プロダクトデザインコース

音楽と向き合い、音楽を楽しむ― 卒業展 受賞者インタビュー | 優秀賞・藤原聡さん

こんにちは、プロダクトデザイン学科です。

 

2023年2月4日から12日まで行われていた卒業展は大盛況。たくさんの方におこしいただきました。

卒展の期間中には、優秀な研究・作品の表彰も行われました。

受賞者は次のとおり。

 


 

 学長賞 

西村悠

暮らしの中の道具の輪郭をやわらかくする研究 -花瓶を例にして

 

 優秀賞(学科長賞

藤原 聡

ステムデータを用いた音楽の楽しみ方の幅を広げるプロダクトとそのインターフェース研究

 

 同窓会特別賞 

吉村朋花

固着行動を回避するために振動・ブランコを利用し反復運動を用いた椅子

 

 奨励賞 

宮本睦己

美しい所作においての「間」の研究

喜納 祐日

モノの使用方法の可能性を見出す為のプロダクト研究

路菲菲

中国の漢詩・宋詞と日本の俳句・短歌に描いた二十四節気を表す手漉き和紙の研究

KIM GYEOM

コロナ時代に対応可能なセルフ接種自販機

辻山紬木

一枚革で座れる椅子のデザイン研究

ー先入観に対する意識を促すー

田村優一朗

HEXEL 日常的な災害に備えたフェーズフリーなライフラインハブの在り方

野口弥沙貴

「不安定なものを安定させたい」という心理を利用し、収納雑貨として日々の忘れ物の防止に役立てる研究

 


 

今回は、優秀賞に輝いた藤原聡さんにお話を伺いました。

藤原さんは、ステムと言われる音楽のデータ形式を使い、新たな音楽の楽しみ方を提案する研究と制作を行いました。

 

ステムデータとは?

ステムデータとは楽曲を構成する音を各パートごとにまとめて書き出すデータのことを指し、近年、ステムデータを配布するアーティストも増えてきています。

例えば、Official髭男dismはステムプレイヤーのサイトを公開しており、そこで自由自在にステムデータで遊ぶことができたりします。

また、ラッパーのカニエ・ウェストは自身のステムデータ専用の再生ガジェットを作っていたりします。

 

今回の藤原さんの作品は、このステムデータを利用して、もっと自由に簡単に音楽と向き合い、触れ合うことができるものになっており、聴き手の立場から創作へ参加するという新しい音楽の楽しみ方を提案するものになっています。

 


 

藤原さん、今回は「優秀賞」受賞おめでとうございます。

まず、今回の研究・制作をしようと思った背景を教えてください。

 

そうですね、一番は自分目線で「こういう製品があったらいいな」というのが動機ですね。

卒業研究って1年以上かけてやるわけですから、やはり自分が好きで興味のある分野でやりたいというのがあって、日ごろから親しんでいる音楽やゲームといったエンターテイメント的な要素があるものがいいなと思ったんです。

それと、自分自身も音楽は好きでよく聴いているんですが、それを使ってもっと遊んでみたい、アレンジを楽しみたいという思いがありました。でも、専用の機材をそろえたり、専門的な知識もなしにアレンジするのって結構ハードルが高いですよね。

そこで、手軽に音楽で遊べるためのプロダクトを作りたいと思いました。

 

こちらが藤原さんの作品。

楽曲の構成要素ごとにブロック状のユニットになっており、それを楽曲にあわせてくっつけたり外したりしながら、ブロックに専用のつまみをはめ込んで操作を行います。

構成パートの一部のボリュームを上げたり、下げたり、速度をゆっくりにしたり…と様々なアレンジを手軽に施すことができます。

 

 

ステムデータを活用するというのは、もともとアイデアとしてあったのですか?

 

いえいえ、はじめはただ漠然と音楽を楽しめるプロダクトというだけしかなかったんですけど、色々調べていたら、今、ステムデータが熱いらしいということを知って、そこからステムデータを使って新たな音楽体験を提供するプロダクトにしようと思ったんです。

 

展示では、このように実際のアレンジを体験することができました。

展示の体験コーナー。体験したお客様からは、「おおー、すごい!」という声がきかれていました。写真は同じ4回生の清本光香さん。

 

実際にステムデータを使ったアレンジを体験させてもらったところ、普通に聴いてたら聴き逃しているような細やかな要素まで聴き取れ、音楽をより高い解像度で楽しむことができました。

 

-すごく細かい音までしっかり聴けますね。今は昔と違って、サブスクで音楽を聴くためか、なんとなく音楽をかけているということが多かったので、こんなにじっくり音楽を聴いたのは久しぶりかもしれません。

 

それも狙いとしてはありました。音楽とじっくり向き合って聴く、そして、それで遊ぶという体験を提供できるようなプロダクトを目指しました。

実際、アーティスト側の思いは様々あると思います。ステムデータを公開したくないという方もいるでしょうし、ステムデータを実際公開しているOfficial髭男dismのように、そこから自由な解釈で楽曲を楽しんだり、聴き手のクリエイティビティを刺激したいという方もいると思います。

今後、ステムデータの配布が盛んになり、アーティストとリスナーが楽曲を共創していくような音楽の楽しみ方ができるようになったらいいなと思っています。

 

作品の使用イメージ。ツマミを各パートのブロックに差し込んで操作します。

 

 

今回は使用感やUI(ユーザーインターフェース)*の部分にかなり時間を費やして研究したようですが、どの辺にこだわりましたか?

※UI(ユーザーインターフェース)

ユーザー(利用者)と製品やサービスとの接点のことを意味し、ユーザーが製品やサービスをスムーズに使えるように設計することをUIデザインと言います。用途がわかりやすい見た目や操作性など洗練されたUIにより快適な操作が可能となります。

 

ステムデータを使ったアレンジなどはPCの画面上でもできることなのですが、やはり、自分の手を使って曲を作っているという感覚を大事にしたくて、どのようなものがいいのか、かなり検討を重ねました。

試作の数々。筒状のものや、アレンジする行為を料理に見立て、調理用のミルの形状にしたものなど、たくさんのアイデアを出して検討していきました。

 

そして、最終的にブロック玩具をモチーフとしたデザインにし、楽曲の要素に視覚的に触れて組み合わせられるようなわかりやすいデザインにしました。

何度もプロトタイピング(試作)を作っては、ゼミに持っていって、みんなから意見をもらって、ブラッシュアップして…というのを繰り返してきました。ゼミの担当の時岡先生や同じ時岡ゼミのみんながいなかったら、ここまでできてなかったかもしれません。本当、みんなには感謝しています。

 

 

藤原さんは、これからどんなものをデザインしていきたいと思っていますか?

 

僕は、元々、工学系でエンジニア志望だったということもあって、機械とか家電のデザインが好きなんです。家電やデジタル領域のデザインはこれからもテクノロジーの発展に伴い、どんどん進化していくと思うので、見たこともない新しいデザインが生まれる分野だと思っていて、そこに魅力を感じています。

テクノロジーの潮流を見極めながら、新しいデザインを作り出していきたいですね。

 

元々、工学系なんですね。確かに藤原さん、どことなく工学部の大学生っぽい雰囲気ありますもんね。

 

そうなんです。高校までは理系で、昔から工作とか機構を考えることとかが好きだったので、大学は工学部にいくものだと自分でも思ってたんですけど、高校3年生頃になって、機械の中身より人の手が触れる外側のデザインに興味を持つようになったんです。

それで、プロダクトデザインという分野もいいなぁと思って、この大学に進学したんです。

 

 

 

4年間どうでしたか?

 

僕の場合、高校3年の途中から急にデザインに興味を持って、入学したということもあり、スケッチとかもしたことがなかったのですが、気が付いたらいろんなことができるようになっていましたね。

毎回課題は大変でしたけど、考えたアイデアを形にする技術がついて、感慨深いです。

あと、今回の卒業研究もですけど、同級生の存在は大きかったですね。アイデアを出し合ったり、それに意見もらったりすることで、いい作品にすることができたし、勉強になりました。

 

 

藤原さんの言うように、テクノロジーの進化でどんどん新しいものが生まれていくのが、家電やデジタルプロダクトの魅力ですね。今回の卒業研究のように、私たちをあっと驚かせ、そして楽しませてくれる新しいプロダクトを世に送り出してくださいね。

 

 


 

藤原聡(フジワラサトル)

2000年生まれ

岡山県立高梁高校出身

 

実は身長179cmしかないのに見栄張って身長180cmでこの4年間、過ごしてきたのはここだけの秘密です。
最近のマイブームは、毎日韓国語を一つ覚えて、韓国人留学生の友達を驚かせることです。
初任給出たら、BoseのSoundLink Revolve IIと深澤直人のHIRISHIMA armchairを買いたいですね。特にHIROSHIMA armchairは友人宅で座らせてもらう機会があったんですけど、あの時の座り心地の良さは今でも忘れません。

 


 

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