力|鈴木健介(アゴラ企画)
制作協力|木元太郎(アゴラ企画)
企画制作|したため/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
助成|文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
主催|(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
■お問合せ
mail. info.shitatame@gmail.com
tel. 050-5318-7717(ワタナベ)
講演情報は、以下より転載しています
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改めてお二人のご紹介です。
したため
京都を拠点に活動する演出家・和田ながらのユニット。名前の由来は、手紙を「したためる」。人間のいとなみについて、言葉や身体や時間を使って思考する試み。和田は京都造形芸術大学芸術学部映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院芸術研究科修士課程修了。俳優の日常生活からパフォーマンスを立ち上げた#1『巣』(2011年2月)より活動を開始。以降、主な作品に、太田省吾のテキストをコラージュし用いた#2『はだあし』(2011年12月)、作家ジョルジュ・ペレックの記憶にまつわる作業を参照した『肩甲骨と鎖骨』(2015年3月)、日々の記憶を思い返すこと/損なうことをめぐる#3『わたしのある日』(2015年10月)がある。また、同じく京都を拠点に活動する同世代ユニットとの合同企画や、「Dance Fanfare Kyoto vol.01」、KAIKA「gate#11」「gateリターンズ」、「芸創CONNECT vol.7」にて作品を上演。2015年よりアトリエ劇研創造サポートカンパニー。2015年、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5最優秀作品賞受賞(三島由紀夫『葵上』演出による)。
アトリエ劇研-atelier GEKKEN webサイト artist page より
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林 葵衣 (Hayashi aoi)
1988 京都府出身
2011 京都造形芸術大学 情報デザイン学科 映像メディアコース 卒業
2013 京都造形芸術大学 修士課程 修了
京都在住
statement
身体は自分の意図通りに完璧には動かせない。
細胞は一年で勝手にほぼ入れ替わる、髪は伸び怪我は治る。ウイルスが侵入すれば熱が出る。
自分のものではないようにもどかしく思う身体を、意識で介入できない機能を可視化し、他者としてみつめることで、自分のものとして今一度体に取り込みたい。
tumblerのprofile pageより抜粋
その他、林葵衣さんの展覧会のお知らせ・近況など
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