- 2021年2月8日
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ゼミ通ヒーローズ Vol .29 多田桜と「キャラクターデザインについて語る」の巻 Part 1
※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。
今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十二期生で現4年生の多田桜さんと、卒業制作作品「COM-CON」をもとにゲームのキャラクターデザインについて語っていきます。
「COM-CON」制作者の多田桜さん
村上
月並みな質問からなんだけど、なんでこの大学に来たの?
多田桜(以下多田)
絵だったら続けられると思ったんですね。それなら芸術大学に行こうと思って。高校の時に教育実習生の方が来られたんですけど、その人がここの学生さんだったんですよ。その時に大学全体の説明をしてくださって、それを聞いて「この大学、いいな」って思って受験することにしました。その人が来なかったらこの大学のことも知らないままだったと思うんです。私、岡山の出身なんですけど、岡山の中で進路を決めようと思っていて、でも京都芸術大学のことを知ってからもうここしか受けなかったですね。
村上
なるほど。その時からゲームには興味があった?
多田
そうですね。元々ゲームのイラストレーターになりたかったんですよ。それでゲームゼミに入ってゲームの世界で使えるキャラクターデザインを学びたくて。
村上
今回はゲームのキャラクターデザインについて語るというお題で話をしようと思うんだけど、実はこの「ゼミ通ヒーローズ」を30回近く連載してきて、まだキャラクターデザインを掘り下げて語るっていうのをやったことがないんよね。キャラクターデザイン学科なのに(笑)。
多田
そういえばそうですよね。イラストについて触れる回は何度か見たことありますけど。
村上
ゲームのキャラクターデザインにも色々あるよね。遊びのための機能を記号化したキャラクターデザイン。例えばマリオとかソニックといった所謂昔ながらのゲームキャラクター。そしてイラストレーション。多田はこっちのイラストレーションとしてのゲームキャラクターに興味があるのね。
多田
こんな動作をさせたいからここをデフォルメしようとか、そういうデザインも好きなんですけど、世界観を練り込んだり、キャラクターの関係性とか奥深さみたいなものを考えるのがイラストを描くことよりも好きですね。
村上
てことは思考的にはプランナーに近いのかな。
多田
そう…なんですかね。
村上
最初にゲームのコンセプトとシステムがあって、それを面白くするためにストーリーとか世界観があって、最後にその中で活躍するキャラクターをデザインするっていう。
多田
そうですね。そういうのを考えるのはすごく楽しいです。
村上
今回卒業制作で作ったゲーム「COM-CON」はまさにその多田の好きな部分だけを抽出したような作品になってたね。
多田
そういうのをずっとやってみたかったんです。絵を描くだけじゃなくて、自分が特化してるのは物語性だと思ってるので、そこを出していけるゲームを作ろうと思いました。単にストーリーを読ませるだけのゲームだとつまんないと思って、ああいう形のアナログゲームにしました。
村上
じゃあそのゲームの内容を紹介してくれるかな?
多田さんの作品「COM-CON」のプレイ風景。
多田
はい、今回は「キャラクターそのものをゲームにする」という切り口で企画を立てました。カードにはキャラクターの外見だけが描かれてるんですけど、そのキャラクターの性格とか過去とか関係性をプレイヤーに考えてもらって、参加者みんなでストーリーを作り上げていくっていうゲームになってます。合評のときには「一時創作をするゲーム」という形でプレゼンをしました。
ルールとしては、テーブルの両端に2枚のキャラクターカードを配置して、その間を他のキャラクターカードで埋めて相関図を作るというシンプルなものです。
2人から4人プレイで、まず一人目がキャラクターのカードを場に配置するんですけど、カードをじっくり観察して、そこに描かれてるキャラクターの表情とか装飾品から行動や性格を読み取って、隣り合うキャラクター同士の関係性を考えて配置していきます。それに対して、二人目も同じように場のいずれかのキャラクターと隣接する形で関係性を考えて配置して対話をしながら物語を展開していきます。最終的には両端のキャラクターと繋がれば終わりです。
カードを配置する際、そのつなぎ目にキャラクター同士の「関係性」を示すチップを置く。
村上
勝敗を競うようなものではなくて、対話そのものを楽しむ形ね。
多田
はい、そうです。皆で一つの世界とかストーリーを考えられて良かったね、て感じです。
ゲーム性というか、この人たちはこういう行動をするだろうなって妄想を膨らませるのが楽しいので、それを面白いと感じてもらえたら嬉しいです。
村上
よくワークショップで「ハリガネマン」っていうのをやるんだけど、それに近いかな。
要は、ハリガネの棒人間を使って観察と対話を促すものなんだけど、例えば4人いたとしたら、まず一人目がハリガネ人形に任意のポーズをとらせて無言でその場に配置する。そして二人目がそのポーズを観察して感情とか行動を読み取って、これに対するリアクションのポーズをとってまた配置する。そして三人目が更にリアクションを…という感じで観察から他者の意図を汲み取ってストーリーを作るというもの。言葉を交わさないから、しっかり観察するしかない。今回多田が作ったゲームはまさにハリガネマンをそのままゲームにしたものと言えるかもね。
多田
そうですね、近いですね。
村上
「普通はこうだろう」っていう固定観念とか否定的な考えを排除して、「なるほど、そういう見方もあるのか」「自分にはこう見えてるけど他人にとってはこう見えている」っていう価値観を受け入れる練習にもなるし、「じゃあ、それに対して自分はどう主張しようか」って肯定的に発想を膨らませられるようにもなる。無言なのに対話が成立してるのが面白い。
多田
私のゲームは対話しながら行うんですけど、ゲーム性というか本質部分はハリガネマンと全く同じだと思いますね。そこで意外な発見があったりして「じゃあこういうストーリーもあり得るよね」ってどんどんイメージが膨らんでいくので。
村上
そう考えると、このゲームもワークショップで使えそうな気がするな。次年度のオープンキャンパスとか体験授業で使ってみようかな。絶対盛り上がるし。
多田
ぜひ使ってください。新入生同士が仲良くなる切っ掛けづくりにも使えると思うので。特にキャラデの学生ならこういうファンタジーの世界観とかストーリー構築とか、そういうのが好きな人が多いと思うので、とても良いと思います。
村上
そもそもこういう絵が描きたくてこの学科に入ってくる学生が多いしね。
多田
このゲームは何も考えないと全然面白くないと思うんですよね。「なんでこの人こんな表情をしてるんだろう」とか「なんで手にこんな物を持ってるんだろう」って考えながら細部に目を凝らすと色々見えてくるんですよ。絵の中に意図的に色んなギミックを仕込んでるので。
Part2に続く