アートプロデュースコース

【特別講義レポート】5/21開催 ゲスト:藤本由紀夫氏

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21日の特別講義は、本学教授の藤本由紀夫先生にお越しいただき、ASP学科の山下里加先生との対談形式で行われました。山下先生はライターを始められたころからの藤本先生との長い親交があり、トークも終始和やかな良い雰囲気の中で進んでいきました。

 

自己紹介がてら藤本先生の作品の映像をいくつか見たのちに、藤本先生が手がけられたユニークな展覧会カタログの話題に入っていきました。

 

山下先生がご自宅から持ってこられたものを見せながら、中には実際にトランプとしても使えるカード型のものや、手のひらサイズのもの、こすると音がするものなど、一般的にはあまり見ないけれども、貰うとうれしい藤本先生独特の「遊び心」が詰まったデザインのものが紹介されていました。

 

 

テーマは次に「美術館の遠足」展の話に移ります。

「美術館の遠足」展とは、兵庫県の西宮市大谷記念美術館で1997年より10年間行われた、会期は一日だけという藤本先生の展覧会です。

 

この展覧会では会場に監視員のスタッフ、キャプション、場内誘導のサインなど作品の場所を示すものを一切置かれませんでした。しかも藤本先生の作品は曰く『おもちゃ』なので、みるだけでなく観客が積極的にアクションを起こさなければ体験することができません。観客は作品(おもちゃ)を自ら探し出して、鑑賞方法(遊び方)を自ら考えることを求められるのです。でも、この展覧会がすごかったところは、回を重ねるごとに観客が確実に育っていったこと。そうすると仕掛ける側も、あの手この手を使った策を練っていきます。

 

藤本先生がおっしゃるには、作品とは「作家」と「観客」と「美術館」がともに作っていくものであるということ。場所が変われば作品も変わるし、見る人がどのように体験するかによって、そうでなかったものが作品になるということを発見した展覧会だったとおっしゃっていました。

 

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「美術館の遠足」が開かれた西宮市大谷記念美術館は、1995年に関西地方を襲った阪神淡路大震災で大きな被害を負った地域でもあります。藤本先生自身も関西で長年活動されてきたアーティストであるということから、最後に「アートと災害」の話題も少し話されました。

 

先の大震災の時もそうでしたが、そういうとき「アートで何ができるか」という問題がしばしばテーマとして挙がり、アートの存在意義が問われたりします。しかし、震災が起こるのは人間にはどうしようもないことで、それが起こったことでアートのあり方を変えようとする考え方には藤本先生は疑問を投げかけられていました。一方で、アートが向かうべき問題は天がもたらす「天災」ではなく、人間が引き起こす「人災」の方だということを強調されていて、これに関してはアーティストに限らず、我々一人一人がちゃんと向き合って考えなければいけないと述べられました。

 

 

 

●以下学生レポートからの抜粋●

 

■ますます作品とは何なのかわからなくなった。作者が作品だと思っていなくても見ている人にすればそれはもう作品になってしまう。もうますますわからない。でも藤本さんは「お客さん」と呼ばない、見に来る人も一緒に作品を作る人だと言っていた。そこにもまた、私の美術館への固定概念があったのかなと気づかされた。

 

 

■鑑賞者が一方的に受け取るのではなく、作品に関わることで双方的なコミュニケーションが起こっているのではないかと思った。鑑賞者によって作品が違ったものになる、作品は変化し続けるところは面白いと感じる。アート作品において変化し続けることは大事な要素で、時代の変化に対応することができる方法なのではないかと思った。

 

 

■「美術館の遠足」の話を聞いていて、監視員ゼロや、一切のガイドなしでどこにどの作品があるのか、そこまでが展示室でどこまで入って良いのか来場者には分からないということで、言ってみれば、探索しているような気分になれるのかなとも思った。座って体験するイスの作品のフロアには水をはってみたら、来場者は裸足になって楽しんでいたというのはすごい驚きであるし、おもしろい話だなって思った。こういう話を聞いていて、山下先生の言葉にもあった「親切なのか、不親切なのかわからない」ということに確かにとも思ったけれど、本当の美術館の在り方というのは何なのだろうかとも思った。

 

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