- 2020年6月15日
- 日常風景
高原の日常3 ~演出って何なのだ?~
こんにちは。映画学科研究室です。
前回に引き続き、高原校舎Bstudio(Bスタ)からお届けしています。
Bスタは総板張りのスタジオ。俳優の稽古場、撮影スタジオ、広めの作業場と用途は様々です。
今回は、映画批評家・北小路隆志先生の授業中。
当学科に入学したすべての学生が学ぶ「映画概論」。映画を構成するさまざまな領域からゲストをお招きし、観客の目線を代表した北小路先生が、作品を介して作り手の考えを聴いてみる、という授業を展開しています。
北小路先生は、数えきれないほどの映画を観て研究されている映画批評のプロフェッショナルです。
どうやって覚えておられるのか不思議でならないのですが、映画のシーンをとても細かく覚えておられ、言葉に紡がれます。
映画を観ているときはいつもと違う眼差しです。
トークのプロでもあり、ゲストのお話からキーワードを丁寧に拾い集め、映画のシーンと巧みに結びつけて問い、ゲストからさらに言葉を引き出してゆかれます。
あ!それ今まさに聞きたいって思ったことだ、と思った受講生もいるのではないでしょうか。
さて、本日のテーマは「演出」。ゲストは映画監督・福岡芳穂先生です!
北小路先生と同じく、福岡先生も言葉の魔術師だと(私は)思っていますが、人物をとてもよく見つめておられます。
ひとつの考えに偏っていると感じられた時、即座に、「本当にそうなのか?」と”敢えて”揺さぶりをかけ、別の選択肢、表現もあることに気づかせてくれます。私も、はっとさせられたことが何度も…。
俳優の内から生まれてくるものを、生まれさせるように、どう仕掛けるのだ?
監督の大きな仕事のひとつであり、俳優はもとい、すべてのスタッフにとって重要な「演出」。
演出をする際、一番やってはいけないことは、俳優に感情を押し付けることだそうです。
このシーンはとても悲しい気持ちだから、ここで涙を流してください、という言い方はしません。そう言われた側は、これまで観てきた”何か”の感情をコピーしてしまうからだそう。
思い描いている感情を俳優の内から生まれるよう仕掛けを考え、「動線」「位置」「距離」「視線」という4つの具体的な指示を出して、スタッフ全員で俳優を見つめます。
キーになる”もの(物・者)”を空間のどこに仕掛けるのか。
「演出」は、監督だけが考えればいいものではなく、映画にかかわるスタッフすべてが、それぞれに考えることです。
時には美術部から提案を受けたり、あるいは俳優からこうしてみたいと提案を受けて、撮影部や録音部とも相談して、”それ”をとらえるカメラや録音機材などをどこに仕掛けるのか、さまざまな視点から「仕掛け」を考えていくそう。
それらは、撮影を実際に始めるずっと前から、気が遠くなるほど緻密に始まっています。
実際にどんな演出をされたのか、先生が監督された作品のワンシーンを見せたり、それと同じシーンを実験的に上位学年の学生に「Zoom」を使って演技をしてもらった映像を見せたりと、授業の「演出」も。
出演は、4年生俳優コース 池内祥人君と山口紗也可さん。(ご協力、本当にありがとうございます!)
(Zoomで演技をしてみて、「私にとって演出とは制限。制限の中でもがくからこそ、自身の想像をも超えた表現が内から出てくるのかも。」と山口さん。)
俳優の内から生まれてきたものを全スタッフがもらい合ったとき、想像していた以上の表現を見つけることもあるのだそうです。
映画は集団制作。あらゆる視点からの意見を取りまとめ、ひとつのものとしていくのはとても難しいことだと思いますが、スタッフ一人一人がその作品に真剣だからこそ、いろいろな意見が出てくるのでしょうね。
次回以降も、「映画概論」は東京からのZoom参戦で、続々と豪華ゲストが続きます。
受講生の皆さん、お楽しみに!
※授業撮影会場は常に窓を開けて換気。ゲストとお話する際は、ソーシャルディスタンスを保っています。
映画学科の学生達も、映画をつくっていくうえで時に大きくぶつかることもあり、傷つく姿は、そっと見ているこちらも辛くなるほど。
しかし、だからこそ、皆さんがもがいてもがいて生み出す作品は本当に尊いです。
今年はこの状況のなかで、どんな内なるものを皆さんは生み出すのでしょう。
いつも学科や学生のことで真剣に話し合っておられる先生方。映画について楽しそうに話されている姿を見るのは初めてだったかもしれません。
こんな風に学生達もまた、キャンパス内で映画の話が楽しくできる日がきますように。
では、次の領域もお楽しみに。