芸術学コース 鈴木 明徳
代表作である麗子像で有名な画家である岸田劉生(1891-1929)は、油彩画を中心とする画業とは別に、雑誌単行本等の装幀や挿絵といった様々な図案画の仕事に取り組んできたことでも知られている。あの独創的な麗子像の一連の作品が生まれた背景には、これら同時期に取り組んでいた一見すると全く異なる仕事での創作活動も少なからず影響していたのではないかと考える。そこで、本稿では、劉生の絵画作品の作風の変遷について整理しながら、劉生の創作活動において図案画とはどのような活動であったのかを考察した。
劉生の創作活動において図案画の仕事は、劉生に三つの利益をもたらしたと考える。一つ目は画業(油彩画)よりも少ないプレッシャーで自由に創作に取り組める表現方法であったこと。二つ目は、画業よりもいち早くその時の劉生の興味関心を取り込むことができ、且つ、東洋美へ傾倒していく劉生の関心や熱量をラジカルな振り幅で表現できた方法であったこと。そして、三つ目は、図案画への取り組み自体が、油彩画にもみられる唯一無二の独創性を育む場となっていたことである。
神奈川県
劉生の図案画の仕事
-図案画の仕事が岸田劉生にもたらしたものを考察する-
鈴木 明徳
芸術学コース
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