新年に臨んで

1月 01日, 2014年
カテゴリー : プロデューサー目線 

明けましておめでとうございます。
お蔭様で、京都芸術劇場(春秋座・studio21)も、昨年は、文部科学省・文化庁から、「大学における劇場」としての認知を得、それぞれの助成金を交付されることとなりました。文科省の「舞台芸術作品の創造・受容のための領域横断的・実践的研究拠点」を掲げる「共同利用・共同研究」の助成金は、他の研究組織の方々を公募して、複合的な研究体制を作るもので、今年度は本学の研究者を中心に行っていますが、来年度にむけての公募を始めているところです。そのコンセプトは、劇場という「実験装置」を活用して、「実験工房」を立ち上げていくことで、今年度は、テーマ研究Ⅰ「近代日本語における〈声〉と〈語り〉」テーマ研究Ⅱ「舞台芸術における音/リズム/ドラマトゥルギーをめぐるジャンル横断的研究」テーマ研究Ⅲ「〈マルチメディアシアターの再定義〉をめぐる実践的研究」テーマ研究Ⅳ「現代の舞台芸術における照明技法ならびに照明美学の問題」の4課題を立てて企画が進行中です。
このうちテーマ研究Ⅰは、芥川賞受賞者で詩人の、元東京大学大学院教授松浦寿輝氏を企画立案ならびにメイン講師に、センター所長の渡邊が企画立案・モデレーターとして協力して、すでに能狂言における「語り」に始まって、明治から大正へと、近代日本語の文学言語が、どのように多様な変遷をたどったか、そのドラマを見ています。次回1月16日(木)は、漱石を取り上げ、まさに日本の文化と社会と言語の「近代化」の最中で苦闘した偉大な作家の「言語的冒険」の一端を偲びます。テーマ研究Ⅲは、ダムタイプの映像作家高谷史郎氏のハイテク映像によって過去三年間に春秋座で行った『マラルメ・プロジェクト』の実践的反省を出発点として、渡邊の構想を素材に、新たなマルチメディア・パフォーマンスの可能性を、春秋座の舞台を使って行っています。テーマ研究Ⅳは、本学准教授でもある照明プランナー岩村原太をモデレーターに、現在、日本の舞台照明家として最も旺盛な活動をしている服部基氏をゲスト研究者に招いて、舞台照明家から映像作家にいたる多彩な参加者とともに、服部氏の照明プランナーとしての仕事の、最も具体的な局面まで迫る討議を行っています。詳細は、ホームページをご覧ください。
文化庁の助成金は、二本ありますが、その一本について書いておきます。「大学を活用した総合的な舞台芸術アートマネージメント人材養成事業」で、これは「Ⅰ.レクチャー・プログラム」「Ⅱ.実践プログラム」ならびに「Ⅲ.編集プログラム」の三つの柱から成り立っています。目下は、ⅠとⅡが走っていますが、座学的な部分は、本学教官が、それぞれの専門を中心に語り〈たとえば、浅田彰教授の「ダンスの創造性」〉、実学的な局面は、実際に劇場運営に携わっている専門家(ロームシアター京都支配人兼エグゼクティブプロデューサーの蔭山陽太氏、京都国際舞台芸術祭プログラム・ディレクター兼事務局長の橋本祐介氏)をお招きして連続講義をしていただいています。日程等の詳しい情報は、ホームページをご覧ください。
さて、京都芸術劇場の公演事業としては、二月二日(日)春秋座におきまして、恒例の「春秋座 能と狂言」を催します。今回は、初めて能狂言を観る方にも分かりやすい演目をと考え、能は『船弁慶』〈シテ観世銕之丞、アイ野村万作〉、狂言は『棒縛り』(野村萬斎他)で、囃子方は、いつものように笛:藤田六郎兵衛、小鼓:大倉源次郎、大鼓:亀井広忠、笛:前川光範の皆さんです。
また、三月末には、マルチメディア・パフォーマンスと能狂言の実験的共同作業があります。詳細は次回のプログに書きますが、ご期待ください。
渡邊守章
(舞台芸術研究センター所長・演出家)