キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol .29 多田桜と「キャラクターデザインについて語る」の巻 Part 2

「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十二期生で現4年生の多田桜さんと、卒業制作作品「COM-CON」ともとにゲームのキャラクターデザインについて語っていきます。

 

 

村上

では今度は実際のキャラクターカードを例に見ていこうか。

 

多田桜(以下多田)

はい、例えばこのカードを例にすると、絵の要素としては、真ん中で分かれた髪型、吊り目、目と眉の間が狭い、手には本、しゅっとした立ち姿、マントを着ていて…というもので構成されてます。ぱっと見た感じだとクールな魔導士という印象ですね。

 

ゼミ通29-5

ゲームで使用されるキャラクターのイラスト

 

村上

表情からすると攻撃的な性格なのかな。ということは白魔法よりも黒魔法を使うのではないかと予想もつく。他にも意図的に「ここに気付いてくれればキャラクター性が推理できる」っていう演出はある?

 

多田

やっぱり目つきですかね。目は全ての表情を示すことになるので。

 

村上

キャラクターを見る時はまず目に注目するもんね。

 

多田

あとポーズからも推測できそうですね。最初にシチュエーションを考えて描くんですけど、よく見ると手にメモのような紙を持ってたり。

 

村上

ほんとだ。何かを届けようとしてるのかな。

 

多田

私の中での裏設定は、本の買い出しに行ってた、という感じなんです。それくらい本が好きなんだなってところに気付いてもらえればと。

 

村上

でも、メモを持ってるってことは、買うべき本を忘れる可能性があるとも考えられるかな。てことはあまり本に関心がない!?もしくは誰かに買い物を頼まれたとか。

 

多田

逆に、メモを持ってるということから、たくさんの本を買うとも考えられますね。

 

村上

勉強熱心で攻撃的な目つき…てことは、余程強力な魔法で誰かを攻撃したいと思ってる?

 

多田

ああ、その案もいいですね(笑)。

 

村上

というように、一枚の絵を観察して手に持ってるものとか細部に仕込まれたヒントに気付いて、明確な答えはないけど、自分なりの答えを導いていく。という遊び方をするわけね。

 

多田

そうです。私が意図したことじゃなくても、どこかでこういう生活とか行動しそうっていうのをプレイヤーが自由に作り出してもらって構わないんです。

 

村上

実際に来場者の方に遊んでいただいて、意図してなかった意外な発見とかあった?

 

多田

石倉君(ゲームゼミのリーダー)に遊んでもらったときは、マントを着たキャラクターが多かったので、マント族とかって種族を設定して話を膨らませてました。でも女子の視点からすると、外見のイメージだけで膨らませることってあんまりないんですよね。

 

村上

つまり男子は見た目から入るけど、女子は表情とか内面を見る傾向がある?

 

多田

はい。男子だけで遊ぶと基本的には大喜利になりがちですね。どれだけ面白い設定を考えられるかってなります。

 

村上

男子の場合は照れ隠しもあって笑いの方向に持っていこうとするのかな。女子の場合は?

 

多田

このキャラクターがめっちゃ好み!とか。このキャラクターとこのキャラクターをくっつけたい、とか。

 

村上

なるほど、恋愛の要素が入って来るわけね。男女でこのゲームを遊ぶとどうなる?

 

多田

その場合は、女子が真剣に考えた設定を男子がメチャクチャにひっくり返すような展開が多いですね。いつかケンカになりそうです(笑)。

でもそれでもちゃんとゲームとして成り立つんですよね。何度かテストプレイをしたところ、みんな何とかしてストーリーを繋ごうとしてくれるので、ストーリーが完全に破綻したり途中で終わってしまうようなことはなかったです。

 

村上

ゲームシステムありきでストーリーを彩るためにキャラクターを作るというのは誰もが考えることだけど、今回やったのは真逆の発想ね。キャラクターそのものがゲームであるっていうゲームゼミならではの切り口が面白いし、かなり玄人受けするタイプの企画になってると思う。

 

多田

実際にブラッシュアップして今後ゲームマーケットとかで販売したいと考えてます。今のものは西洋ファンタジー風なんですけど、現代版も作ってみようかなと。ファンタジーとリアルを合わせて何か新しいものを作ろうとか。

 

村上

シリーズでナンボでも拡張できそうだね。アイドルとか戦国武将とか。いずれにしても、目の付け所が面白い企画だよね。

次は絵の話をしようか。描く時の拘りとは?

 

多田

線画には拘りますね。いかにパスみたいに描くかっていう。

 

村上

Gペンで描いたような抑揚のある線じゃなくて、丸ペンとかミリペンっぽい雰囲気ね。

 

多田

手描き感をなくしていかに綺麗に仕上げるか。全部同じ筆圧で描いたような感じで。厚塗りではなくてアニメっぽいというか、私の線って強弱がないので、そういう点がパスっぽいかなって思ってます。

 

村上

ハッチングの処理で線画の美しさを強調したイラストが多いね。壁面用のイラストも影の部分を線画の斜線で構成してるし。あざとい言い方だけど、細部をそうやって構成すると「うまく見える」。プロっぽい仕上がりを意識して意図的に計算してるっていうか。

 

多田

はい、そこは狙ってやってます(笑)。で、線がそういうパキっとしたものなので、塗りも同じですね。グラデーションがあまり好きじゃないので、全部ベタ塗りです。

 

ゼミ通29-3

展示のイメージ

 

村上

線画の完成度が高いからベタ塗りでもじゅうぶん通用するんだろうね。素人臭さとプロっぽさの境界線みたいなものが自分の中で見えてる気がする。

 

多田

そうかも知れないですね。外側だけを描くんじゃなくて、例えば縫い目を描いたり。普通だと塗りで処理しそうな部分を意図的に線画で描いて絵の密度を高めたり。

 

村上

小道具とか身に付けてるものに言えるんだけど、ディテールの整合性がとれてるっていうか、革製品があった場合に縫い方とか金具の取り付け方とか機能も含めてちゃんと違和感なく見えてくるからリアルに感じる。

 

多田

そういう描き込みが好きなんですよ。ちょっと違うかもしれないんですけど、靴をうまく描く人って、全体的にうまいというか、絵の完成度が上がると思うんです。靴の形だけじゃなくて細かい縫い目とかを描いて密度を上げていくと凄くうまくなるなって。逆にそういうところにリアリティがないと納得できないんです。

 

村上

表情とかポージングに拘ってキャラクターイラストを描く人は多いけど、細部を見ると「これ、どうやって取り付けられてるの?」って感じるところがある。鎧なんかを描かせると、肩のパーツの接合部分が曖昧に処理されてて、すぐに外れてしまいそうに見えたり。

 

多田

だからこそそういう所に拘りたいんです。ファンタジー的に誇張された鎧もカッコいいとは思うんですけど、パーツとパーツがどう繋がってるのかがどうしても気になってしまって。

 

村上

少しでも不自然な部分があると冷めてしまうしね。

 

多田

ファッションデザインにもプロダクトデザインにも興味があるので、そういう説得力のある細部の作り込みをキャラクター性にも繋げていけたらなって思います。

 

村上

グラフィックデザインもちゃんとしてるよね。カードのUIデザイン然り。

 

多田

グラフィックへの拘りは、他学科にいる友達の影響ですごく意識するようになりましたね。世の中の色んなデザインを見て、なぜカッコいいのか、なぜカッコ悪いのか、っていう話をよくしていて、そこから意識するようになって。

キャラクターが上手く描けても、魅せるデザインになってないことって多いじゃないですか。そうなるともったいないって思うんです。だからグラフィックには力を入れてしっかりやろうって思いました。

 

村上

そのグラフィックの流れで、「ゼミ通」のロゴもデザインしてくれて助かってるよ。

 

多田

企業が作るものって、普通にロゴが入ってるじゃないですか。で、「ゼミ通」もたくさん続いてるので、ロゴ作っちゃえって思って。先生の目の形とゲームのコントローラーを掛け合わせてデザインしたんです。タレ目と目の下のクマが特徴的なので。ありきたりかも知れないんですけど、ビジュアルがハマってるかなって思ったんですね。

 

村上

多田はイラストも描けるしグラフィックデザインもできるから、魅せるってことをしっかり心得てるよね。今回の展示にしても、もちろん絵はうまいんだけど、商品広告を意識した佇まいがしっかり演出されてる。

 

多田

お客さんからも「商品みたいだ」って褒めていただけました。でも昔から自分に自信がなくて、満足したことはないんですよね。

 

村上

それは多田自身の話?それとも多田の作品の話?

 

多田

うーん、両方ですね。自分の絵には納得ができなくて、誰かに褒められても素直にその言葉が信じられなくて…。

 

村上

誰しも一生満足なんてしないと思うよ。毎回絵を描く度にマズい点が見つかって、毎回チクショウ!って思いながら改善を繰り返すわけで。特に多田の就職先はスーパーデザイナーばかり揃ってる会社だしね。ゲームとしての絵って、単に上手きゃいいっていう世界でもないから経験を積むしかない。それが楽しい世界なので、ぜひプロとして今後頑張ってください。

 

多田

はい、ありがとうございます。

 

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