
デューラーは生涯に30枚以上の自画像を描いたといわれている。13歳の時にすでに自画像を描いていた。まだ自画像というジャンルがない時代にたくさんの自画像を描いたということはどういうことなのであろうか。その中でも≪1500年の自画像≫は明らかに自らをキリストになぞらえて描いている。現代人の感覚からすると神への冒涜なのではないだろうか。また、晩年デューラーは≪悲しみの男としての自画像≫でキリストの受難の鞭を持たせて自らをキリストになぞらえて描いている。この時デューラーは51歳で、キリストは30歳ごろこの世を去ったといわれているので、51歳のキリストはありえないのである。これはどういうことなのであろうか。
キリストに扮した≪1500年の自画像≫がとても不思議に感じられて調べていくうちに、自画像のこと、当時の宗教観、キリストを描くということ、自らをキリストになぞらえて描くことの意味など、多くの観点が見つかった。
最後に、なかなか結論らしいものに出会えず苦労しておりましたが、はやり病の中、思い切って京都に出てきてご指導をいただいたこと、心にとても強く残っております。ありがとうございました。