プロダクトデザイン学科

モノの輪郭をやわらかくする研究―
卒業展 受賞者インタビュー
学長賞・西村悠さん

こんにちは、プロダクトデザイン学科です。

 

2023年2月4日から12日まで行われていた卒業展は大盛況。たくさんの方にお越しいただきました!

卒展の期間中には、優秀な研究・作品の表彰も行われました。

受賞者は次のとおりです。

 


 

 学長賞 

西村悠

暮らしの中の道具の輪郭をやわらかくする研究 -花瓶を例にして

 

 優秀賞(学科長賞

藤原 聡

ステムデータを用いた音楽の楽しみ方の幅を広げるプロダクトとそのインターフェース研究

 

 同窓会特別賞 

吉村朋花

固着行動を回避するために振動・ブランコを利用し反復運動を用いた椅子

 

 奨励賞 

宮本睦己

美しい所作においての「間」の研究

喜納 祐日

モノの使用方法の可能性を見出す為のプロダクト研究

路菲菲

中国の漢詩・宋詞と日本の俳句・短歌に描いた二十四節気を表す手漉き和紙の研究

KIM GYEOM

コロナ時代に対応可能なセルフ接種自販機

辻山紬木

一枚革で座れる椅子のデザイン研究

ー先入観に対する意識を促すー

田村優一朗

HEXEL 日常的な災害に備えたフェーズフリーなライフラインハブの在り方

野口弥沙貴

「不安定なものを安定させたい」という心理を利用し、収納雑貨として日々の忘れ物の防止に役立てる研究

 


 

今回は、「学長賞」という栄誉に輝いた西村悠さんにお話を聞きました。

 

西村悠さん。 左が西村さんの作品。

 

西村さんは、モノの輪郭に焦点を当て、モノのたずまいや見え方を掘り下げた研究を行い、モノの輪郭が空間に溶け込んでいくような新たな表現で作品を制作しました。

 

花瓶のまわりを10枚のアクリル板が覆い、輪郭をぼやけさせています。

 

この研究が評価されたのは、出来上がった作品の美しさだけでなく、モノの見え方、在り方を問いただした挑戦的な問題提起が背景にあります。

プロダクトという人工物を、自然や人間が本来持つ曖昧さにどう近づけるか…という曖昧で難解な問いに西村さんは挑戦しました。

 

 


 

 

西村さんがこの研究をしようと思った背景について教えてください。

 

私は暮らしが便利になるものとか役に立つといった実用的なものより、なんのためにあるのかわからないけど、あるとなんかいいというような曖昧なものが好きなんです。ですので、これまでも、照明やインテリアプロダクトなどの感覚に訴えるようなプロダクトに取り組むことが多かったです。

そして、これまでの学びの中でモノに意識を向けていくうちに、だんだんとモノの輪郭がはっきりしすぎているように思うようになりました。

 

例えば、普段の生活の中で、部屋が散らかるとなんとなく圧迫感を感じませんか?

そういう時、一つ一つの物の輪郭を視覚的に強く感じているような気がします。だから、収納ボックスなどに入れて輪郭を少なく見せることで視覚的な刺激を和らげているのではないかなと私は思います。そこで、物の輪郭自体がやわらかく見えたらどう感じるのか、ということに興味を持ちました。

 

空間に花瓶が溶け込んで見えます。

 

あと、私は性格的にはどちらかというとコントラストが強くはっきりしたタイプなので、曖昧でおぼろげなものに惹かれてきたのかもしれません。

それと、4回生になるまでに作ってきた作品もどこか曖昧さを意識したものが多く、これまでの制作も今回の研究テーマにたどり着くベースになっていたと思います。

 

西村さんが3回生前期に制作した「輪郭が曖昧なお皿」

 

  • ―西村さんがいうように、視覚情報が多いと圧迫感やうるささを感じることがありますね。はっきりしたコントラストの強いものにもその良さはありますけど、それがあまりに多かったら、少し疲れる気がしますし、曖昧でおぼろげなものというのは、やさしさや柔らかさを感じさせてくれますよね。
  • 今回は、その研究成果として、「花瓶」という形で作品にされたのですね。

 

そうです。今回の作品は、花瓶の周りに花瓶をかたどったアクリル板を垂直に置き、そこにサンドブラストという砂などの研磨剤を吹き付ける加工を花瓶の輪郭に沿って施し、輪郭をぼやけさせる表現をしました。

 

 

初めからこの表現方法でいこうと決めていたのですか?

 

いえいえ、この表現にたどり着くまでにはかなり苦労しました。研究テーマを決めてからは、モノの見え方の研究やいろんな表現の方法を試しては、袋小路に入って、ぐるぐる彷徨っていた時期もありました。

 

このアイデアにたどり着いたのはいつぐらいのときですか?

 

夏の終わりでしたね。私は夏まで就活もしていて、その中で研究を進めていくのは、結構精神的にもきつかったですね。

これまでの経験の中で、考え続けて、手を動かしていたら、いつか突破口が開けるのはわかってはいるんですけど、アイデアが出てこないときはかなり苦しかったですね。

 

 

今回のアイデアにたどり着いたきっかけはあったんですか?

 

煮詰まっていたとき、リフレッシュを兼ねて東京でやっていた家具やインテリアプロダクトの展示を見にいったんですよ。

それが特にアイデアの源になったというわけではないんですけど、気持ちが晴れやかになって、アクリル板を垂直に置くアイデアが出てきました。

そのときは、「お、キタキタ、これ!」という感じで、そこからはアイデアがドバドバ出てきて、作って試すのが楽しくて、どんどん研究も制作もはかどりました。

 

 

ー卒業展では、作品の最終形態である花瓶だけでなく、この表現方法にたどり着くまでの思考と試作のプロセスも見ることができました。

研究のプロセスを見ながら、西村さんが解説してくれました。

 

西村さんの研究プロセス。「だいたい」「あいまい」をキーワードに平面的なものから始まり、立体の物の輪郭をやわらかく見せる方法を模索し続けました。

 

この辺はアクリル板を横に重ねて、「なんか違うなー」とアイデアに苦しんでいた時期です。

 

そして、こちらが、今の表現形態の初期段階。

まだ、花瓶の輪郭などに粗さが目立ちます。

 

それから、アクリル板の厚さや枚数もどれがいちばんいいのかも検証をしました。

枚数が多すぎると解像度があがりすぎて、曖昧さがなくなりますし、少ないと輪郭が荒くなりすぎるので、10枚に落ち着きました。

 

そして、台座もどのようなものがいいのか検証しました。

この表現方法では花瓶を宙に浮いているように見せることができるので、宙に浮かせ、台座も作品に干渉しないような形にしました。

あと、サンドブラストの吹き付ける角度や位置もかなり調整して、ベストな方法を模索していきました。

最終的にこの4つの形を作成しました。

 

左からSPARKLE、NORMAL、BAMBOO、STRAIGHT サンドブラスト加工の部分が光って見え、神々しい雰囲気。

 

―どんどん形が洗練されていく過程が面白いですね。

美しい作品の裏では、数えきれない試作が繰り返されているんですね。

 

花瓶が空間に溶け込んでいることで、花の動きを繊細に感じ取ることができます。

 

これらのお花も自分で生けたんですよね。

すごく神秘的に見えますね。

 

そうです。花にもかなりこだわって、花瓶と花が引き立て合うようなものを模索しました。

卒業研究の最終審査前は自宅が生花店のようになるくらい花を生けていましたね。

 

生け花の経験はないのですが、ネットの画像などを参考にしながら自分の感性を信じて生けました。

そしたら、担当教員でもあり、なぜか華道の師範の免許も持っている上林先生が花をとても褒めてくれました。

先生は普段あまり褒めてくれないので、ものすごく嬉しかったです。

 

 

4年間振り返ってみてどうですか?

 

あっという間でしたけど、ここまでできるようになったことがちょっとうれしいです。

はじめの1年生の頃とか入学する前にも、先輩方の卒業展を見ましたけど、本当にすごくて、こんなものが作れるのかーって驚いたんですけど、4年間学ぶうちに、自分もできるようになっていて、感慨深いです。

 

今後はどういうことをやっていく予定ですか?

 

私は木工家具をメインで取り扱っている会社へ就職するので、木だからできる表現をもっと学んでいきたいです。あと、もっと形遊びみたいなことをしたり、ジャンル問わず知識を増やしたいです。足りないです(笑)

 

―すごい、あくなき探究心と向上心!

今回の西村さんの研究を見て、「曖昧さ」とか「余白」とか「遊び」というものの良い部分を改めて感じました。これらは、正確性やタイパ(タイムパフォーマンス)が重要視されてきている現代で、私たちが人間らしさを失わないために必要なことだと思います。これからも、人の柔らかな感性に寄り添ったデザインを期待しています。

 

 


 

西村悠(ニシムラハルカ)

2000年生まれ

兵庫県立須磨友が丘高校出身

 

今回の研究で様々なアクリルの加工方法を試して、染織とサンドブラストをうまくできるようになったので、「アクリルの女神」と呼んでください(笑)

最近のブームは季節の和菓子(練り切り)を食べること。

アイデアに煮詰まったら甘いものを吸い、ゴスペルを聴きまくっています。

初任給で買いたいプロダクトはイサム・ノグチのAKARIシリーズと古伊万里のお皿。

 


 

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