- 2021年10月4日
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ゼミ通ヒーローズVol.37 竹内彩梅とゲームジャムについて語るの巻
※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。
村上
今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ3年生の竹内彩梅さんのインタビューをお送りします。
このたびビットサミット主催の学生ゲームジャムに参加し、見事最優秀賞を受賞したので、その舞台裏について聞いていこうと思います。
竹内
はい、宜しくお願いします。
竹内彩梅さん
村上
ではまず、ゲームジャムといっても分からない人もいるので、そこから聞いていこうかな。
竹内
これは、他校の学生とチームを組んで、テーマに沿った形で決められた期間内に実際に遊べるゲームを完成させる、っていう企画です。
村上
ハッカソンのゲーム版ね。
竹内
あ、ハッカソンが何かよくわかってないです…(笑)
村上
ハッキングとマラソンを組み合わせた造語で、技術者やアーティストなどをごちゃまぜにして、あるお題に沿って短期間で技術開発を行うというものね。24時間以内とか48時間といった形で集中して行うものが多いね。
今回は学生向けのゲームジャムなので少しだけハードルが低くなっていて、三日間のコアタイムがあって、その後ビットサミットの開催ギリギリまではブラッシュアップができるので結構余裕はある…のかな?
竹内
そうですね、三日間のコアの開発期間中に一通り最後まで遊べる形のプロトタイプを制作して、あとは残りの調整期間でレベルデザインをしたりデバッグをして作り込んでいきました。
全12チームに提示された共通のテーマが「柔軟性、適応性」で、それぞれでこのテーマから発想を膨らませて、ペラコン形式でまとめました。
ペラコン形式っていうのは、A4サイズのペラ一枚でゲーム企画をまとめるコンテストの呼称で、言葉を極力排除してビジュアルとキャッチコピーと簡単な補足文だけで分かりやすく伝えるプレゼン方法です。
ペラコンの画像
竹内
企画書のプレゼンをした後で、企業の方や先生方からフィードバックをいただいて、そこからいよいよ実際のゲーム開発スタートとなります。
村上
そしてめでたくビットサミットの晴れ舞台でお披露目ができて、さらに竹内チームの作品が最優秀賞を受賞!まずはおめでとうございます。
竹内
ありがとうございます。
授賞式の後の竹内さん
竹内
今回作ったのは「イミュニティ」というタイトルで、意味は「免疫」になります。
ここに登場する主人公は四角い形状をしていて、ダメージを受けて死ぬたびに、死んだ面に抗体を獲得することができるキャラクターになっていて、その抗体を使い分けながらステージを進んでいくっていうゲームシステムになっています。
主人公はジャンプするたびに90度回転する仕組みなので、体のどの面にどの抗体をつけるかを考えながら進めていきます。結構頭を使うアクションゲームになってますね。
村上
ステージ上に障害物のギミックがあって、そこに触れて死んでしまうと、接触した面にそのギミックの抗体がつく、ということね。
竹内
そうです。ギミックにはマグマと氷と針の三種類があるんですけど、一度死んで復活した後はその免疫のついた面で同じギミックに触れても死なずに進めるようになります。
村上
上手い人は、四角いキャラクターのそれぞれの面に異なる免疫をつけておいて、ラクにクリアする、という遊び方になるね。単純な発想でいうと。
竹内
そうですね。ただ、足のついている下の面でダメージを受けると、他の三面につけた免疫が全て剥がれ落ちる仕掛けになってます。
溶岩地帯のステージが苦手な人は、3面全部にマグマの免疫をつけておくなどして、ステージに合わせてラクに進める方法を考えていくことになると思います。
例えば下にマグマがあって、上に針があるような場所だと、ジャンプするたびに90度回転することになるので、免疫をつける位置がとても重要になってきます。
あと、2ステージ目と3ステージ目になると後ろから追いかけてくる敵が出現するので、これに触れると免疫がもらえず、触れると免疫を全部没収されてしまいます。
村上
エグい(笑)ちょっとやったけど、メチャクチャ難しいよね(苦笑)
竹内
そうですね。アクション要素だけではなくて、かなり考えないといけないので…。
村上
まず操作に慣れるまでに凄く時間がかかったな。そこから直感的に操作できるようになるまでに結構なトレーニングが必要になるのかなと。ようやく「お!面白くなってきたぞ!」と思った時にはもうギミックまみれの場所に来てて全然先に進めないという(笑)
死にゲー、ということで良いんだよね。
竹内
死ぬことが苦痛にならないゲームですね。逆に、死なないと免疫がつかないから、死んで生き返って…を繰り返して徐々に強くしていくゲームになってます。
村上
ゲームシステムが物凄くよく練り込まれていてバランスも良いし、駆け引きも絶妙だし。納得の最優秀賞だね。
全体で与えられた共通テーマである「柔軟性・適応性」と、コロナ禍の状況だからこそ生まれた「適応性×免疫」というゲームのコンセプトも、なんというか人生そのもののメタファーになってて素晴らしいと思う。
竹内
今回ゲームの取っ掛かりとなる原案は他校の方が考えて、それをゲームゼミ2年生の松下さんがシステムを練り込んで結果的に彼の案が採用された形になります。
村上
竹内の役割としては?
竹内
私は今回ゲームプランナーとして参加しました。私のチームはプランナーが5人、プログラマーが3人、デザイナーが1人という構成でした。企画自体はプランナーだけではなくて全員で話し合いながら固めていって、仕様がまとまった後からは、私は制作進行的な役割に回ったり、効果音関連や、あとはデザインのお手伝いをしたり、トレーラーの制作と編集作業をしました。
村上
なるほど。で、完成した作品は見事にビットサミットに出品させていただけた上に、東京ゲームショーにも出品できましたよと。両方とも今年は残念ながらコロナの関係で一般客の入場はできなかった分、ゲームのデータは公式サイトからダウンロードして遊んでいただけるんだよね。
竹内
そうですね。今も配信しているので、ぜひ遊んでいただきたいです。
村上
会場は、業界関係者とプレス関係者が入場できたけど、ちゃんと遊んでもらえた?
竹内
そうですね、結構遊んでいただけましたね。ステージ1を遊んで操作を理解していただけて、中には最後まで遊ばれる方もおられました。
ゲーム序盤はあまりギミックを詰め込まず抗体を作らなくてもある程度進めるようにできていたので、せっかくだからもっとギミックを詰め込めばよかったかも、というような意見があったり、もう少しテンポが良かったら面白くなったかもね、とか、業界関係者の方々から色んな意見をいただけました。
会場内での試遊の様子
村上
ゲーム開発自体はDiscordを使ったオンラインでのやりとりでゲーム開発を進めたということで、やりにくくなかった?
竹内
まあ、特に問題はなかったですね。
村上
今回はオンラインで参加する人と、京都のホテルに泊まって作業をする人がいて、ホテル組の中でも自室にこもって集中して作業をする人とレストランで打ち合わせしながら作業を進める人の3パターンに分かれてたね。制作の流れ自体はどうだった?
竹内
Discordを使っての制作で、お互いの顔が見えず音声だけでのやりとりなので、最初は話し出しにくかったですね。ZOOMだと顔が見えるので、表情をみて色々察することもできるんですけど、音声だけだと話し出す間合いとかがつかめなくて、最初は結構戸惑いました。
とはいえオールオンラインなので、場所と時間を問わないっていうか、結構遠方の方もいらっしゃったんですけど、それでもほぼ毎日夜とかに集まって企画会議や作業ができたので、そこはオンラインの強みだったかなって思います。
村上
この短期間で実際に遊べるゲームが作れて、当然それは実績作りにもなるわけだし、この先ゲーム業界への就職を考えてる人たちからすると、相当おいしいイベントだと思うよ。
正直、ビットサミットの会場に作品を置いていただけるっていうだけでも十分価値はあるよね。許されるならゼミ生全員強制参加で合宿させたい(笑)
竹内
実績が得られて、他校のクリエーターさんとのつながりができて、あとはビットサミットの会場で色んなゲーム会社の方から名刺をいただいたりして、良いことしかなかったですね。
村上
過去の先輩も、ゲームジャムでの人脈を使って、専門学校のプログラマーと一緒に自主制作ゲームを作ってたりしてたしね。向こうはプログラマーの人材が豊富だけどデザイナーが足りなかったりして、うちのゲームゼミからデザイナーを派遣して交換条件でお互いの作品を手伝ったり。
竹内
それはいいですね。
村上
先日も立命館の学生がUNITYの勉強会を開催して、そこにうちの学生を招待してくれたり。年々京都界隈でのゲーム関連の学校同士で技術の底上げをしようと絆が強くなりつつあるのを感じる。
というわけで、ゲームジャムに関しては一旦ここまでとして、次は学科展に展示した竹内の個人作品について話を聞いていこうと思います。
つづく