- 2021年6月21日
- 日常風景
わいわい関わり合う「ものづくり」 基礎美術コース・漢詩の授業 【文芸表現 学科学生によるレポート】
違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。
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こんにちは、文芸表現学科2年生の下平さゆりです。
今回は、美術工芸学科・基礎美術コース2年生の「漢詩の授業」を覗き見させていただきました。
同じ2年生だからこそ感じた身近さの中で、受けた刺激は数多く――。
「学科が変われば、学生も変わるのだなぁ」と実感したものです。まるで高校時代の教室に戻ったかのような、温かな喜びと親しみやすさにあふれた空間をご紹介します。
●なにもかも自分たちでつくる
「漢詩の授業」といっても、漢詩をつくるだけではなく、篆刻(てんこく・石や木を彫り、ハンコをつくること)や、和綴じ本の製本までをも体験できるという幅広さがあります。
授業全体の流れは、ざっくり言うと次のような感じです。
(1) 篆刻(てんこく)をおこない、篆書体(てんしょたい・ハンコなどに用いられる書体)による自分のハンコをつくる。
(2) 2年生全員の篆刻を1冊にまとめた和綴じ本をつくる。装幀も自分たちで!
(3) 自分でオリジナルの漢詩を詠み、紙に記し、絵を添える。
(4) 2年生全員の漢詩を1冊にまとめた和綴じ本をつくる。
漢詩を詠むのも、詩の横に絵を描くのも、篆刻を彫って押印するのも、和綴じ本をデザインするのも、すべて自分という授業です。
佐藤峰雄先生によるご指導(漢詩をどうつくるかまで教えてくださるのが、すごいです)のもと、この日はちょうど(4)の授業が行われていて、漢詩の和綴じ本をつくるところでした。

↑作業机の様子。置いてある物の多さにも、なんだかワクワクしてきます。
●笑い声もある、わちゃわちゃした雰囲気
見学していて驚いたのは、教室の雰囲気でした。大学の授業というよりは、まるで、高校時代の教室のような。
みんなでわいわい盛り上がって、先生ともふざけあったりしています。
懐かしい温かさがありました。
それでいて、作業机の上で動いている手の様子を覗いてみると、みなさん、おそろしく手際が良い。
やはり、さすが、基礎美術コースのみなさんです。
とくに、大事な段階ではスイッチが入るようで、真剣なまなざしで挑んでいます。それでも、合間には、友だちと相談しながら切ったり貼ったり。
きのう観たドラマの話が聞こえてきたり。あちこちで笑い声が起きたりもして……。
あれ? てっきり、もっとバチバチしてるのかと思ってた……。
そんな私の偏見を吹き飛ばす、わちゃわちゃ楽しそうな雰囲気。なごやかで素敵です。

↑本にまとめていきます。なんてかっこいい背中なんだ……。
●練習がない、一発勝負のものづくり
ニコニコと語ってくださりながらも、作業をしっかりこなすみなさんには、「ほんとうに2年生ですか?」と言いたくなるぐらいに、職人さながらの貫禄がありました。渋い。
学生の方たちとお話をしていると、おもしろい言葉も聞けたりします。
「練習がない」
「ぜんぶが一発勝負」
失敗できない、と苦笑いしているのに、手際の良さや表情からは、隠しきれない自信がダダ洩れなんです……。
そんなところからは、入学してからの1年間、この基礎美術コースでみなさんが積み重ねてきたものの片鱗が垣間見えるようでした。
「失敗もある。完成するまでどうなるかわからない」
このひとことは、私自身も、1年間芸大で過ごしてみて大いにうなずけました。
でも、そこが楽しいんだよなあ、と。
意図した通りにならないからこその良さがあります。
どうなるんだろう、と思いながら頭だったり手だったりを動かし続けた結果、なんとか完成にたどりつく。
その過程こそが、ものをつくって表現することの醍醐味なのかもしれません。
基礎美術コースのみなさんも、そんな過程をイキイキと楽しんでいるように感じます。
●おたがいに関わり合える、アットホームさが魅力
失敗したくない、ではなく「失敗も楽しめる」。そんな気持ちがある。
身構えすぎず、リラックスして向き合うみなさんの姿からは、見ているだけで、エネルギッシュな原動力が伝わってきます。
私が所属する文芸表現学科では、ひとりでものを書く「ものづくり」が多い。
しかし、基礎美術コースでは、みんなでわいわい、おたがいに関わって「ものづくり」に携わることができる。そこが、大きな魅力だなあと思うのです。
誰かの作品に干渉したり、自分の作品も誰かに侵蝕されたりしながら、自分や作品を高めていく機会が、つねにある。
気心の知れた人たちと過ごす制作環境は、とても温かい。
その温かさこそが、基礎美術コースのみなさんの「今」をかたちづくるかけらのひとつなのではないでしょうか。
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