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文哲研3days#3「美学ー自然と文明を往来する思考」

2021年11月24日

アクティビティ

 11月8日(月)15日(月)22日(月)の3日間、学内教職員・学生対象のオンラインセミナー文哲研3days#3「美学ー自然と文明を往来する思考」をzoomにて開催いたしました。

 

文哲研3days#3「美学ー自然と文明を往来する思考」

講演者:吉岡洋(京都大学こころの未来研究センター特定教授・文明哲学研究所客員教授)

 

講演日時・参加者:

①2021年11月8日(月) 18:30-20:00 「山と森、ひるねするたぬき」 (参加者51名)

②2021年11月15日(月) 18:30-20:00 「性愛の力、春画からボノボまで」 (参加者51名)

③2021年11月22日(月) 18:30-20:00 「ファルマコン、両義性の思考」 (参加者49名)

 

*講演概要ほか詳細:http://www.kyoto-art.ac.jp/iphv/topics/4843/

 

【質問と回答】(時間内にとりあげることのできなかった質問に 回答していただきました)

*境界を往還する際の危険とその事故例がありましたが、境界線上に取り残されてしまうという危険性を思いつきました。あり得ますでしょうか。

→面白いですね、境界線上に取り残されるということは考えたことがなかった。線なのでその上に常駐するのは難しいですが、その近くに滞留するということですね。それはあり得るでしょう。自分自身が境界になるということでしょうか。そういう事例を芸術の歴史の中に見つけるのは面白いことかもしれません。文学、漫画やアニメ、物語の主人公にはそうした「境界そのもの」みたいなキャラクタがあるような気がします。またお話ししましょう。

 

【参加者感想(一部抜粋)】 

*『境界線を行き来するということは、どちら側からも常に危険に晒されている。そういう危険をかわすテクニックを持ち合わせる必要がある』というお話も興味深かったです。トリックスター・道化のような立ち振る舞いもその一つになるのかなと思いました。

*「怪しさ」を許すという言葉が印象に残りました。私も、境界を行き来するたぬきのような柔軟さを持ちたいと思いました。

*すっかり吉岡先生のファンになってしまいました。「美学」は難しいという頭で、今日の講義について行けるか心配でしたが、先生の語り口や資料の提示のされ方が分かりやすくて夢中になりました。境界線を引いてそこを行き来する面白さと危険!魅惑的です。

*春画の性行為場面の横に、無邪気に子供が存在していることを初めてしりました。 子どももいずれ、大人になり、性行為をする立場になり、死を迎えるという意味では、大人と子供の間に本来的には境界がないことを示唆しているように感じました。 一方、現代の西洋社会では性的表現や暴力表現を子供に晒さないことは本当に徹底していて、成人と子どもの間の境界を感じます。このような西洋社会においては、何を以て、子どもはその境界を越え、大人になるのだろうか、と疑問に思いました。

*性愛についての話題は、人の根源的なものであるはずなのに、世界的に(いわゆる「先進国」的な世界ですが)タブー視がきつくなっていくような風潮を感じます。締め付けることで逆に歪んだ方向にいくのではと、現実的にニュースなど見ているとそう思います。なので、ぜひこのような話題をフラットに、発信していってほしいです。そうすることで、逆説的に差別とはなにか、人を思いやる・価値観を認めるとはどういうことか、ということを健康的に考えることができるのではないかと感じます。

*パブリックには聞くことのない講義内容でしたが、文化や生活の現場を真に理解するためには、むしろオープンになって行く必要があると感じました。

*江戸時代の春画の受容のおおらかさを知り、江戸時代には銭湯が混浴であったという話を思い出しました。当時の人々の境界線の薄さのようなものを感じました。

*春画は笑えると思っていたので、江戸の人々が春画を見て笑っていたと聞いて合点が行きました。

*今の芸術作品の数のお話を聞いて、美しいものや便利なものも、増えすぎて普通になると逆に毒になる(言い過ぎかもですが)場合があるのかなとも思いました。

*思考を鍛えること、余裕をもつこと、とても大切だと思いました。

*システムの中に、反システム的なものを内包するほど安定するという考え方、非常に興味深い考え方でした。

*「毒」のつく言葉は色々ありますが、『毒娘』と聞き、誰でも昔は娘であったことから、広い範囲を含有している言葉であることに気づきました。ファルマコンは、二元論の解毒作用として機能すること、また、わからないことを持ち続けること、両義性は昔の方がよくはたらいていたことなど、今の社会を読み解く視点を持つことができました。

*吉岡先生のセミナーを三回も受けられ、大変幸せな時間を過ごすことができました。ありがとうございました。また、他にも先生のお話を美学と生死をどう結びつけてお考えになられているのか、様々な事例を通して、ずっとお聞きしてみたい気持ちになりました。

 

ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。

対面での開催が難しい情勢ではありますが、今後もzoom等を活用しながらセミナーや研究会などを開催する予定です。一般公開セミナー開催の際はこのホームページにてお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

文明哲学研究所

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