キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.52 柴田晃太郎とシリアスゲーム『菓子折折』について語るの巻 Part1

 

 

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

村上

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ2年生の柴田晃太郎(以下シバコウ)君です。

現在ホテルアンテルーム京都さんで開催中のアートビット展にて展示中のシリアスゲーム『菓子折折』の内容と、シリアスゲームの社会的有用性について話していこうと思います。

 

柴田

柴田晃太郎です。ゲームについてはそんなに多く触れてくることがなかったんですけど、中学時代に『スマッシュブラザーズ』の広告で、新しく参戦するキャラクターが発表されるたびに喜んでる人の反応を見て、自分でもこんな風に喜んでもらえるようなものを作りたいなって思ったのが切っ掛けで、そこから色んなゲームに興味を持って、ゲームゼミに入らせてもらいました。

 

 

村上

シバコウは一年生の時から、クリエイティブ面でガツンと前に出てくるというか、ゲームを作る環境を整備したり、皆が気持ちよく作れるように気遣いをしてる印象が強かったな。

 

柴田

ありがとうございます。一応クリエイティブ面でも頑張ってはいるんですが(苦笑)、褒めていただいて恐縮です。

 

村上

では実際に作った作品について紹介してくれるかな?

 

柴田

今回私たちが制作した『菓子折折』というシリアスゲームは、近年の和菓子離れをテーマに、京菓子をはじめとした和菓子に興味を持ってもらったり知ってもらうことを目的としたゲームになっています。

簡単に説明すると、限られた素材から自分だけのオリジナルの和菓子を作るというゲームです。そしてそれがいかに美味しいのかを大将役の人にプレゼンすることがこのゲームの軸になります。

 

村上

プレゼンするゲームってたくさん発売されてるよね。あり得ない組み合わせから、新しいものを生み出してそれをプレゼンするような、代表格で言うと『キャット&チョコレート』みたいな。

 

柴田

そうですね、大きくはそんなイメージです。。

 

 

村上

プレゼンすることの何が面白い?

プレゼンを「させられた」感ではなくて、「したくなる」ような場の盛り上げをどうデザインした?

 

柴田

創作したプレイヤーはホワイトボードを使って文字やイラストを使って説明することもできるんですけど、実際に美味しいと感じてもらえる方法とか、こんな組み合わせは誰も思いつかないだろうっていうような、それこそ自分だけのオリジナルを、他人と共有したいっていうような所が楽しんでもらえたポイントかなと思います。

 

村上

そこに「作業」感はないの?

 

柴田

イラストに描き起こすことで、素材を足すだけじゃなくて、どんなふうにトッピング・アレンジをするかが自由に広がっていったので、そこには作業感はなかったですね。

 

村上

そもそもここに着目した理由は?

 

柴田

チームメンバーの中に一人、和菓子とか京都の文化に詳しい人がいて、もっと知ってもらいたいっていう意見を持っていて、そこから話が膨らんでいきました。

インスタ映えする和菓子が増えてきていて、古くからある伝統的な和菓子とインスタ映えするものでテイストが違うので、そこを題材にしようという話も出ましたね。伝統を守ることとインスタ映えを狙うことは相反するものなのではないかという想定で。

 

村上

頑固職人が「今風のインスタ映えなど許さぬ!昔ながらのやり方を守るのじゃー!」っていうイメージがあるからね。で、実際に和菓子職人にインタビューしてみてどうだった?

 

柴田

お店を続けていく上で単純に新しいものを排除するっていうよりは、和菓子を作るうえで自分たちの芯となる部分を残しつつも今の時代に合ったものに変えていくことにそれほど抵抗はない、っていう印象でした。

元々作っていたものが既にその時代にマッチしてて、そんなに変えなくても良いんだと仰った職人さんもいて、時代の流れに逆らってまで昔のスタイルを貫きたいというような頑固さみたいなものは感じられなかったですね。

 

村上

時代も何も、普遍的な美味しさとか喜びが詰まってるから、中身には自信があるし、時代に合わせて変えろと言われたら形なんてナンボでも変えますよと。

 

柴田

昔ながらの和菓子を扱ってるお店は、茶道の先生だったり、和菓子のそのものの形とか、完成されたものを買い求めてくるお客様が多いと仰っていたので、変えて良い所と変えなくても良い所の線引きがしっかりと出来ているという印象でした。

 

村上

最初の企画意図として、「和菓子離れが起こってるんじゃないか」という仮説から話が始まったわけだけど、実際にはどうなのかな。

 

柴田

私たちが想像していたような和菓子離れっていうのは、そもそも一般の人が取り扱うようなものではなかったっていうか。

高級感があって作法がしっかり決められているような和菓子は、茶道のような限定された場所で使われているものであって日常的に食べていただくものとは違っていたので、和菓子離れ自体は特に起きていなくて、むしろより盛り上がっているという形でしたね。

 

村上

取材をしたことによって、我々の思い込みというか誤解も解けたってことだね。廃れるどころか盛り上がっていて、しかも柔軟な対応姿勢もある。

で、この感覚をゲームに落とし込めないかということで今回の企画が生まれたと。

 

柴田

そういうことですね。

 

村上

それが概略となるわけだけど、今度はゲームの面白さのポイントについて触れていこうかな。

 

柴田

まずこのゲームは、プレイヤーを二つの和菓子職人役のチームに分けて、そこにジャッジ用の大将役を一人配置します。

大将がターゲットとなるお客様の設定を決めた後で、ターゲットに合った和菓子をそれぞれのチームが創作して大将にプレゼンをします。

大将はそのプレゼンの内容を聞いて、どっちが目的に近い和菓子なのかを判定して、三回勝負で勝敗を決めます。

大将は、どんなニーズがあるのか、どんな素材の特性があるのかを話して、それをヒントに検討していきます。

 

村上

プレゼンでの評価方法は、話術?

 

柴田

そうなりますね。正攻法でいく人もいれば、発想勝負の人もいたり、無理やりこじつけてゴリ押しでいく人もいます。

大将は「和菓子カタログ」といって、取り扱う和菓子について詳しく情報が記されている冊子を持っているので、季節であったり味や特性などを見ながら、そこにマッチしているかどうかを中心にジャッジしていく形になりますね。

 

村上

正解も不正解もなく、冊子に掲載されている内容を元にぶっ飛んだ発想をしてもOK?

 

柴田

そうです。ワインを皿の上にぶちまけて、その上に金平糖を撒いたら天の川に見えるとか。金平糖を星に見立てるのは安直だったとしても、そんな乱暴な盛り付け方をするのかって盛り上がりました。

 

村上

うーん…それは和菓子の作法的にはどうなの?

 

柴田

間違いなくアウトですね(笑)

 

村上

いずれにしてもコミュニケーションを通して少しでも興味を持ってもらうことが狙いだから、そこはもうふざけた結果であってもどうでも良くて、対話の材料として成立しているならOKということね。

 

柴田

はい、終わった後で「この和菓子美味しそうだから買ってみたい」って思ってもらえれば大成功です。

試遊会では、親子の来場者にも遊んでいただいたんですけど、親と子で和菓子に対するアプローチがちょっと違っていて、何回か遊んでもらううちに、お互いの良さを取り入れながら和菓子の創作を楽しんでもらえたので、そこが意外な遊び方だったっていうか。

相手の和菓子を良くする方法を共に考えるっていうのが、対話中心の仕組みだからこそ生まれた遊び方だなと思いましたね。

 

村上

プレゼン型のゲームを考える人って結構いて、でも実際にやってみると「ただプレゼンさせられた」という印象を受けるものも多い。でもこのゲームはゼミ内で試遊したときに予想以上に白熱してたよね。あれはどういう風にデザインした、というか誘導した?

 

柴田

試遊会の時は、物凄く突拍子もないアイデアを出すメンバーがいたので功を奏して場が盛り上がりましたけど、それを除いたとしても、世代の異なる人同士でプレイしたときでも、それぞれの価値観や観点を活かした自分だけのものができるので、大将役もプレイヤーも、良そうもしてなかったような展開が見えてきて、そこが一番面白いと感じる部分なのかなって思いました。

 

Part2に続く

 

 

 

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