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芸術研究の世界#2「近代日本画の歴史的展開の究明-日本画家荒井寛方の生涯と作品を手掛かりに」

2021年8月5日

アクティビティ

 8月4日(水)18:30より、文哲研オンラインセミナー「芸術研究の世界#2」をzoomにて開催いたしました。

 

芸術研究の世界#2「近代日本画の歴史的展開の究明-日本画家荒井寛方の生涯と作品を手掛かりに」

講演者:三上美和(京都芸術大学芸術学部 准教授)  

日時:2021年8月4日(水)18:30-20:00

参加者:54名(京都芸術大学教職員・学生)

 

【講演概要】 

 科研の課題は、明治から昭和戦前期に活躍した日本画家、荒井寛方(1878-1945)の画業です。

寛方は一般にはほとんど知られていませんが、官展や院展という近代日本画をリードした画壇で、仏画を中心に制作しました。大正期にはインドのタゴールの招きにより渡印し、アジャンター石窟寺院を模写し、晩年には法隆寺金堂壁画模写にも携わるなど、文化財保護にも尽力しました。

講演では寛方の画業と、寛方研究に至る経緯や今後の研究についてお話ししたいと思います。

 

【講師略歴】

三上美和(みかみ・みわ)

 2006年、学習院大学人文科学研究科博士後期課程満期退学(2008年「原三溪と日本近代美術」にて博士修得)。2006年より東京国立近代美術館工芸課客員研究員として勤務する傍ら、大学の非常勤講師を勤め、2011年より本学通信教育部芸術学科勤務。

 主著『原三溪と日本近代美術』(国書刊行会、2017年)。主要論文「今村紫紅筆『護花鈴』試論―成立過程と文化史的背景をめぐって―」(2005年、『美術史』第159冊)、「富本憲吉の初期色絵作品と大原孫三郎の後援について」2007年、『東京国立近代美術館研究紀要』第19号、「日本美術協会主催『歴史風俗画展覧会』について」(2007年、『明日を拓く日本画「堀越泰次郎記念奨学基金」奨学生作品集』「堀越泰次郎記念奨学基金」堀越友規子)

 

【参加者感想(一部抜粋)】

*日本画、仏画などは、勉強不足ですが、美術の流れを知ることはこれからの作品つくりには重要になってくると思うので、これからも参加させていただきたいと思っております。

*荒井寛方の魅力が良く伝わりました。原三渓からの繋がりで、研究領域が更に広がり深まっている様子は、研究者としての先生の側面を伺うことが出来、とても学びとなります。

*原三渓から、三渓が支援した画家へ、研究を繋げていく過程に大変興味を持ちました。原三渓と荒井寛方の交流の実際はどのようなものだったのかなど、研究成果をまた拝読させていただきたいと思います。

*歴史画から始まってインドへ渡り、晩年は法隆寺金堂壁画の模写と、より根源的な部分を追求していく流れが研究の姿勢と重なって興味深かったです。

*荒井寛方について今まで書籍の一部やメディアの小話程度しか認知しておりませんでしたので、研究者の先生の貴重なお話を聞くことができて大変感動しております。お時間があれば社会的な時代背景も見ながら解説をお聞きできればもっとイメージしやすかったのですが、そこは今後自分で知識を積みげながら今日のお話を思い出したいと思います。

*最近、明治期から現代の日本の美術を調べていて、今まで自分が思っていた「日本美術」とは何だったのかと考えていました。荒井寛方のこともまったく知らなかったのですが、こういった明治から昭和初期にかけては時代に埋もれてしまった画家がたくさんいるんだろうなと改めて思いました。

 

【質問と回答】 (時間の関係でお答えできなかった質問に 回答していただきました)

*荒井寛方はどういった信仰を持たれていたのでしょうか?宗派など。
 
→寛方の葬られたさくら市の光明寺は、真言宗智山派です。おそらく荒井家も真言宗だったのではと思われます。寛方の信仰心や仏画へ込めた想いなどは、今後検討を深めていきたいと思っています。

 

 

ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。

対面での開催が難しい情勢ではありますが、今後もzoom等を活用しながらセミナーや研究会などを開催する予定です。一般公開セミナー開催の際はこのホームページにてお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

 

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【文哲研オンラインセミナー「芸術研究の世界」】

このセミナーの講師は、文部科学省科学研究費(通称:科研費)の研究代表者である、11名の本学教員です。科研費は、人文・社会科学から自然科学まで、あらゆる分野の優れた研究を発展させることを目的として国から支給される研究費で、厳正な審査を経て採択され、数年間、申請した研究計画に沿って研究に取り組み、その成果を公表します。オンラインセミナー「芸術研究の世界」では、本学の教員が現在取り組んでいる芸術研究について、その研究を発想した経緯や研究の面白さ、難しさなども含めて存分に語っていただきます。セミナーでの質疑を通して、参加者の皆さんとともに、芸術研究の奥行きと拡がりに触れる機会となることを願っています。

 

【今後の予定】 (タイトルは科研の採択課題です。講演内容は追ってご連絡します)

8月18日 白石晃一 デジタルファブリケーション初学者に向けた設計支援マテリアルライブラリの構築

9月1日 上村博 芸術活動における「地方色」の受容と創出

10月6日 牛田あや美 日本統治下の漫画家・北宏二/金龍煥の懸隔

11月3日 天野文雄 アジアの舞台芸術創造における国際的な「ラボラトリー機能」の実践的研究

12月1日 河上眞理  〈美術建築〉の観点から見た明治期における家屋装飾の歴史的位置づけに関する研究

1月12日 町田香  『四親王家実録』を中心とした近世四親王家の生活環境に関する復元的研究

1月19日 齋藤亜矢 描画のプロセスにおける想像と創造の関わりの検証

2月2日 増渕麻里耶 希土類元素に着目した古代鉄製品の非破壊製作地推定法の開発

3月2日 森田都紀 日本の芸能「能」の演奏技法の伝承過程に関する歴史的研究‐能管を中心に‐

※日程は講師の都合等で変更の可能性があります

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