(大学院)写真・映像領域 森屋 早苗
『母のメモ.』
デジタル/インクジェットプリント
家のあちこちにメモが散らばっている生活。それは私にとって日常そのものでした。母のメモはその時々の生活と深く結びついていました。
2023年春、健康が取り柄だった母にステージⅢのがんが宣告されました。「なぜ私が…」と葛藤する日々。また泳ぎたい、変わらぬ日常に戻りたいという母の強い意思は、驚異的な回復を遂げさせました。しかしその矢先、新たに間質性肺炎が進行し、一番の楽しみだった水泳もできなくなりました。
母の生活や行動に制限が敷かれる中で、メモの内容も変化していきました。未来の計画やレシピを綴っていたメモは、酸素の使用量や体調の記録へと変わっていきます。その変化を私は目の前で見つめ続けました。
この作品は、主観的な娘としての視点と、写真家としての客観的な視点を交差させながら、母の変化を記録したものです。メモに刻まれた手書きの文字や線には、母の体調やその日の気持ちが映し出されています。
私たちが残すメモにはどんな意味があるのでしょうか。母にとってメモは何が支えだったのでしょうか。私はそこから何を受け、何を残していくのでしょうか。
この作品は、私自身がその答えを探す旅だったのかもしれません。
森屋 早苗
(大学院)写真・映像領域
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