クロステックデザインコース

【クロステック】「違う」を持ち寄ることで見えてきた景色──橋本真緒 × 松波泉子 展覧会を終えて

こんにちは、クロステックデザインコースです!🌱✨

今回は、5月21日(木)〜6月3日(水)に開催された在学生公募展に出展した松波 泉子さん、橋本 真緒さんへのインタビューをお届けします。

 

松波さんと橋本さんが普段使っているAIをインタビュアーにして、作品のきっかけや制作の背景について振り返ってみました!

 

✨ ちょこっと裏話

クロステックデザインコースでは2024年度から授業にAIが導入されています。

なんと、学生ひとりひとりに専用のAIが配布され、相棒(通称:Neighbuddy)として学習のサポートを行います!

学生にAIバディを配布することは、学内でもクロステックデザインコースが初の取り組み。

 

これからの社会で必須のAIの特性を理解することで、自身の苦手な分野をAIに補ってもらったり、学習効果を最大化することを目指しています。

過去のブログで取り上げているので、ぜひご覧ください😊👇
https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=187781

 

『お昼はいつもメイメイでいいよ。』

「違う」を持ち寄ることで見えてきた景色──橋本真緒 × 松波泉子 展覧会を終えて

 

【在学生公募展について】

京都芸術大学の在学生公募展は、学生自身が企画から制作、展示までを主体となって行う展覧会です。

『お昼はいつもメイメイでいいよ。』は、その公募展の一つとして開催しました。

 

展示を通して私たちが考えたかったのは、「みんな同じ」であることではなく、それぞれが違う考えや価値観を持ちながらも、一緒にいることができるということ。

 

作品を見るだけで終わるのではなく、来場者一人ひとりが自分自身の経験や記憶と重ねながら過ごせるような、そんな“原っぱ“のような展示を目指しました。

 

展示を終えた今、改めて振り返ると、作品をつくる時間と同じくらい、「言葉を探す時間」があったように思います。今回は、その時間を二人で振り返ってみました。

 

 

インタビュアー
──まず、この展覧会はどのように実現したのでしょうか。

橋本さん
この展示は、京都芸術大学の在学生公募展に選考を経て採択されて実現しました。
もともと一年生の頃から、「泉子の作品を私がキュレーションして展覧会を開きたい」と話していたんです。
公募の募集が始まったとき、「これだ」と思って応募しました。

松波さん
採択が決まったときは、本当にうれしかったです。
でも同時に、「これから忙しくなるんだろうな」という気持ちもありました(笑)。

橋本さん
企画書も展覧会の経験もない状態からのスタートだったので、不安は大きかったですね。
面接では、私たちが希望していた展示空間が広すぎるのではないか、という話もありました。

松波さん
でも私たちは、「原っぱ」という考え方は広さではなく、そこで生まれる関係性が大切なんだ、と伝えました。
空間が小さくなっても、この展示は成立すると思っていたんです。

橋本さん
結果的に採択していただいて、本当に感謝しています。
振り返ると、企画書づくりから展示までのすべてが、私たちにとって大きな学びになりました。

タイトルが教えてくれたこと

 

インタビュアー
──このタイトルが気になって仕方ありません。
『お昼はいつもメイメイでいいよ。』という言葉はどこから生まれたのでしょうか。

松波さん

実は、この言葉は母が家族のLINEで送ってきた一言なんです。
私の家では、お昼になると食べたいものがみんな違うことがよくあって、「今日はメイメイにしよう」と言って、それぞれ好きなものを選んでいました。

タイトルを考えていた頃、何気なくLINEを見返していたら、「お昼はいつもメイメイでいいよ。」という言葉が目に留まって。

その瞬間、「これだ」と思いました。

橋本さん

タイトルって、本当に最後まで決まらなかったよね。企画書を見返したり、Miroを開いたり、先生にも相談したり。

展示を説明するタイトルじゃなくて、「私たちらしい言葉」を探していました。
だから、この言葉に出会ったときは、思いついたというより、「ようやく見つかった」という感覚でした。

「違う」からこそ、一緒につくれた

 

インタビュアー
──お二人は、普段から似ているタイプなのでしょうか。

橋本さん
全然違います(笑)。考え方も、制作の進め方も違う。
でも、その違いがあるからこそ、一緒につくる意味があると思っています。

松波さん

展示をつくる間も、ずっと一緒に作業していたわけではありません。
それぞれが一度持ち帰って考えて、また集まって話す。その繰り返しでした。

対談をしていて思いついたんですけど、それって三つ編みに似ているなって。
一本一本は違う方向を向いているけれど、少しずつ編み込んでいくと、一つの形になる。今回の展示も、そうやってできていった気がします。

「原っぱ」というコンセプト

 

インタビュアー
──なぜ「余白」ではなく、「原っぱ」だったのでしょうか。

橋本さん
先生から紹介していただいた本がきっかけでした。
読んでいくうちに、「これって私たちが考えていたことに近いね」と話すようになりました。

松波さん
余白という言葉も好きなんですけど、原っぱにはもっと生活がある気がしたんです。
草があって、虫がいて、風が吹いていて。同じ場所でも、走る人もいれば、寝転ぶ人もいる。
ぼーっとする人もいれば、遊ぶ人もいる。それぞれ違う時間を過ごせる場所。私たちも、そんな展示をつくりたいと思っていました。

インタビュアー
──会場を歩いていくと、それぞれの作品がつながっているように感じました。
展示構成にはどのような意図があったのでしょうか。

橋本さん
会場で最初に目に入るのは、小さな入口と、その先にあるテントです。
あえて入口を狭くして、「この先には何があるんだろう」という感覚をつくりたかったんです。

松波さん
テントそのものよりも、テントがあることで生まれる周囲の空間を大切にしていました。
私にとっては、その余白こそが「原っぱ」なんです。

橋本さん
展示物は、泉子の「クリエイティブの泉」というコンセプトを軸に構成しています。
それぞれの作品は独立しているように見えますが、作品があることで周囲に新しい風景や関係性が立ち上がるようにキュレーションしました。

松波さん
テントを抜けると「モトコネへの道」があって、その先に『モトコネ』があります。
「モトコネへの道」は窓枠風の枠に入れられて並べられた3枚のイラストで、それぞれ異なる場所、時期に描いて、過去と現在を行き来するような感覚を表現しています。

橋本さん
次は『上を向いて歩こう』ですね。この作品は、もともと一年生の課題で制作した作品でした。
工事現場を囲う養生シートに着目して、「工事中だからこそ、人が上を向いて歩きたくなる風景をつくれないか」という発想から生まれた作品です。今回の展覧会では、その考え方を展示にも取り入れました。
搬入期間中は作品を会場入口に設置し、作中に書かれた「新しい風景、準備中」という状態そのものを、一つの展示として見せていたんです。

松波さん
入口を少し狭く設計していたのも、その作品に合わせるためでした。
会期が始まると『上を向いて歩こう』は展示室の奥へ移動します。
もともと「工事現場で使われたものを、その後どう生かせるか」を考えた作品だったので、展示の中で役割を変えながら存在することができました。

インタビュアー
──会場の中央には、松波泉子さんのお母さまが制作されたキルトが展示されていましたね。

松波さん
あのキルトは、母が私を妊娠しているときに縫い始め、生まれた後に完成した作品です。その存在を知ったのは、今回の展覧会の準備中だったんです。母のポートフォリオを一緒に調べていたときに、「キルトの中には手紙が入っています」という一文を見つけて、「そんな話、聞いたことがない!」と驚きました(笑)。

橋本さん
そこで、展覧会最終日のクロージングイベントで、実際にキルトを開き、手紙を読む時間を設けました。作品の背景にあった家族の物語が、その瞬間に初めて来場者と共有されたんです。

インタビュアー
──松波さんの部屋を再現した空間がありました。

橋本さん
緑色のカーペットが敷かれた「原っぱ」を進んでいくと、小さな部屋にたどり着きます。そこが、泉子の実家の部屋を再現した空間です。

松波さん
もともと、自分の机を描いた作品があったんです。その絵の前に、本物の机や椅子、ランプ、ギターなどを配置して、絵の中の景色を現実の空間として立ち上げました。展覧会のために実家から送ってもらった家具もあり、当時のレイアウトをできる限り忠実に再現しています。

橋本さん
この部屋は、泉子がこれまでアイデアを生み出してきた「拠点」です。そして、その周囲に広がる展示全体が「原っぱ」になっています。来場者には作品を順番に鑑賞するというより、それぞれが自由に歩き、自分なりの過ごし方を見つけてもらいたいと考えていました。

松波さん
「原っぱ」は、作品を鑑賞するためだけの場所ではありません。人それぞれが思い思いに過ごせる場所です。この展示でも、それぞれが自由に想像を巡らせたり、自分の記憶と重ね合わせたりしながら過ごしてもらえたらうれしいと思っていました。

インタビュアー
──会期中には、二つの印象的なイベントが開催され、幼い頃の記憶が形になったそうですね。

松波さん
一つ目は、『「未来の私へ」──19年越しに開いた手紙』というイベントです。母が私のお腹の中にいた頃に作ってくれたキルトの中に、「大きくなったあなたへ。」という手紙が約20年間眠り続けていました。展示をつくり始めた頃から「最後の日にはこの手紙を読もう」と決めていて。とても緊張しましたが、自分の記憶を誰かと分け合うこの展示の一部として、最終日に多くの来場者の方に見守られながら初めて開封しました。手紙を読み終えたあと、会場がとてもあたたかい空気に包まれていたのを今でも覚えています。

橋本さん
そしてもう一つが、幼い頃の「パン屋さんごっこ」が本当のパン屋さんになった日です。『モトコネ』は泉子が幼い頃、「パン屋さんになりたい」と言ったことからご両親が建てた小屋でした。当時は、実際のパン屋さんを営む幼馴染のご家族からパンを取り寄せて遊んでいたそうです。その話を聞いて「成長した泉子がもう一度やるなら、本当に販売しよう」と提案し、営業許可や食品表示も準備して、2日間限定で本当のパン屋さんとして営業しました。

松波さん
提案を聞いたときは「本物のお金を使うし、そんなことが実現できるのか」と不安でした。でも、実際にパンが並んだ瞬間、展示の中に自分の記憶がそのまま現れた感覚がありました。子どもの頃の世界と今の自分がつながり、思い出が現実としてもう一度動き出したんです。来場者の方がパンを選び、食べ、会話が生まれる様子を見て、この展示は作品だけでできているわけではないんだと改めて感じました。この感情も、真緒ちゃんがいなければ感じられなかったことだと思います。

インタビュアー
──作品だけでなくイベントを通して、会期中に展示そのものが「育っていく物語」になっていったのですね。

橋本さん
私たちは、この展示を「完成した作品を見てもらう場」ではなく、人との関わりの中で少しずつ育っていく場にしたいと考えていました。展示が始まると、作品の前で足を止め思い出を話してくれる方、「私はこれが好き」と家族で話し合う姿、友人同士で語り合う様子など、想像していなかった景色がたくさん生まれました。

松波さん
振り返ると、会期中の出来事は私たちであらかじめ用意していた「演出」ではありませんでした。誰かが集まり、話し、笑い、記憶を持ち寄ることで、展示そのものが少しずつ育っていった。展示室は作品を並べる場所ではなく、人と人との物語が重なっていく「原っぱ」のような場所になっていたのだと感じます。

 

展示を終えて見えてきたこと

 

インタビュアー
──こうしてすべての展示を終えて、改めて二人で言葉にしてみたことで気づいたものはありますか。

橋本さん
制作中は同じ展示空間を目指して必死に走っていたけれど、今日こうして言葉にしてみると、キュレーターである私の見方と、作家である泉子の感覚では、作品やエピソードに対する焦点の合わせ方が違っていたんだなと気づきました。お互いに違う視点を持っていたからこそ、結果的に『原っぱ』という一つの空間に深みが生まれたんだと実感できて面白かったです。

松波さん
私も、二人で対談しながら言葉にしていく中で、自分一人では整理しきれていなかった思いがたくさん整理されました。作品を作るのと同じくらい、二人で話すことでも考えが深まるんだなと。展示は終わったけれど、この対談を通してようやく展示が本当の完成を迎えたような感覚です。

 

あとがき

 

インタビュアー
──最後に、この展覧会での経験を経て、お二人から伝えたい思いやメッセージはありますか。

松波さん

「メイメイ」はもともと、「家族それぞれが違うお昼ごはんを買ってきて、それを一緒に食べる」という意味で使われていた言葉です。家族の中で交わされた何気ない一言でしたが、今振り返ると、現在の私たち家族の姿をそのまま表しているように感じます。

母と弟はニュージーランドへ、私は8月からフィンランドへ留学し、父は岐阜の実家をAirbnbとして活用するため、近くのアパートへ引っ越すことになりました。これまで家族みんなで食卓を囲んできた、愛着のある家は空っぽになります。でもそれは、誰もいなくなるということではなく、それぞれが自分の人生へ向かって、新しい場所へ歩き出していくということなのだと思います。

「お昼はいつもメイメイでいいよ。」という言葉は、もともとは「お昼ごはんは、それぞれ好きなものを食べよう」という意味でした。でも今では、「夢も、その夢に向かって挑戦する場所も、それぞれ違っていい」。そんな家族からのメッセージだったのかもしれないと感じています。

橋本さん

この展示は、泉子自身の人生から始まった物語です。でも私たちは、それを一人の人生の記録として終わらせるのではなく、訪れた方それぞれが、自分自身の記憶や未来と重ね合わせられる展示にしたいと考えていました。

展示期間中には、「家族を思い出しました」「自分も未来の子どもに手紙を書きたくなりました」といった声をたくさんいただきました。そして最終日に開いた一通の手紙も、その時間を会場全体で分かち合う出来事になりました。誰か一人の記憶から始まった物語が、人との出会いを通して少しずつ広がり、それぞれの人生へとつながっていく。その瞬間に立ち会えたことが、この展示で何より大切な時間だったように思います。

松波さん

母が20年前に未来の私へ向けて書いてくれた手紙は、展示を通して、多くの方と分かち合う記憶になりました。その出来事を通して改めて感じたのは、記憶は一人で抱えているものではなく、誰かと分け合うことで、新しい意味を持ち始めるということです。

朝や夜は、誰かと一緒に過ごす時間かもしれません。でも、お昼だけは、自分の好きなことや夢に向かって、思い切り挑戦してみてもいい。その姿を見てくれている人は、過去にも、今にも、そして未来にも、きっとどこかにいると思います。それぞれが違う場所で、それぞれの人生を歩んでいく。その違いを認め合い、お互いの未来を楽しみにできる。『お昼はいつもメイメイでいいよ。』という言葉が、そんなふうに誰かの背中をそっと押す言葉になってくれたら、とてもうれしく思います。

 

 

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