2017年5月29日
授業風景
【学科長短信05】作家・ライター・編集者に学ぶ!
ごぶさたしています。みなさん、お元気ですか?
さて、ちょっと日が空いてしまいましたが、今月の13日(土)、2年生向けのキャリア授業、プロフェッショナル研究の第2回が行われました。第1回目では、インタビューの練習もかねてクラスメイトに、「はたらく」ということについての意識がどう変化したかをインタビューしてもらいましたが、今回は3名のゲストをお迎えして、グループインタビューをやってもらいました。
今回のゲストは、作家の吉村萬壱さん、編集者の多田智美さん、ライターの大越裕さんの3人です。そう、作家・編集者・ライターという3つの職業は、文芸の学生にとって「王道」でもあり、一番人気の「しごと」なんですね。学生たちには、自分の目指す道によって3つのグループに分かれ、それぞれのお仕事の「実際」をインタビューしてもらいました。

吉村萬壱さん
吉村萬壱さんは『クチュクチュバーン』(2001年、文學界新人賞)、『ハリガネムシ』(2003年、芥川賞)から、最近の『ボラード病』『臣女』(ともに2014年)、『流しの下のうーちゃん』(マンガ(!)、2016年)に到るまで、独特の作風・世界観が特徴的な作家です。
学生たちはそこに注目し、吉村さんのどんな体験が独自の作品世界を生みだしたのか、そこを中心にインタビューをしていました。
「しごと」という点については、逆に吉村さんから、「えっ、みんな小説家になりたいの? 小説家ってどれぐらいもうかると思う?」なんて質問も。

多田智美さん

多田智美さんは、ご自身の編集プロダクション「
editorial studio MUESUM」を中心に活躍していらっしゃる編集者です。
多田さんが現代美術家の椿昇さん(本学美術工芸学科長)、原田祐馬さん(UMA/design farm)とディレクションをしたアートプロジェクト「瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト──観光から関係へ──」はまさに、多田さんのテーマ「出来事が生まれるところからアーカイブまで」を地でいくプロジェクトで、学生たちはアクチュアルな体験をもとにした多田さんのお話に聞き入っていました。

大越裕さん

大越裕さんは、理系ライター集団「
チーム・パスカル」を中心としながらも、幅広く活躍していらっしゃるライターです。
インタビューに先だって、学生たちにはアエラ「現代の肖像」、『フォーブスジャパン』(ForbesJAPAN)に大越さんが寄稿していらっしゃる記事を案内しました。大越さんにインタビューするのは、とてもハードルの高いしごとです。なんといっても大越さんご自身がインタビューの専門ですから。学生たちは善戦してくれていましたが、途中から大越さんによるインタビュー講座のような一幕も(笑)。

インタビューのあとの鼎談のようす

右・近藤雄生先生
学生たちには、自分たちの「憧れの職業」についているゲストのお三方はどんなふうに映ったのでしょうか? 憧れがさらに強くなって、それを目標にがんばってくれるのももちろん嬉しいですが、これは違うなと思って新しい方向性を考える、というのもすばらしいなと思います。「しごと」について「知る」という今回の経験を出発点として、文芸表現学科で学ぶ「ことば」を使って、学生のみんなが自分が何をしたいか、自分に何ができるか、を今まで以上に考えてくれることを期待しています!
文・河田学(文芸表現学科 学科長)
2017年5月19日
授業風景
本を自作しよう —製本ワークショップ
前期の集中授業として製本について学べる講義が始まっています。
執筆だけじゃなくて、製本まで? と思われるかもしれませんが、
先日行われた「文学フリーマーケット」に参加した学生たちの多くが
販売物を執筆から印刷、製本し、準備していました。
いつでも好きなように好きなだけ本が作れるというのは大きな強みです。
教えてくださるのは「紙もの文具と本 かもめや」店主の渡邉琴先生です。
過去にも学科にて一日講座を行っていただきましたが、
今年度からは全15コマの授業をひらき、お越しいただいております!

渡邉琴(わたなべ・こと)先生
この日は本の仕上げを行いました。
前回授業で本文用紙の下ごしらえまで終えているので、
ここにカバーやスピン(しおり紐)などを加えていきます。

スピンと花ぎれを選びます

本文用紙に接着しています

見返し用の紙も自分で断裁

色の組み合わせもさまざまです
完成したものがこちら。


慣れない作業でうまくいかないところも多々あったようですが、
本の構造をつかむにはうってつけの経験だったと思います。
次回の授業ではこれまでに各自が書いた小説やエッセイを印刷し、製本するそうです。
今後の瓜生山祭や卒業作品展などの展示でお目見えするかもしれませんね。
(スタッフ・加藤)
2017年5月12日
ニュース
コラボレーター 仲西森奈より
先月末に出版された『VEGESUSHI パリが恋した、野菜を使ったケーキのようなお寿司』という、レシピ本とビジュアルブックを兼ねたような書籍に、Collaborator(協力者)という肩書きで参加させていただきました。

『VEGESUSHI』hoxai kitchen著
大学三回生の冬に百万遍の飲み屋で知り合ったウェブデザイナー兼DJ兼料理人兼占い師……(まだあるけど割愛。以下、Kei)の方に、「文章書いてくれない?」とかなりラフな雰囲気で仕事を持ちかけられたのは去年末のこと。
Vegan(ヴィーガン。絶対菜食主義者のこと)の食生活を取り入れているKei(髪がとても長くて背格好が女っぽいからいつも女に間違えられているけど、中身は案外イイ男)は、デザイナー、占い師の友人二人と「hoxai kitchen(ホクサイキッチン)」というトリオを組んで、ベジタリアンの人も食べられる、美味しい(ここ大事!)押し寿司「VEGESUSHI(ベジスシ)」を考案し、パリ、ベルリン、東京、京都など、世界各地でフードイベントを開催していました。そのイベント、そしてVEGESUSHIという料理自体に興味を持った日本の出版社や米穀メーカーの後押しで産まれたのが、この書籍です。()が多くてごめんなさい。
野菜と酢飯のみで彩られたアーティスティックな押し寿司の写真とそのレシピ、参加者全員がしあわせそうなフードイベントのアーカイブに挟まれるような形で割り振られた4つのコラムのうちの一つ、「パリでの暮らし by Kei」を、私は担当しました。
いろいろな事情が重なって、ミシュラン一つ星のシェフの元で働いていたKeiの身辺雑記を、あたかもKei本人が書いて、話しているように書いて欲しい。というのが最初の依頼でした。Keiの各SNSアカウントの投稿を読み漁り、Kei本人から送られてくる「こんな感じの写真と一緒に文章が載るよ〜」というデータに目を通し、Keiがどういう人物で、どういうものに興味を持って、どんな口調で、何を語るのか、ということを連日考えながら文章を書いていました。役者の稽古や、小説家が登場人物を考える作業とほとんど同じですね。「気軽に、自由にやっていいよ」というKeiの言葉通り、Keiという人物を私の中で解体し、再構築して、掌編小説のような身辺雑記を書き上げました。そしてその原稿をKeiに手渡し、本人にしかわからない情報を入れて文章が組み直され、仕上がったものが、写真も含めて6ページに渡って載っています。だから、ライターではなく、コラボレーター。おそらく日本にコラボレーターという職業は存在しないでしょう。私も見本を見せてもらったとき、ネーミングのうさんくささに笑ってしまいました。

「パリでの暮らし by Kei」を担当
もう一つ。去年末から年始にかけて、コラボレーターの仕事と並行して「ブックカバーマンション」という企画に参加していました。
大学時代の友人二人が組んだデザインユニット「ふたり」によるこの企画は、イラストレーターのITSUMOさんがマンションのイラストを、そして私が、そのマンションに住んでいる(かもしれない)人物を描いた掌編小説を書き、イラストが刷られた布地のブックカバーと掌編小説をセットで売る、というもの。〈208号室のヴィクトル〉〈612号室のホギ子〉の2種類をそれぞれ100部限定でネット販売し、無事に200部が完売しました。
時期は未定ですが、京都の恵文社、東京は下北沢のB&B、という2箇所の書店で少部数ながら店頭販売も行うらしいです。もし見かけたら、ぜひ手にとってみてください。手にとったら買わずにはいられなくなるはずです。

ブックカバーマンション

掌編小説〈208号室のヴィクトル〉と〈612号室のホギ子〉
今年の3月で、大学から卒業して1年が経ちました。大学時代のさまざまな貯金を切り崩してなんとか生きている日々です。あまり褒められた卒業生ではない私から、後輩や受験生に言えることがあるとすれば、それは「選択肢は無限にある」ということです。ありふれた言葉かもしれませんが、私は毎日のようにこの言葉を身体でひしひしと実感しています。選択肢を少なくしているのは、いつだって自分自身の怖れや、羞恥心や、自己憐憫のような感情です。世界は(あえて大きな言葉を使いますが)どのように見つめることも可能で、どんな場所にも開かれています。近所の美味しそうな飲み屋に一人で入ってみよう。このバス乗ったことないけど乗ってみよう。授業中に立ち上がって教授と口論してみよう。整形してみよう。ラザニアを作ってみよう。海釣り楽しそう。外国に移住するにはどうすればいいのかな。どんな事柄も、自分の中のブレーキを壊した瞬間から始まっていきます。そしてそのブレーキを壊す練習をするのが大学だと、私は思っています。就職活動をするか、しないか、しないとしたらどうするか、ということだって、自分次第、ブレーキの壊し方次第です。
みんなのことを応援しています。わたしもがんばりますので。
VEGESUSHI HP:
http://vegesushi.eu/jp/
ブックカバーマンション受注サイト(受注自体は終了しています):
http://bookcovermansion.wixsite.com/bookcover-mansion
デザインユニット「ふたり」Twitterアカウント:@futari_925
文・仲西森奈(2015年度卒業)
2017年5月10日
ニュース
朝日新聞〈文芸・批評〉欄に掲載されました(卒業生・宿久理花子さん)
宿久理花子さん(2011年度卒業)の書き下ろしの詩が、朝日新聞(4月26日夕刊)の〈文芸・批評〉欄に掲載されました。

朝日新聞 3面(2017年4月26日 東京・夕刊)

宿久理花子「分別」
宿久さんは、在学中の2012年「ユリイカ」の新鋭詩人に選ばれ、2015年に第1詩集『からだにやさしい』(青磁社)を刊行し、中原中也賞の最終候補となりました。その後も、ユリイカ等に新作を発表しています。
第2詩集の予定はなかなか聞こえてきませんが、楽しみにしています。
宿久さんにインタビューした原稿も、温めたままになっているので、近いうちに掲載したいなと思います。卒業生の活躍が増えてきて、嬉しい毎日です。
文・スタッフ竹内
2017年5月8日
イベント
オープンキャンパス御礼!
春のオープンキャンパスにご来場いただいた皆さん、ありがとうございました!
こんな風に、教員相談ブースも、奥のワークショップスペースも、満員御礼の盛況ぶりでした!


山田隆道先生

村松美賀子先生
今年から展示販売をはじめたBUNGEI BOOKS(卒業制作作品を文庫化したもの)ですが、多くの方が立ちどまって、手にとってくださり、売れた本もたくさんありました。残部僅少となりましたが、7月のオープンキャンパスでもまた販売しますので、今回お越しいただけなかった方はぜひご来場ください。

BUNGEI BOOKSのコーナー
また、俳句ワークショップ&缶バッチワークショップも好評でした!
俳句をつくったことがない人がほとんどでしたが、仮屋くん(4年)や中野さん(2年)が丁寧にアドバイスしてくれたので、皆さん俳句づくりも、缶バッチづくりも楽しんでくれた様子です。

俳句のつくり方を指導中の中野さん(右)

俳句をつくって、紙に書きます

缶バッチマシンにセットしてます

缶バッチの出来上がり!
皆さんの作品のなかから、掲載許可いただいたものをいくつかご紹介します。

今はなき愛した人と花篝

春まけて目の裏熱くあくび噛む

花水木オープンキャンパスバス揺られ
今回は7都市からの直行シャトルバスが運行されました。遠くからバスで来ていただいたんでしょうか・・。

雷鳴の鍋が煮立ったゆでたまご

水無月やかっぱだけどもきのこ好き/きのこすきしいたけがすきえのきすき
親子で仲良くつくってらっしゃいました。きのこ愛を感じます。
次回は6月11日(日)に、1日体験入学オープンキャンパスを開催します。
半日間、文芸表現学科の授業を受けて、実際にどんなことが学べるかを体験していただけます(午前と午後、おなじプログラムをやります)。
5月12日(金)より申込みページがオープンしますので(予定)、お早めにお申し込みください。また来月会えることを楽しみにしています!
文・スタッフ竹内