アートプロデュースコース

【特別講義レポート】12/10開催 ゲスト:濱口竜介氏

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12月10日の特別講義は、映画監督の濱口竜介さんをお招きし、『聞くこと、撮ること、演じること』と題してご講義いただきました。

 

今回のゲストは学生の推薦によって決まりました。

 

 

 

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こちら、選者の花見堂直恵さん(4回生)です。

彼女は昨年行った編集事務所でのインターンをとおして濱口さんと出会いました。かねてから「特別講義のゲストにぜひ呼びたい!」と感じていたそうで、まさに撮影の真っ最中のお忙しい時期でしたが、念願叶ってお越しいただくことができました。

 

 

■花見堂さんによる講義のレポートをお届けします■

 

講義中に触れられていた、「人が良い声を発するのは“聞かれている”という実感のなかで起こる」という内容について、いろいろと想いを巡らせてみました。

私自身も普段、人と会話しているなかで極稀に「良い声」に出逢うことがあります。「聞かれている」「話しても良いんだ」という確かな感触を受けることで、口を衝いて即興的にことばが繰り広げられ、話すつもりのなかったことを話したり、思いもよらない思考に辿り着いたりする。その瞬間がとても好きで、どうしたらそういう状況を日常的につくることができるんだろう、とよく感じていました。

今回濱口さんを講義にお呼びしたのは、まさに濱口さん自身がそういった瞬間を一年前、初めてお話したときに与えてくださったからでした。また映画監督という立場で「聴く」と「演じる」という行為の接点を探られる独特な視点に惹かれたからでもあります。

講義の中で語られていた内容は決して映画の世界の話だけではなく、私たちの生活、もっと言えば人が人としてより良く生きること、他者との関係の中で生きることに地続きのことばかりでした。「聴く」ことや「見る」ことという、今、自分の目の前にいる相手や物への態度を通じて、その人・物との関係性はつくられていくものなのだと感じられました。たくさんの大切な視点に気付かされ、企画できたことを嬉しく思っています。濱口さん、ありがとうございました。

 

 

 

「きく」「声を届ける」そして「みる」の話が、驚くほどACOP(※)の話とリンクしていて、それらがなぜ私たちの日常生活の中で重要なのか、今回の講義を通して学生たちも再認識できたのではないでしょうか。

また、『奇跡というものは存在しないし、期待をしてはいけない。人は準備してきた内容にふさわしい結果を得る』という言葉も印象的でした。“奇跡”とは、自身を取り巻く関係の外側からやってくるものです。もし“奇跡”のようなことが起こったとするならば、それはその人自身が気がつかなかっただけで、確実に培ってきた成果があり、それに伴ったものだということでしょう。何かとの関係なくしては人は生きていけません。ならばよりよく関係するにはどうすればいいか。『準備には終わりがない』のと同じで、そのことを考え続けることが重要なのだと感じました。

 

(※)ACOPでは「みる」「きく」「考える」「話す」の4つを基礎として作品鑑賞をすすめていきます。

 

 

 

■以下、学生レポートからの抜粋■

 

東日本大震災のことをインタビューするワークショップの映像をみて、テレビのニュースなどで見るよりも、被災者の方の生の声がより鮮明に響いてくるように感じました。被災した者同士でインタビューをするとき、互いの被災の度合いの差から相手を気遣って、自身の体験を表現することが出来なくなるということもあり、本音が出やすい親しい者同士でインタビューをさせている点が印象的でした。(ASP学科3回生)

 

「人が“いい声”で話すときは、聞いてもらえているという実感があるとき、話していいんだと思えたとき」とあったが、まさにその通りだと思った。人は聞いてくれる人がいるから話すのだと思う。聞くことは信頼を生むと思う。聞かれている、聞いてくれていると実感したとき、いい声が自然に出てくるのだと思う。(ASP1回生学科)

 

姉妹の向かい合ったインタビューの内容は二人の間でしか理解できない犬の名前などの固有名詞を使いながら喋っていたので“映画を観る”者にとっては理解できぬ内容のように感じられた。しかし、「誰にでも理解できる内容」というものは、誰にでも理解できる“一般的”な言葉の連続であり、他者に聞いた言葉なのではないかと思う。姉妹のインタビューは「誰にでもわかる」ではなく「この人との関係なら理解できる」言葉を積極的に使っている。それがある意味で実感として残す、リアリティのある映像なのだろうと思った。(ASP学科4回生)

 

 

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