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芸術学コース 金城 暁子

 20年ほど前、ある本で空海の『益田池碑銘』を目にして一瞬で魅了されました。文字好きだった自分の感性がそこにただならぬものを感じたのだと思います。今回このような形で研究をすることになるとは思いもよらなかったのですが、調べてゆくほどそのただならなさが分かっていきました。『益田池碑銘』には楷書・草書・行書だけでなく篆書や隷書といった古い書体や、雑体書という象形的な文字や則天文字など特殊なものが使われています。平安初期の日本でこれだけの文字を使いこなせたのは(推測ですが)おそらく空海だけだったのではないでしょうか。空海はさらに金文などのより古い文字や最新のフリースタイル草書や梵字を学び、それらのさまざまな文字を融合させることで独自の表現を生み出しました。『益田池碑銘』はその結実です。
 文字は書かれた内容以上にいろいろなことを伝えてくれます。空海がさまざまな文字を学ぶことで掴もうとしたのは、言葉では表現することのできない感覚的なものであり、そして自身もまた感覚的なものを表現するために独自の文字を用いたのだと考えられます。


沖縄県

空海と文字 ー『益田池碑銘』の雑体書・破体表現

金城 暁子

芸術学コース

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