文化財保存修復・歴史遺産コース

一日体験型オープンキャンパス!「古文書修復実習」

7/12(日)に一日体験型オープンキャンパスが開催されました!

すこし遅くなりましたが、今回はその体験授業の様子をお伝えします。

 

「古文書修復実習」と題しまして、実際に虫食いで穴の開いた古文書を「漉嵌(すきばめ)」という方法を用いて修理していただく体験実習を行いました。

 

この実習の体験を通じて、修理・修復に必要な知識や、現在の文化財保存に関する考え方を学んでいただこうと企画しました。

 

まず、来ていただいた方から順番に古文書に触れていただきました!

この文書は幕末ごろに書かれたものです。

 

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みなさん、はじめは実際の古文書に触れるのも初めてのようすで慎重に開いています。

…う~ん…年月日は読めそう、だけど本文の内容は…??

 

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そして参加者が集まり、大林先生の授業がスタート。

まず、古文書って名前はきいたことがあるけれど、どういったものを指すの?というところからはじまり、

古文書……歴史学上は、特定の対象(他者)へ意思を伝達するために作成された、近世以前の文書

であり、歴史を組み立てる部品=史料(歴史資料)の一部なのです。という説明を受けました。

 

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歴史資料は古文書のほかにも、絵画・地図・写真…などなど、歴史を知ることのできるもの全てを指します。

 

そしてもう一度、古文書を見てみます。

古文書は形式(書き方)が内容によってある程度決まっています。

 

今回観察していただいた古文書のほとんどが金銭借用証文として残っているものでした。

お金の貸し借りに関しては、昔も今も重要な書類だったのですね!しっかり現代まで残っています。

 

そして古文書修理に入るまえに、素材に関しての講義がありました。

古文書が書かれているものは「和紙」と呼ばれているものです。そして「和紙」とは「洋紙」の対義語としてあるもので、一般的には楮、三椏、雁皮などの表皮の内側の繊維(靱皮繊維)を主原料とし、トロロアオイの根などから抽出した粘剤(ネリ)を混ぜ、“流し漉き”という日本独自の紙漉き技法を用いて作られるものです。工程のほとんどが手作業でつくられるものを指します。

 

そしてこの和紙は主にどういった傷みかた(劣化)をするのでしょう。

参加者のみんなにたずねてみると、「虫食い」「やぶれ」「色が変わる(変色)」という意見がでました。

 

どれも正解です。

そしてその中でも紙を劣化させる一番の原因は「虫食い」なのです。

和紙はセルロースという虫たちにはとても美味しい素材で構成されています。そしてこの日本の温暖多湿な気候も虫食いを進行させる要因となります。

 

古文書の修理は、この虫食いで開いた穴をつくろうことが主です。

 

繕い(つくろい)の方法は

・手繕い

・漉嵌(すきばめ)

・DIIPS

の3種類があります。

今回の授業では手繕いと漉嵌を実際に紹介しました。

 

まずは手繕いの様子を見ました。

 

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修復の作業は職人技のように、技術を必要とする部分も多々あります。今回は作業に慣れている大学院生が解説を交えながらその様子を実演してくれました。

 

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まず本紙の後ろから虫食いの形に切り取った紙をデンプン糊で貼ります。

 

その後、繕った紙が重なっている部分を印刀で削ります。

 

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このように、すべて手作業でつくろうやり方があります。

 

しかし、これでは膨大な数の古文書を修理するのにとても時間がかかってしまいます。

そこで、つぎに「漉嵌」という方法を紹介し、みんなでやってみました。

 

 

今回の授業で体験してもらった「漉嵌」という方法は、虫食い穴の部分だけ紙漉きをする方法です。

古文書の欠損箇所に紙料(水、紙繊維、粘材をあわせたもの)を流しこみ、穴を埋めるやり方です。この方法は、一度に穴を埋めることができます。

 

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各テーブルに1セットの漉嵌道具を使って、実際に体験していただきました。

 

大学院生たちにレクチャーを受けながら、一人一枚の文書を漉嵌しました。ハケやスプレーの使い方に苦戦しつつも、みんな真剣に、丁寧に作業をしてくれてとてもよかったです!

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漉嵌は、まず化繊紙に文書を裏向きに貼り付けます。

 

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そして穴の開いているところに紙料を流しこむと、水は穴のところから下に落ちます。

紙漉きの要領で、上下左右に揺らして穴に紙料が入りこむようにします。

 

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紙料が穴に溜まったら、化繊紙でサンドして、吸取紙で挟みます。

 

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そして、脱水し、乾燥させます。(この工程は授業後に大学でやります!)

 

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大学には、専用の機械をがあり、それを使って漉嵌をおこなっています。

 

この機械を用いると、大きいサイズの古文書も漉嵌可能です。そして、ポンプが水を吸いだしてくれるので、うまく穴に紙料が埋まっていきます。

 

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上の写真が専用の機械で漉嵌しているようすです!

 

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参加者のみなさんからは、実習はすこし難しかったという意見もありましたが、実際に修復の様子を見られたこと、体験できたことにとても感激した、というお声も多数いただきました!

 

道具のあつかい方や、文化財に関する知識は入学したら学ぶことができます。

この一日体験型オープンキャンパスでは、歴史遺産や文化財保存・修復のおもしろさや奥深さを知ってもらえればと実習を選びました。人が長く生活の中で積み重ねてきた文化の蓄積を守っていく、ということの重要さも伝わればいいなと考えました。

 

 

 

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