キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.52 柴田晃太郎とシリアスゲーム『菓子折折』について語るの巻 Part2

 

 

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

ゼミ通ヒーローズVol.52 柴田晃太郎とシリアスゲーム「菓子折折」について語るの巻 Part1の続き

 

 

村上

このゲームの中のシリアス要素って何だと思う?

 

柴田

和菓子って、自分も普段からあまり食べる方でもないですし、そもそも同じ世代の人たちが「食べたい」って思う以前に「知らない」っていう部分もあって、そこについてまずは知ってもらうということを一番大切にしながら制作したんですけど、このゲームを実際にプレイしてもらったあとに、和菓子を食べたいとか「買って帰ろう」っていう意見をたくさんいただけたので、ゴールは達成できたのかなって思いますね。

 

村上

通常シリアスゲームっていうと、社会問題をモチーフに取り上げて、その問題解決の工程をゲーム化して仕組みを理解する類のものが一般的だよね。あとは「対象を理解してもらうこと」。それでいうとこのゲームの場合は後者なのかな。

 

柴田

そうなりますね。企画当初は問題解決型のゲームにしようと思ってたんですけど、実際に取材をしたら実は問題はなかったという結果になって、途中で路線を変えました。

ただ実際には、お土産として買ってもらうことが多い一方で、個人的な楽しみとして購入される方が少ないとのことだったので、実際に自分で買って自分で食べて楽しむという面ではシリアスゲームとしての問題提起になったのかなと思います。

 

 

村上

実際にゲームを作っていく上での苦労話とかある?

 

柴田

プレゼンの方法をどうするかで結構悩みましたね。言葉だけで説明するとなると語彙力の高さによって勝敗が決まってしまうので、言葉が苦手な人でも対等に遊べるように、小さなホワイトボードを使って、絵を描いてプレゼンするという形で進めました。

 

村上

プレゼンをうまくするというよりは、下手な人ほど言葉を選ぼうとして必死になって無理やり絞り出すその様子が面白かったりするよね。

話術に長けた人もいれば、発想力で勝負する人、無理やり絞り出す人、理詰めで説明する人、人によって面白みは全然変わってきて、その面白み同士がぶつかり合うことで更に面白くなる。更にそこに大将がどんなジャッジを下すかによって展開も変わる。要するに遊ぶ人によって全く異なる楽しみ方が生まれるってことだね。

 

柴田

そうですね。例えば会社員だったら、どういう家族構成で、どんなときに和菓子を買って帰るのかっていうシチュエーションまで対象が細かく決めて、そこに対して、「こういうときに買って帰るんだよ」ってアプローチしているチームもありました。

他にも、ネーミングに拘る人もいましたね。到底和菓子とは思えないようなカタカナばかり並べてるんですけど、ちゃんとイメージが伝わってきたり、何となくおいしそうに感じたり。

 

村上

シリアスゲームとしての有用性についてはどう考えてる?

 

柴田

ゲーミフィケーションでも同じことが言えるんですけど、ゲームが悪いものだという世間一般のイメージを、ゲームによってポジティブなものに変わる切っ掛けになるんじゃないかと思います。

 

村上

もしこれが和菓子の教科書だったとして、それを「暗記しなさい」って言われるのと、シリアスゲームの形式で覚えるのだったら、何が違うんだと思う?

 

柴田

このゲームとしての目的は対戦相手に勝利することなので、勝つために素材を理解する必要があるんですね。どんな味なんだろう、とか、どんな季節に食べられるんだろう、とか、この名前にどんな由来があるのか、というようなことを、自分から大将役に聞きに行くことでヒントを得て、それを最大限に生かすという工程が必要なので、能動的に知りたいと思えるようになっているのかなと思いますね。

あと、考えるだけじゃなくて、それを言葉にして発することで自分の耳で聞いて腹に落ちるというか、学習効果があるのかなと思います。

 

村上

子供が勉強を嫌うのは、聞くだけとか与えられるだけなのがしんどいっていうのが大きいと思うのね。よく授業のLA(授業アシスタント)で、「後輩に教えることで初めて自分で理解できた」っていう人が多くて。

 

柴田

それめっちゃ分かります。

 

村上

先生から教わってるうちは全然頭に入ってこないけど、うろ覚えの内容でもそれを誰かに話すことで「あ、そういうことだったんだ」って理解できる。自分の声が耳に入って、それで納得できる。歴史の年号とか歴史の人物を暗記しなさいと言っても全然覚えられないのに、子供たちはポケモンの名前や特性は全部覚えるよね。この違いは一体何なのかっていうことがシリアス部分としてのコンセプトを絞り込む上での重要なポイントになるんじゃないかな。

 

柴田

ゲームに勝つとか、別の目的を遂行する上でいつの間にか勉強になってましたね。

 

村上

遊びを通して、それが目くらましじゃないけど、夢中になって遊んでるうちにいつの間にか記憶に刻まれていくっていう。勉強になっていることすら気付かない、それが遊びの本質なんだと思う。

 

柴田

今回実際にゲームを作ってみて、凄くそれを実感することができました。

 

村上

今後は学びと遊びの区別が難しくなるくらい、夢中になって勉強できるような仕組みを生み出せるよう、ぜひ頑張ってください。

 

柴田

はい、ありがとうございました。

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