井伊直弼の生涯を扱った先行研究は数多くあるが、今回の研究ではこれまで、あまり注目されてこなかった「数寄屋坊主」に焦点を当てた。数寄屋坊主に関する史料は、極めて少なく、直弼の自会記である『東都水屋帳』『彦根水屋帳』を第一史料とし、直弼と数寄屋坊主との関係を通じて、直弼の政治行動と精神的背景の解明を試みた。さらに、彦根城や豪徳寺、桜田門外、井伊家江戸上屋敷跡など、直弼ゆかりの地にも足を運び思いを馳せた。茶会記の読み込みやフィールドワークを通じ、直弼の深層心理が投影された茶会には、政治と文化、心の安寧と権力の行使という側面があったと論文で結論づけた。