歴史遺産コース 石井 瑞恵
仏像好きが高じて歴史遺産コースに入学したので、卒業研究は地元の仏像をテーマにしたいと思っていました。寛益寺(かんにゃくじ)像は素朴でユーモラスな表情をもついかにも地方仏といった姿の鉈彫り像です。鉈彫りとは像の表面に丸鑿の痕を残す彫刻技法で、平安時代十世紀頃から鎌倉時代初期にかけて、関東を中心に東国一帯に流行した一様式です。本像に関する資料が少なく困難が予想されましたが、もともと鉈彫り仏が好きだったこともあり本研究に取り組むことにしました。
本像は肉髻や衲衣に鑿痕を残し、顔や胸部などの肉身部は平滑であるという彫り分けがされています。各地の鉈彫り像の図版から部位による彫刻状態を確認して比較することで、彫り分けによる分類を検討し本像の特徴を明らかにしました。幸運にも最澄自刻像との関連を示唆する論文や天保6年の御開帳に関する史料に出会い、造像と信仰の背景を踏まえて本像における鉈彫り表現の意味や位置づけについて考察しました。
顔を平滑に彫る像が多いことや樹木信仰といった東国の鉈彫り像との共通点や、天台薬師信仰の伝播や山岳信仰など複合的な背景から本像が造像された可能性が示唆されました。
新潟・寛益寺本尊薬師如来立像における鉈彫り表現の考察
新潟県
石井 瑞恵
歴史遺産コース
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