キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol.33 特別編! 村上日向とイラストゼミについて語るの巻 Part 1

26-00

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

今回は、特別編と題し、イラストゼミ十二期生で現4年生の村上日向さんと、卒業制作作品「meconopsis.」の制作を通して、イラストゼミの活動について語りたいと思います。

 

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村上日向さん

 

村上

いつもはゲームゼミのトピックスを題材にゼミ生とゲームや遊びに対する考察をする形でこの記事を連載してきたんですが、今回は番外編ということで、ゲームゼミではなくイラストゼミのリーダーであるヒナタ(村上日向)のインタビューをとることになりました。

てゆーか、ヒナタの方から「私を取材しろ」とリクエストがあったので、そういうパターンも新鮮なのでアリかなと。

 

村上日向(以下ヒナタ)

宜しくお願いしまーす!

 

村上

ちなみに今回インタビュアーも学生も両方村上という名前なので、村上日向はヒナタと表記して、俺は村上@アラフィフにしとくわ。

 

ヒナタ

なんでもいいですよ(笑)

 

村上@アラフィフ

そしてなんと!今回はイラストゼミの担当教員である藤本先生も保護者として参戦されます。

 

藤本先生

はい、宜しくお願いします。イラストレーションゼミの担当をしております藤本です。普段はFOORIDERという名前でイラストレーターとしても活動しています。

 

https://www.foorider.jp/(FOORIDER公式サイト)

 

村上@アラフィフ

ありがとうございます。どうせならイラストゼミVSゲームゼミという主題でガチのトークバトルをしてもいいのかなと(笑)。

 

藤本先生

(苦笑)

 

村上@アラフィフ

今回はヒナタの卒業制作について話を聞いていこうと思うんだけど、いつもインタビューを録るときには、こちらは何も知らない前提で収録してる。分かってる前提だと徹子の部屋状態でゲストが「はい」か「いいえ」で答えるドラクエ方式みたいになってしまうので。ということで、恒例の質問になるんだけど、この大学に来た切っ掛けから聞かせてくれるかな。

 

ヒナタ

はい、私は元々絵を描くのが好きで、大昔からずっと描いてきたんですけど、中学から高校に進学する時に、美術系にするか普通科に行くかで迷って、そのとき親からは高校くらい普通の勉強をしてほしいって言われて進学校に行ったんですよ。でもやっぱり美術系の高校に行っておけば良かったって思って、高校の美術部の先生とか親に相談して芸大に行くことになりました。

イラストを勉強したかったのでイラストを学べる大学を調べてたんですけど、私、幾原邦彦監督がめっちゃ好きで、彼がここの卒業生だって知って、興味があってオープンキャンパスに行ってみたらキャラクターデザイン学科があったからここにしようかなって。もしかしたら幾原監督に会えるかもしれないって思って。

 

村上@アラフィフ

なるほどね。幾原監督に憧れてるけどアニメーションが作りたいわけではないのね。

では本命のイラストゼミで制作した卒制の作品紹介をお願いできるかな?

 

ヒナタ

私は今回高山植物のメコノプシスという花をキャラクターデザインしました。

たくさん種類がある中から10個を選んで10体のキャラクターとしてイラストレーションを制作しました。

 

村上@アラフィフ

企画のポイントになったところは?

 

ヒナタ

ただひたすらメコノプシスを描きたい一心で研究し尽くしましたね。絵を描くのも大変だったんですけど、調べるのに7割の労力を使いました。元々この花の知識はあったので、おおよそこんな感じのキャラクターデザインになるだろうなっていう構想は頭の中にはあったんですけど。

 

村上@アラフィフ

この花のどこに興味を持った?

 

ヒナタ

中学2年生のときに図書館で高山植物の図鑑を見て、変な名前だなーくらいの印象でしかなかったんですけど、その後で大阪の植物園に行ったときに本物に出会って、そこからもう忘れられず8年が経ち、今に至るという感じです。

 

村上@アラフィフ

その頃からずっと、いつか形にしてやろうと?

 

ヒナタ

そうですね。要所要所でメコノプシスをモチーフにした作品は描いてたんですけど、最後に卒業制作で大きなものを作るときに、じゃあ自分の好きなものをとことん研究して描いてやろうと思って。自分のメコノプシスに対する知識が偏ってるところもあって、どうしてもメコノプシスを推したくなっちゃって。

 

村上@アラフィフ

知識が偏ってるというのはどういうこと?

 

ヒナタ

高山植物全般に関しては、名前を知ってる程度の知識しかなくて、でもその中でもメコノプシスのことだけはめちゃくちゃ良く知ってたんです。

 

村上@アラフィフ

高山植物って、心惹かれるものがあるよね。自分も趣味で登山をやるのでよく北アルプスに行くんだけど、地上で見る花と、苦労して登り切った先で自生してる高山植物を見るのとでは感動が全く違ってて。白馬岳の頂上付近に広大な花畑があるんだけど、あれを直に見たときに物凄く感動してしまって、長女が生まれた時に「花」って名前をつけた。

 

ヒナタ

へー、そうだったんですね。

 

メコノプシス

 

村上@アラフィフ

で、ヒナタの作品の話に戻そう。今回の作品は展示の見栄えもそうだけど、作品自体の力強さもあるよね。次は作品制作の話を聞かせてくれるかな?

 

ヒナタ

まず、メコノプシスの種類が全部で90種類くらいあるので10種類まで絞って、その選んだやつをどこがどう違うのか、何が唯一の特徴なのかをまとめていって、それをどうやってキャラクターに落とし込むかを考えました。そのまま落とし込むとただの擬人化になってしまうので、ちゃんと花をモチーフにしたキャラクターにしたかったんです。花の要素を取り入れて、人に当てはめる時に何に置き換えられるかを考えるのがまず一つ。研究から絵にするプロセスのですね。それで、実際に全員分のラフを描いてみて、見比べて、また修正して見比べて、という作業を繰り返してました。

絵を描くことについては、最初の段階での下調べと設計に時間をかけました。ここでイメージを固めていたので、清書の段階では特に何も考えずに描くことに専念できましたね。

 

村上@アラフィフ

手順としては理想的だな。描きながら「何か違うぞ」ってなったら、最悪の場合全部やり直しになっちゃうからね。

 

ヒナタ

そう、それが嫌なんですよ。描いたものを捨てるのが嫌で、描いたものは全部見せたくなってしまうので。

 

村上@アラフィフ

花の特徴とか、自生する場所柄とか、そういう所から「これはこういう性格に違いない」って考えていったのね。

 

ヒナタ

そうですね。今回の作品でいうと、これだけの種類があるんだよっていうことを知ってもらいたかったんです。私がこの花を知ったのも図鑑を見たのを覚えてたからだし、それと同じようにこの作品を見たことで、どこかで偶然この花を見たときに「あ、この花知ってる」って思ってもらう切っ掛けにしてもらう作品にしたかったですね。だから印象に残りやすい作品にしたいというか、一発で可愛いとかカッコいいと覚えてもらえるような作品にしたかったんです。なので花の見た目の印象とかも結構意識しました。

 

村上@アラフィフ

実際に10体描いて、しっかり描き分けもできていて、それだけではなくて絵としてのクォリティも高かったなって思った。

この絵のメイキングについても聞いていきたいんだけど、まずどのツールを使って描いた?

 

ヒナタ

iPadのClip Studioで描きました。解像度は300dpiで、縦170cmの原寸で描きましたね。

キャラクター自体はiPadで描いて、最終仕上げはイラレで。

 

村上@アラフィフ

あれだけのサイズのものをiPadで描いてて、落ちたりしなかった?

 

ヒナタ

めっちゃ落ちましたよ(笑)。やめときゃ良かったって思うくらいに落ちまくりました。

 

村上@アラフィフ

なんでPCじゃなくてiPadで描こうと思ったの?

 

ヒナタ

もう完全に私の作業環境がiPadになってたのと、そもそもPCの容量が足りなかったから…。

 

村上@アラフィフ

それもいかがなものかと(笑)。でもiPadであれだけ仕上げられたのは大した根性だね。

 

ヒナタ

こまめに保存する、を基本にして。ショートカットキーをばかばか使いましたね。

 

村上@アラフィフ

ゲームゼミの方でも同じように「こまめに保存しましょう」言うんだけど、基本過ぎて、いちいち言うようなことでもないと思いつつ、でも作業が軌道に乗って夢中になったらどうしても保存忘れるよね。

 

ヒナタ

ほんとにそうなんです…。

 

村上@アラフィフ

レイヤーをガンガン重ねまくって、そろそろ保存しようかなと思った瞬間に飛ぶっていう。

 

ヒナタ

なので、私は先にレイヤーを分けておきますね。下塗りっていうか、塗り分けの段階で全部レイヤーを分けておいて、多少は増えたり減ったりすることはありますけど、恐らくこれが基本だろうなっていう形を想定して最初に設計しておきます。

 

村上@アラフィフ

そういう設計っていうのは、イラストゼミ的に何か作法のようなものがあるの?

 

ヒナタ

ないですね。

 

藤本先生

イラストって結構癖があって、作家さんそれぞれでレイヤーの使い方も違うので、特に指定はないですが、無茶苦茶な人だと、レイヤーも使わずに描く人もいます。イラストゼミとしては特に決め事などは設定していないですね。

 

村上@アラフィフ

そこは作品に応じてお任せなんですね。

 

藤本先生

ソフト自体も、僕が触ったことのないようなものを使ってる学生もいますので。

 

ヒナタ

塗り方一つとっても人によって全然違いますからね。

 

村上@アラフィフ

制作をする上で先生と学生とでぶつかり合うような場面ってあるんですか?

 

藤本先生

僕の好みもあるし学生の好みもあるので、「ここはこうした方がいいよ」って言っても「いや、私はこっちの方がいいと思います」って突っぱねられる場面があったり、「こんな方法はどう?」って展示のアドバイスをしても議論になったりとか、そんな感じですかね。

 

村上@アラフィフ

やっぱり感覚による判断が大きいからなんですかね。

 

藤本先生

そうですね。色味とかポージングとか。今まで絵を描いてる子たちって、その過程で自分のスタイルが確立されてるので、そこに拘るのか捨てるべきなのか、そういうせめぎ合いもあったりしますね。

 

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研究制作ノート「meconopsis-synopsis」より抜粋

 

 

村上@アラフィフ

中間合評も最終合評もヒナタのプレゼンは本当に凄く良かったよ。

 

ヒナタ

それ、よく言われるんですけど、私はプレゼンにあまり時間をかけた覚えがないので、そこ褒められると何でかなーって思うんですけど、何でなんですかね…?

 

村上@アラフィフ

石倉(ゲームゼミのリーダー)とも制作の話をしていて、プレゼンも創作もひっくるめて、技術力とかセンスよりも性格の力が大きいよねって話になって。伝えたいという気持ちがあるのかどうかっていう。ヒナタの場合そのポテンシャルが持続できてたのかなって思う。

 

ヒナタ

今回の作品は本当に自分がやりたいことだったので、モチベーションが保てたんだと思います。

 

村上@アラフィフ

それに尽きるね。好きで作った作品だから、当然プレゼンも自信が滲み出てて、より強く伝わる。

 

ヒナタ

自分が調べつくした結果、知識量だけはあるので、今度はそれを削ぎ落してこの作品にまとめるのはラクでしたね。あとはあの短時間のプレゼンでどこまでうまくまとめたように見せかけるかっていう(笑)。

 

村上@アラフィフ

知識といえば、そもそも参考にできる文献が少なくて大変だったという話をしてたね。

 

ヒナタ

元々自分が、この8年間で植物園に行き倒したんですよ。メコノプシスのためだけに。その時に花を育てた方に直接お話を聞いたり、実際に花に触れることもしてきたので、過去の自分の体験に助けられてます。

ただあまりにも情報が少なすぎて、ネットにある情報が正し過ぎるっていう珍しいタイプなんです。

色んな人が知ってると情報が交錯して、どれが正しくてどれが誤りなのかが分かりにくいので、ネットの情報は鵜呑みにしない方が良いよってよく言われるんですけど、調べてるところが日本では一つしかないレベルだったので、そこを見れば大体の答えが見えてくるのと、この研究を始めたタイミングで運よくメコノプシス関連の書籍が二冊発売されたので、よりこの題材を専門でやる決意が固まりましたね。

 

村上@アラフィフ

すごいタイミングで発売されたね。運命的なものを感じてしまうな。

でもそんなに資料が少ないなら、自分で書籍出したら売れるんじゃないのか?(笑)

 

ヒナタ

実はもうデータにして売ってるんですよ、解説付きで。ちょこちょこ売れてて、「面白かった」って感想もいただいてますね。

 

Part2に続く

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