キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol .32 石倉凛太郎・井沼田稜とゲームゼミを振り返るの巻 Part 2

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※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十二期生で現4年生の石倉凛太郎さんと井沼田稜さんと、卒業制作作品「TASQUEST(タスクエスト)」の制作を通して、ゲームゼミでの学びそのものを振り返ってみようと思います。

 

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石倉凛太郎さん(左)と井沼田稜さん(右)

 

村上

で、実際に完成してみて、どうだった?

 

石倉凛太郎(以下石倉)

タスクをゲームにするという点で卒展の来場者の方からは興味を示していただけましたね。

 

井沼田稜(以下井沼田)

実際に触れてもらって、そこでの反応も良かったので、結構刺さったかなと思いましたね。

これまで自分が信じてやってきたことが理解してもらえて、そこが嬉しかったし楽しかったです。

 

村上

刺さったということは時代性に合っていたということなのかな。

 

石倉

アプリの目的に共感できる部分があったから「なるほど」と理解して感じる面白さというものがあったのと、タスクをやらない大学生がターゲットという「あるある」が伝わったのかなと思います。

 

村上

タスク管理アプリ自体は既に色んな種類のものが世に出回ってるんだけど、今回やりたかったのは大学生向け。というより社会人の場合、タスクをこなすかどうかは関係ないよね。給料とか報酬払ってるんだから、そもそも仕事をちゃんとやるのが当たり前なわけでさ。

 

石倉

やらないと死にますもんね。

 

村上

大学生でもやることやらなきゃ卒業できないよね(笑)。でも生きてはいける。そんな微妙な所に狙いを定めた着眼点は面白いなと思ったね。

 

井沼田

ただ、そもそもアプリを作ること自体初めてだったので、機能を実装するところも何もかも独学で調べていったんですけど、そこがかなりしんどかったですね。去年まではゲームの制作をしてましたけど、ゲーム作りとは全然考え方が違うので。

 

石倉

僕も「こんなの作ろう」って言ったけど、すぐに「で、どうやって?」ってなって(笑)。

 

村上

ゲームゼミでアプリを作るということはグラフィック系の先生からボコボコに突っ込まれるのは最初から分かり切っていて、それでもあえて挑むという(笑)。

 

井沼田

でもあの合評でのフィードバックは本当にありがたいお言葉でした。めっちゃ勉強になりました。

 

村上

アプリはUIの集合体だからね。じゃあそんなビジュアルデザインの面での苦労話はある?

 

石倉

シンプルに初めての作業だったから結構時間がかかったなって。修正して実装して、また修正して実装して…これを延々繰り返したので、ベースのものを用意してそれをひたすら磨いていく作業をしていました。でも、お互いにフィードバックし合って修正するたびに日に日に良くなっていくことが実感できたから、これは楽しい体験でした。

キャラクターデザインと違って、UIって誰が見ても一定の良し悪しって付けられるじゃないですか。UIに味も何もありませんよね。ヘタウマとかも。だからその自分のUIがどんなレベルなのかを判断できたのは楽しかったしキツかった点ですね。

 

村上

一つのボタンを作るにも何個も何個も試作品を作って実装してたね。

 

井沼田

企画の初期段階と最後のバージョンだと全然形が変わってるもんね。

 

村上

それはミニゲームをカットするという大幅な変更が入ったから?

ミニゲームの数って元々何個入れる予定にしてたっけ?

 

井沼田

11個ですかね。そのうち二つは完成していて、残り分は途中段階だったり企画段階だったりですけど。

 

村上

いずれにしても、半年かけてそこまで進んでたものを中止せよと言うのも苦渋の決断だったんだけど、でもそのままでいくとどこかで企画の軸がブレそうだなと思ったんだよね。単なるミニゲーム集で終わる恐れがあったというか。

 

石倉

それもありますけど、もしミニゲームの量で勝負する方向性に舵を取ってた場合、逆にUIの方が疎かになっていって、アプリとしてそもそも成立しないという結果になってしまうのではないかと思っていて、前半はアプリの制作、そして後半は全部UIの制作に時間を割くことが出来たのが大きかったかなって思いますね。

結果的に企画の的も絞れて、奨励賞もいただけたので。

 

村上

ミニゲーム集だったら受賞にはならなかっただろうね。あとは二人のプレゼン力も含めて総合的に評価された感じだったね。

 

石倉

インターンに行った時にも感じたんですけど、プレゼン=よくしゃべらないといけないって勝手に自分の中でハードルを上げて、現実とのギャップによって苦手意識を抱いてしまう人って多いのかなって思いますね。

 

村上

そうだね。プレゼンって、しゃべることが目的じゃないからね。

 

石倉

50メートルを走るっていう題材に対して、皆が勝手に7秒台で走らないといけないと思い込んでしまって、そんなに早く走れないから苦手だと感じる人がいますよね。走り切りさえすればそれで成功だし評価もされるのに。もっとフラットに捉えたらいいのになぁとは思いますね。100点じゃなくて30点でもいいから伝わればいいじゃんって。

 

村上

それぞれのゴールの定め方だよね。そもそも何のためにプレゼンするのかっていう。「プレゼンさせられる」のと、「伝えたい」気持ちがある人とで全然印象も違う。

 

井沼田

一年生の時に先生から「結論から先に話せ」って言われて、僕は未だにこれを鉄則としてますね。

 

村上

井沼田のプレゼンっていつも最初に結論を話してくれるから、頭の中に絵が浮かびやすくて、その前提で補足をしてくれてるような感じですごく伝わりやすい。

 

石倉

あとは僕が良くやるんですけど、手の動きを使って言葉を補足したりしてます。

 

村上

最終合評は対面だったから身振り手振りで伝わりやすかったけど、中間合評はZOOMだったから、あの小さなフレームの中だけでプレゼンをするっていうのはなかなかハードルが高いなって思ったね。

 

石倉

映ってないのが分かってても手を動かしてましたよ(笑)。そういうのって顔とか声にも出るじゃないですか。この部屋の空気感をモニター通してそっちに持っていってやるっていう気持ちでプレゼンしてました。

ゲーム会社のインターンに行った時に、マイクを持たされたんですけど、自分が話すときについ夢中になってしまって、手がめっちゃ動いてて、「声がデカかったから聞こえたけど、めっちゃ手動くね」って突っ込まれました。

 

村上

動きがあるだけで自分の中で話すリズムがとれるしね。

 

石倉

話すペースも掴みやすいですよね。

 

井沼田

僕はまず最初に台本を書きますね。もちろん、それを一語一句間違わないように読むんじゃなくて、一度台本を書くことによって思考を整理するっていうことですけど。

 

村上

「読んでる感」が出ると、聞いてる側は冷めるからね。自分が身を削って生み出した作品なんだし、「どうっすか、うちの子かわいいでしょ!」っていう気持ちが一番大事なんだと思う。

さてさて、大学生活もいよいよ終わりになるので、ここらで4年間の総括を聞かせてもらおうかな。

 

石倉

一年先の自分が何をやってるかの予想もつかないくらい密度が高くて、面白かったですよ。

元々絵を描きたくてこの大学に入ったのに、ゲームやゲーミフィケーションの研究をし始めたと思ったら、まさかいきなり和歌山に連れていかれるとは(笑)。

 

井沼田

懐かしいですね(笑)。

 

村上

自分もゲームゼミの担当教員をやりながらミュージックビデオの監督をやるとは思っても見なかったよ(笑)。あのロケ撮影はハードだったけど楽しかった。

 

石倉

食事と旅費全部払うから和歌山ロケの撮影手伝ってくれって言われて。あれはなかなかの合宿労働でしたね。

 

和歌山ロケ

石倉

そうやって普段は見れないものを見せていただいたりとか、ゲームジャムで制作したゲームをビットサミットに出品させていただいてファミ通さんの取材を受けたりとか、サイコロ振れば何か面白いことが起こるような刺激的な大学生活でした。

 

村上

まあ、動きさえすれば何かは必ず起こるからね。丹羽副学長がよく言ってるけど、「成功の反対は失敗、ではなく、成功の反対は何もしないこと」っていうね。失敗したらフィードバックがもらえて改善できるけど、何もしなかったら何も生まれないから。

 

石倉

そうですね。アクションを起こせば必ず相応のフィードバックがついてくるので、行動することが楽しくなったし、そういう良いサイクルが生まれた、そんな4年間でした。

 

村上

じゃあ、井沼田の4年間の総括は?

 

井沼田

僕はこの4年間というのは、さっき石倉君が言った通り、アクションさえ起こせば誰でも素敵な体験ができますよっていうことと、あとは大学に入った時からずっと言われてますけど、とにかくここは自分から学びに行く場所なので、施しを前提にしてると足元すくわれるっていうのは痛感しましたね。

 

村上

スキルについては、ゲーム領域では特に技術的なことを教えていなくて、ネットで調べられることは自分で調べてやっといてね、っていう方針なんだけど、それについてはどう思った?

 

井沼田

プログラミングの先生も基礎的なところを断片的に教えるだけで、あとは表現したい内容に合わせてこれらの基礎知識をいかに組み合わせるかが重要なんだよって教えてくれて、結局は自分で考えて行動を起こさないといけないようになってましたね。

 

村上

あと、周りを見渡してみれば分かると思うけど、卒業制作の良し悪しって、技術力とかセンスじゃなくて、性格かなって思うよね。

コツコツやる人、計画性のある人、コミュニケーション力の高い人っていうのは、やっぱりそれなりに凄いものを出してくる。そういう点でここの二人は揃って社交的だし計画性も高いし、それで然るべき評価に繋がったのかなって思う。

 

石倉

そこを認めていただけたのは嬉しいですね。でも、この間も井沼田と話してたんですけど、自分たちのチームの反省点として、良くも悪くも一つも失敗せずに卒業制作が終わってしまったんですよ。個人的にはもうちょっとぶつかり合いとかがあっても良かったのかなって思いますね。致命的に上手くいかないこととか、困難を前に二人がどう立ち向かうか、みたいなヒューマンドラマが描かれるかと思ったんですけどね。

 

村上

もしこのチームのメイキングドキュメンタリーを作ったとしたら、起承転結の転がないまま、なんとなく終了して全然面白くない番組になりそう(笑)。

 

石倉

タイムラプスで見たらちょっと面白いかも知れないですね(笑)。ちょこちょこちょこって作品が順当に完成していくっていう。

 

村上

順調に組み上がっていくんだけど、途中で一旦ミニゲームだけごっそり消えるっていう大きな動きが入る(笑)。

 

井沼田

お!今何が起こった!?みたいな(笑)。

 

石倉

本当にお行儀の良い作り方をしてたって感じですよね。もちろん、トラブルが起こらないように計画を立てたからなんですけど、それにしても、そういうドラマチックなトラブルは起こらなかったですね。

 

村上

ゲームゼミ全体ではどんな印象だった?

 

石倉

中間合評のときは、コロナの影響を言い訳に全然進まない人とか出てくるかと思ったんですけど、全員ちゃんと仕上げてきたなっていう印象でした。

 

村上

逆にいうと、キャラクターデザイン学科では言い訳が通用しないので(笑)。泣き言言っても無駄なのが分かってるからやるしかないっていう。

 

石倉

今年のゲームゼミは全員就活が決まるのも早かったじゃないですか。それもあるし、コロナの影響で苦しめられたっていうのはなかったように感じますね。

 

村上

この代は本番に強いよね。

 

石倉

 

良くも悪くも、ですよね。失敗しないから学ばないっていう(笑)。

 

村上

まあ、今のは悪い意味で言ったんだけどね(笑)。

 

井沼田

(笑)

 

村上

さてさて時間が来たのでこのへんで。

みんな卒業後はプロとして社会で生きていくことになるので、どんどん色んなことに挑戦してもらえたらと思います。

ではこれからも頑張って下さい。

 

石倉井沼田

はい、ありがとうございます。

 

 

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