染織テキスタイルコース

多様な染織の在り方を築く 染テキの先生と卒業生が展覧会を開催中【文芸表現 学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

文芸表現学科・2年生の出射優希です。大学の中で行われている染織テキスタイルコースの展覧会に際し、八幡はるみ先生にお話をお聞きしました。
学内でものづくりに対する刺激をたくさん頂き、幸運な環境だな……としみじみ思わずにはいられません! 多様な作品から、卒業生の方が自らの手で掴まれた多様な生き方を感じます。
なお、今回の記事のなかの写真は、京都芸術大学の広報課によって撮影されたものです。

 

 

●師の言葉と作品が、会場を包む

 

現在、人間館1階ギャルリ・オーブにて「Colors 染めの世界・八幡はるみと卒業生」が開催されています。

染織テキスタイルコースの立ち上げから指導されてきた八幡先生が、退職されることを機に企画された今回の展覧会には、壁面の師の作品と言葉に包まれるように、卒業生の作品も並びます。

 

 

染織の中でも最新の「デジタルプリント」という技法を用いて作られた掛け軸。

唯一壁面を用いて展示されていますが、実はこれが八幡先生の作品なのです。

 

 

●未来型の道具「軸」と最新技術の出会い

 

布に刷る工程も機械が行うため、「データを作るところまでが私の95%の仕事」と語ります。

ずっと昔からある軸の表現と最新の技術が出会うこととなった背景には、八幡先生のある思いがありました。

 

——私は軸ってすごく合理的なお道具だと思ってるんですよ。日本の住居は夏の間、襖と障子を取っ払ったり、構造的な壁がないですよね。風土に合わせて変化していく住空間を日本人は知っている。だから道具も、見せたり直したり、飽きたら簡単にしまえる方が合理的です。そんな合理的な道具っていう一点に惹かれて軸が大好きでね。日本人はその辺もっと柔軟だったと思うの。掛け軸は現代でも使える非常に合理的な未来型の道具というふうに思っています。

 

戸惑いなく新しい技術を取り入れていく姿勢はただそれだけではなく、昔から既にある柔軟さを丁寧に拾い上げることで成り立っているのです。

 

 

——伝統ってなんやろうって話をしたときに、私は〈時代のふるいにかけられた合理性〉って答えたの。ふるいにかけられたものは何がしか、今あらねばならないという合理性を備えてると解釈したんです。そういうものを私たちが発見できたら残す努力はするし、それでまたいいって評価した人が広めていく。それが伝統だと思うんです。

 

既存の価値観を自分の中で理解し消化することの楽しさを、八幡先生の言葉から感じます。

 

●染織の在り方へ、それぞれの回答

 

展覧会を彩る八幡先生の言葉のなかに「色には絶対値はなく、むしろ曖昧に捉えることを勧めてきた。」とあります。

物事の捉え方や価値を、自分で考えた上で選択する師の姿を見てこられたからこそ、今回のように多様な作品が並ぶのかもしれません。

展覧会に参加している卒業生は皆共通して、大学院で「考える時間」を持ったことが大きく作品に影響を与えているのだと言います。

 

↑野村春花さんの作品

 

八幡先生は、染織というジャンルがアートと工芸の狭間で揺れ動いてきた歴史を肌で感じ、「本当に居心地の良い染織の在り方とは何なのか」を自身に、そして教え子たちに問うのです。

 

——アートに行くのも、商品を作るのも、なんでもよし。染織はそれだけ多様な領域で、最先端も伝統もあるし、これだけ広く生活にコミットしている領域ってないと思うんです。

 

↑塩見友梨奈さんの作品

↑江島佑佳さんの作品

 

 

染織というジャンルの良さの一つは、作品が日常の中で人に使われるということ。

 

——コンセプトが先にあって、作品ができていくっていうのが、一番きちんとしたものの作り方だけど、結構難しいですよね。だから一回作ってみる。作ってみてからコンセプトを沿わせる。そのコンセプトが血肉になって、自分の言葉として本物になる瞬間があるんですね。だからそのサイクルで作って考えてを繰り返していく。いつの間にかどっちが先だったけって、わからなくなる。

 

何を作るのか、答えは手を動かすなかで見つけていく、というのは、以前工房に訪れた際にも、学生さんから聞かせて頂いた言葉でした。

 

 

●人を育て、進んでいく作品

 

八幡先生は今回の展覧会を振り返り、こう語ります。

 

——この展覧会をつらつら考えると、一人ひとりが私の作品だなと思えてきたんです。退職記念だから先生の作品で埋め尽くすのが普通かもしれないけど、私はこれでいいなと。思えば全部、人材が、私の作品だわって。

 

染織の未来とものづくりの未来。そして自分自身で考え築いていくエネルギーを見せていただきました。
それらも全て含めて八幡先生の作品として、大切に受け継がれていくのです。

 

 

Colors -染めの世界・八幡はるみと卒業生-

会期 2021年9月25日(土)〜10月6日(水)
時間 11時〜18時
場所 京都芸術大学 ギャルリ・オーブ
出展者 高ユニ、羽毛田優子、川野美帆、江島佑佳、山元桂子、宮田彩加、井上康子、塩見友梨奈、小野由理子、野村春花、松本圭祐、廣田郁也、八幡はるみ
入場料 無料(予約制)
運営 Colors展 実行委員会 川野美帆、山元桂子、八幡はるみ
協賛 学校法人瓜生山学園「特別制作研究助成」、瓜生山同窓会
ビジュアル・空間デザイン

北原和規(UMMM)

 

展覧会ホームページ

https://colors-kyoto.peatix.com/
https://www.yahataharumi.com/

 

「Colors -染めの世界・八幡はるみと卒業生-」ギャラリートーク

 

 

 

 

取材記事の執筆者

文芸表現学科2年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

1年生のとき、友人たちと共に、詩を立体的に触れることができる制作物にして展示した展覧会「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」を開いた(バックス画材にて)。

自分のいる場所の外にいる人とつながるものづくりに、興味がある。また、「生きること」と直結したものとして「食べること」を捉え、それを言葉で表現している。

 

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