和の伝統文化コース 松崎 みすず
光明寺本『当麻曼荼羅縁起』で最初に注目したのは、波文様の建具である。波文様の反復は明らかに意図的と考えられるが、先行研究での言及は少ない。そこで、波文様と画中の当麻曼荼羅との関係性から浄土教的側面の考察を進めた。
しかし、本絵巻には浄土教以外の説話的要素も多い。本絵巻は当麻曼荼羅縁起の現存最古の絵画化作例で、主題は主人公の極楽往生と、その前提となる当麻曼荼羅織成の奇瑞である。以降の作例とは異なり、当麻寺の創建縁起が描かれていないのは、制作主体の目的が利生譚説話のみで、布教や勧進ではなかったからではないか。当麻曼荼羅縁起が文献に初見されるのは鎌倉時代初頭であるが、その契機を平氏による南都焼討からの復興事業とし、精神的復興の手段としての縁起収集・記録・生成が行われたとする研究がある。当麻曼荼羅縁起の生成もその一環ならば、当時朝廷の中枢にあって復興事業を主導していた摂関家・九条家が関与しているのではないか。九条家が制作主体ならば、縁起のどの部分に魅力を感じて、どう絵画化したのか。九条家の思想・宗教観が絵画描写にどう反映されているか。この視点を得たことで、本絵巻を立体的に捉えられたと思う。
光明寺本『当麻曼荼羅縁起』制作の背景を探る
大阪府
松崎 みすず
和の伝統文化コース
このコースのその他作品