2013年年京都芸術劇場――新しい《ステージ》を目指して!

1月 01日, 2013年
カテゴリー : プロデューサー目線, 過去の公演 

 京都芸術劇場・舞台芸術研究センター関係者一同になりかわり、新春の御慶を申し上げます。今年も昨年以上に,ご期待の添えるような企画・演目を御覧頂けるよう、一同「初心」を忘れずに頑張る覚悟でございますので、宜しくお引き立てのほどをお願い申し上げます。
 さて、2013年は、能の大成者世阿弥の生誕六百五十年記念の年に当たりますので、能狂言の企画に、従来以上の力を入れる予定です。
 まず2月2日(土)には、既に「春秋座-能と狂言-」においておなじみの観世銕之丞氏のシテで、京都に縁の深い『融』によって、「六条河原院」の廃墟を舞台に展開される、世阿弥の代表作の一つに数えられる宇宙的な広がりをもつ《風流(ふりゅう)》によって、世阿弥の「詩劇」に浸って頂くと共に、野村万作・萬斎両氏による『磁石』によって、「騙そうとする者が、反対に騙される」喜劇の典型を見て頂きます。
 「春秋座-能と狂言-」は,幸いにも、能狂言の最も「生きのよい」演者のご出演を得ていますが、この際、強調しておきたいのは、能は「音楽劇」であり、地謡は言うまでもありませんが、囃子方が良くなければ、良い舞台は成立しません。この点でも、幸い、笛の藤田流宗家六郎兵衛氏、小鼓大倉流宗家源次郎氏、大鼓葛野流の最も優れた若手演奏家である広忠氏を常連としてお迎えしていますから、音楽劇としての能の、現在望みうる最高のメンバーによる演能が可能になっています。暮にも、広忠君の主催する会で、このメンバーに片山九郎右衛門氏の『道成寺』を見ましたが、近年の最高の出来であったことを申し添えます。
 その広忠君の会では、観世宗家の清和氏が、「老女物」の大曲『鸚鵡小町』に挑まれて、位の高い舞台を見せて下さいましたが、5月24日(金)には、観世宗家清和氏に、世阿弥生誕六百五十周年記念として、『翁』を舞って頂きます。能の始原的な芸態とも言える『翁』を、春秋座の歌舞伎舞台を活かして舞って頂くのは、はじめての企画ですから、茂山七五三氏の三番叟とともに、ご期待下さい。この日には、ほかに茂山家による狂言一番と,観世銕之丞氏による半能『高砂』が「祝言」の感動を高める事でしょう。
 更に7月12日(金)には、一昨年に萬斎・逸平両君の『三番叟』の競演でご好評を博しました「東西狂言立ち合い」を、東の野村家と西の茂山家の出演という形で行います。主な演目は『髭櫓(ひげやぐら)』で、大髭の夫の髭が嫌だと言って、それを抜こうとする女房と、髭に「櫓」を備え付けて防御しようとする夫との合戦が、女房側の「立ち衆」と、地謡に囃子も入るという大掛かりな展開を見せる作品で、萬斎君の大髭と逸平君の女房の戦いが見物です。他に,人間国宝万作師の得意とされる「那須の語り」によって、狂言の「語りの芸」としての面を、堪能して頂きます。
 来年度という事で言えば、2014年2月には、恒例「春秋座-能と狂言-」を、能『船弁慶』と狂言『棒縛り』といった初心者にも分かり易い演目で催す予定になっております。
 なお、これはセンター企画ではありませんが、本学舞台芸術学科の卒業生でもある井上安寿子君——観世銕之丞師と京舞の井上八千代先生の令嬢——の「第一回舞踊公演」が、来る2月9日(土)に、春秋座で催されます。本学卒業生が京都芸術劇場の舞台に立つ事は、学科としてもセンターとしても応援したい事業であり、今後も、「大学における劇場」の意味付けの上でも、よいきっかけになる事と考え、ここに併せてお知らせ致します。

渡邊守章
(舞台芸術研究センター所長・演出家)