芸術学コース 長富 由紀子
16世紀後半、主にフィレンツェと故郷であるロレーヌで活躍した版画家ジャック・カロとの出会いは藝術学舎の講義でした。カロの作品に見られる精緻な技巧とウィットに富んだ表現には、まるで映像作品のような魅力があり、そのリアルと奇想が混在した世界観に引き込まれました。
カロの魅力は高い評価を得ている技巧ではなく、むしろ複製版画の域を超えた創造性、オリジナル版画に通じる芸術性ではないのかという疑問から、版画家ジャック・カロを研究対象としました。本論を研究の第一歩と位置付け、まずは画業を紐解き、またカロの作風を特徴づける「奇想」にこだわり研究を進めました。奇想の表現が顕著な《アルノ川の祝祭》(扇)に着目し、制作過程からは、先行研究にはない仮説を導き出し、さらにカロと装飾芸術との関係性の一端が明らかとなりました。
版画は主流ではないといわれる芸術ですが、一人の版画家を研究したことで、芸術に関する知見は大きく広がったと感じています。最後に、私には見えていなかった視点、新しい課題を与えて下さった龍先生、武井先生、そして論文に向き合う姿勢をご教示頂いた船岡先生にあらためて御礼申し上げます。
東京都
エッチングの技術革新を生んだジャック・カロの「奇想」の探求
―《アルノ川の祝祭》(扇)を手がかりとして―
長富 由紀子
芸術学コース
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