2015年7月
2015年7月31日 授業風景
こんにちは!京都の夏は暑いですね…!
歴史遺産学科副手の茅谷です。
さて、今回は、歴史遺産学科1回生の授業「フィールドワークⅠ」から、骨董店が集まっていることで有名な知恩院新門前のギャルリーオルフェと思文閣を訪れた際のレポートを紹介いたします!
学生のレポート紹介は2回目になりますね。
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「ギャルリーオルフェとルネ・ラリック」 山口 実優
〈ギャルリーオルフェ〉
ギャルリーオルフェは、ルネ・ラリックを専門に展示販売する京都のギャラリーである。元々は七宝を多く取り扱っていたお店であったが、1970年代の石油危機で外国人が日本にあまり来なくなったことから、外国人向けのマーケットから日本人向けのマーケットにしようとアンティークを取り扱いはじめた。主にアール・ヌーヴォーとアール・デコの様式、エミール・ガレとルネ・ラリックの作品を取り扱っている。ルネ・ラリックの作品を取り扱っているお店はオープン当時珍しかった。お話をお聞きしたオーナーの鈴木さんが特に好きなのは、ルネ・ラリックの作品である。
〈ルネ・ラリックとその作品〉
ルネ・ラリックは、前半生はアール・ヌーヴォー様式の宝飾(ジュエリー)のデザイナーとして活躍し、その分野で名声を得ていた。宝飾デザイナー時代から、ガラスをパーツに用いていた。50歳を過ぎてからガラス工場の経営者に転身した。パリ万博をきっかけにラリックの作品は注目され、アール・デコ様式を取り入れたシンプルな作品を次々と生み出していった。
花や虫、風景をデザインに使うジャポニスムの影響も多く見られる。ラリックはいろいろな所とコラボしており、教会のステンドグラスや電車の中のデザイン、車や建築など幅広く手掛けている。
また、当時のヨーロッパは不潔なことで知られており、香水の文化が発達していた。ラリックは香水瓶のデザインも手掛けており、有名な会社からも依頼されていた。
オーナーである鈴木さんの一番好きなルネ・ラリックの作品は、乗用車の先端につける自由の女神像だという。ギャルリーオルフェの2階に飾られていた、疾走感溢れるガラスの像であった。
〈質問と考察〉
質問:アンティークとは、どこからどこまでのものがアンティークと呼ばれるのか?
考察:今回見学したギャルリーオルフェの鈴木さん、思文閣でお話をしてくださった方の二人は、アンティークや古美術について同じことをおっしゃっていた。「定義的には(関税法上から)100年以上経ったものであるが、作者が亡くなっているものなら100年以内でもアンティークや古美術である」とのこと。「100年以上経っているものはアンティークではあるけれど、それのこだわらずに買いに来た人がピンとくるものと出会ってほしい」とおっしゃっていた。その言葉を聞いて、私も多くの古美術、アンティーク店に入って自分に合ったものと出会いたいと思った。
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山口さんのレポートの中にアンティークの定義について記述がありました。
これと似ているもので、文化財や歴史遺産をどのように定義するかも、なかなか難しいものです。アンティーク・古美術と呼ばれるものと、文化財・歴史遺産と呼ばれるものとは、いったい何が違うのでしょうか?
歴史遺産学科の授業では、このような「疑問」に対する考え方も学びます。
なかなか明確な答えが出せないことも多々ありますが、一人ひとりが考えて意見を導き出すことに意義があります。
フィールドワークの授業では、現場で見聞し、考えることを大切にして授業を行っています。そこには学生の数だけ多様な観点があり、レポートではそれを知ることができます。みんながその観点を活かしながら、今後、文章力や知識をつけていってもらいたいですね!ひとつひとつ積み重ねていったことが、最後の個人研究に繋がることと思います。
今回お世話になりました、思文閣さま、ギャルリーオルフェさまには貴重なご指導を賜りました。御礼申しあげます。
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2015年7月29日 イベント
こんにちは。連日暑い日が続いていますね~京都の夏がやってまいりました。
さて7月25日、26日に開催されました、真夏のオープンキャンパスのようすをお伝えしたいとおもいます!
夏の暑い中をたくさんの高校生の皆様やご家族の皆様にご来場頂きました。ありがとうございます。
復元製作でつくられた伎楽面のカルラもブース入り口でお出迎え。
学科相談ブースでは先生方と長くお話されている高校生の方もたくさんいらっしゃいました。先生も古文書や浮世絵など、実際のモノを用いて歴史遺産学科を紹介していました。
こちらは坪井先生にくずし字や花押(文書の末尾などに書く署名の一種)についてのお話を熱心に聞いているようすです!伊達政宗の花押…みなさんは見たことがありますか?
こちらはワークショップの紙漉きをしているようすです。
繊維を均一に漉くのはなかなかムズカシイんですよ~しかし紙漉きは大人気でした!
そしてこちらは「闘茶体験」のワークショップ。
お抹茶のランク、上中下をあてる利き茶クイズ!こちらもムズカシイかな…と思いきや、高校生たちは若いので味覚がするどいようです。正解者が多数。
このオープンキャンパスでは、多くの高校生の方やその保護者の方に来ていただきました。歴史遺産学科のことをより知っていただけたとおもいます!ありがとうございました!
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2015年7月21日 イベント
7/12(日)に一日体験型オープンキャンパスが開催されました!
すこし遅くなりましたが、今回はその体験授業の様子をお伝えします。
「古文書修復実習」と題しまして、実際に虫食いで穴の開いた古文書を「漉嵌(すきばめ)」という方法を用いて修理していただく体験実習を行いました。
この実習の体験を通じて、修理・修復に必要な知識や、現在の文化財保存に関する考え方を学んでいただこうと企画しました。
まず、来ていただいた方から順番に古文書に触れていただきました!
この文書は幕末ごろに書かれたものです。
みなさん、はじめは実際の古文書に触れるのも初めてのようすで慎重に開いています。
…う~ん…年月日は読めそう、だけど本文の内容は…??
そして参加者が集まり、大林先生の授業がスタート。
まず、古文書って名前はきいたことがあるけれど、どういったものを指すの?というところからはじまり、
「古文書……歴史学上は、特定の対象(他者)へ意思を伝達するために作成された、近世以前の文書」
であり、歴史を組み立てる部品=史料(歴史資料)の一部なのです。という説明を受けました。
歴史資料は古文書のほかにも、絵画・地図・写真…などなど、歴史を知ることのできるもの全てを指します。
そしてもう一度、古文書を見てみます。
古文書は形式(書き方)が内容によってある程度決まっています。
今回観察していただいた古文書のほとんどが金銭借用証文として残っているものでした。
お金の貸し借りに関しては、昔も今も重要な書類だったのですね!しっかり現代まで残っています。
そして古文書修理に入るまえに、素材に関しての講義がありました。
古文書が書かれているものは「和紙」と呼ばれているものです。そして「和紙」とは「洋紙」の対義語としてあるもので、一般的には楮、三椏、雁皮などの表皮の内側の繊維(靱皮繊維)を主原料とし、トロロアオイの根などから抽出した粘剤(ネリ)を混ぜ、“流し漉き”という日本独自の紙漉き技法を用いて作られるものです。工程のほとんどが手作業でつくられるものを指します。
そしてこの和紙は主にどういった傷みかた(劣化)をするのでしょう。
参加者のみんなにたずねてみると、「虫食い」「やぶれ」「色が変わる(変色)」という意見がでました。
どれも正解です。
そしてその中でも紙を劣化させる一番の原因は「虫食い」なのです。
和紙はセルロースという虫たちにはとても美味しい素材で構成されています。そしてこの日本の温暖多湿な気候も虫食いを進行させる要因となります。
古文書の修理は、この虫食いで開いた穴をつくろうことが主です。
繕い(つくろい)の方法は
・手繕い
・漉嵌(すきばめ)
・DIIPS
の3種類があります。
今回の授業では手繕いと漉嵌を実際に紹介しました。
まずは手繕いの様子を見ました。
修復の作業は職人技のように、技術を必要とする部分も多々あります。今回は作業に慣れている大学院生が解説を交えながらその様子を実演してくれました。
まず本紙の後ろから虫食いの形に切り取った紙をデンプン糊で貼ります。
その後、繕った紙が重なっている部分を印刀で削ります。
このように、すべて手作業でつくろうやり方があります。
しかし、これでは膨大な数の古文書を修理するのにとても時間がかかってしまいます。
そこで、つぎに「漉嵌」という方法を紹介し、みんなでやってみました。
今回の授業で体験してもらった「漉嵌」という方法は、虫食い穴の部分だけ紙漉きをする方法です。
古文書の欠損箇所に紙料(水、紙繊維、粘材をあわせたもの)を流しこみ、穴を埋めるやり方です。この方法は、一度に穴を埋めることができます。
各テーブルに1セットの漉嵌道具を使って、実際に体験していただきました。
大学院生たちにレクチャーを受けながら、一人一枚の文書を漉嵌しました。ハケやスプレーの使い方に苦戦しつつも、みんな真剣に、丁寧に作業をしてくれてとてもよかったです!
漉嵌は、まず化繊紙に文書を裏向きに貼り付けます。
そして穴の開いているところに紙料を流しこむと、水は穴のところから下に落ちます。
紙漉きの要領で、上下左右に揺らして穴に紙料が入りこむようにします。
紙料が穴に溜まったら、化繊紙でサンドして、吸取紙で挟みます。
そして、脱水し、乾燥させます。(この工程は授業後に大学でやります!)
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大学には、専用の機械をがあり、それを使って漉嵌をおこなっています。
この機械を用いると、大きいサイズの古文書も漉嵌可能です。そして、ポンプが水を吸いだしてくれるので、うまく穴に紙料が埋まっていきます。
上の写真が専用の機械で漉嵌しているようすです!
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参加者のみなさんからは、実習はすこし難しかったという意見もありましたが、実際に修復の様子を見られたこと、体験できたことにとても感激した、というお声も多数いただきました!
道具のあつかい方や、文化財に関する知識は入学したら学ぶことができます。
この一日体験型オープンキャンパスでは、歴史遺産や文化財保存・修復のおもしろさや奥深さを知ってもらえればと実習を選びました。人が長く生活の中で積み重ねてきた文化の蓄積を守っていく、ということの重要さも伝わればいいなと考えました。
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2015年7月17日 授業風景
こんにちは!
今日は台風の影響で生憎の雨ですが、祇園祭山鉾巡行ですね!
そこで、歴史遺産学科では授業で宵宵山をフィールドワークした様子を、お伝えしたいと思います!
以下、担当された五島先生のレポートです!
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連日の暑さで京都はうだっています。そしてこの季節といえば「祇園祭」です。
伝統文化ラボ(通称でんぶんラボ、伊達・五島担当)では、祇園祭の山鉾が建つ四条烏丸周辺へ、宵宵山に行ってきました(7月17日の山鉾巡行に対してその前日を宵山、そのまた前日が宵宵山)です。
祇園祭を楽しみながら歩く、というスタイルのフィールドです。この日ばかりは浴衣でもオーケーというので、たくさんの人が浴衣を着てきてくれました。
まず、宵山の人波の合間を縫って、神功皇后の戦にちなむ、豪華でしなやかなボディーの船鉾の前で、記念撮影を敢行しました。鉾に負けないくらい華やかです。
(ちょっとオーバーかな?)。
山鉾のひとつ「岩戸山」(神話の天の岩戸をテーマにした山)では、鉾の由来を聞いた後、人形や鉾に掛けられるタペストリーを拝見し、山の上に乗せてもらいました(「岩戸山」は曳山といって鉾のように車がつき屋根があるので、囃子方の乗るところがあるのです)。
狭い鉾の上で何とか記念撮影することができました。
一休みした後は、また山と鉾の会所をめぐり、会所の二階で懸装のタペストリーや稚児の天冠などを見ました。
会所の二階から鉾に橋が架かっていて、乗り込めるようになっています。
女性には悪いのですが、この鉾では、ここの古くからのしきたりで、男性しかいけません。男性陣だけが乗ってきました。
観光としての祇園祭はよく知られていますが、今回のフィールドワークでは(一応授業ですから)山鉾と地元(鉾町)の関係がわかってもらえたかな、と思います。ここがふつうの観光では味わえない、「でんぶんラボ」ならではのところですよ。
(文責 歴史遺産学科教員 五島邦治)
2015年7月10日 授業風景
7月に入り、京都は祇園祭の季節になりましたね!
さて、今回は久しぶりに1回生のフィールドワークについて紹介します!
前期前半は京都の遺跡を探訪しました。後半は「工芸と庭園」をテーマに授業を行っています。この日のフィールドワークでは「並河靖之七宝記念館」を訪れ、7月12日(日)まで開催されている春季特別展「並河七宝の匠たち」展を見学しました。
並河靖之は明治から大正期にかけて活躍した日本を代表する七宝家のひとりです。この靖之の自宅兼七宝工房が現在の並河靖之七宝記念館であり、作品が多数収蔵されています。
このフィールドワークの授業では行き先の予習・復習のレポートを提出してもらっています。場やモノに関して、まず基本的な知識を得て、そして行き先で見聞したことからレポートを書きます。
さて、その「並河靖之七宝記念館」の見学を通じて、歴史遺産学科1回生堀岡さんはどのように考え、興味を持ったのでしょう。
以下、堀岡さんのレポートを紹介します。
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「並河靖之 作品と色使いについて」 堀岡奈央
今回のフィールドワークで私が最も興味を持ったのは並河靖之の作品の繊細な色使いである。
明治期に広がりを見せた靖之の有線七宝技法は、植線の工程を経て、線と線の間に釉薬を挿し焼成しては研磨する、という過程を繰り返す。実際にその作品の数々を見てみると、その繊細な技法や個性的な形が当時の人々を魅了していたであろうことがよくわかる。
今回、見学した作品の他にも並河靖之に興味を持ち、特に色使いの異なる「七宝菊唐草文大瓶」と「蝶花唐草文香水瓶」について調べた。
靖之の作品は工程も複雑な上、幾人もの職人が携わってようやく完成する。実際に焼きの工程について質問すると、焼きは基本的には、一つずつ靖之本人が行っていたという。「七宝菊唐草文大瓶」は実際に目にした作品よりも控えめな色合いで、記念館に展示してあった釜で焼くには少し大きすぎるのではと感じた。窯は作品によって組みかえて形を変えて焼いていたという。価値の高いものであるにもかかわらず、量産は行わず一つずつ丁寧に仕上げていたことであの色合いも生まれたのだと思った。控えめな色合いながらも美しい図柄がきちんとおさまっており、静かな均衡を感じさせる作品である。
一方、「蝶花唐草文香水瓶」は、深みのある黒を用いた「七宝菊唐草文大瓶」とは反対に派手ではない落ち着いた色合いのものを想像していたが、並河靖之の作品には鮮やかな色使いのものが非常に多いと感じた。小ぶりの作品が多いが、いずれもその色使いや有線に囲まれた図柄によって独特の存在感をかもしだしているように思う。いずれも色彩豊かであるが、その透明感も靖之の作品の特徴であると感じた。
色彩の釉薬は鉱物を用いた化学変化から作られるが、この美しい色彩を表現できるようになるまでには、鉱物の分量や配合の割合、焼成の時間や湿度についてかなりの試行錯誤を重ねて作り上げられた。このことからも靖之の色に対する強い執着とこだわりを感じることができる。こうして、今も人々をひきつけてやまない並河靖之の七宝作品が生み出されていったのである。
七宝がなぜ今も新しい魅力を持つのか、実際に目にして調べてみることで作品の素晴らしさをより深く知ることができた。これからも作品について見聞を深めていきたい。
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歴史遺産学科では、モノを見る目とともに、そのモノに関しての知識やさまざまなことを論じるため、表現するための力も大切にしています。ご案内くださった並河靖之七宝記念館の学芸員平田景子さんに御礼申し上げます。
堀岡さんは知識として得たことにくわえ、見て感じたこと、考えたことから発展して調べています。そして技法や製作意図などの具体的なことがらと結びつけた結論を自分の観点で述べていますね。
とても初々しいレポートなので、この場で紹介させてもらいました。ありがとうございます。
この授業を通じて、1回生から、書く力をぐんぐん伸ばしていきましょう!
なお、レポートで取り上げられている「七宝菊唐草文大瓶」と「蝶花唐草文香水瓶」は、並河靖之七宝記念館の収蔵品ではありません。「七宝菊唐草文大瓶」の画像は東京国立博物館のホームページから転載させていただきました。
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