写真・映像コース

【現代美術・写真】ワークショップ・レポート:台湾・国立高雄大学にて(その2)

11月下旬、現代美術・写真コース4回生の有志4名が、小野規先生の開催する特別講義とワークショップに参加してきました。

場所は、台湾の南の大都市、高雄(カオシュン)にある国立高雄大学です。

熱帯にある高雄は、11月下旬といっても真夏のような日々。

現地のデザイン・写真系の学生と文字通り寝食をともにしながら、濃密な10日間となりました。

今回は台湾報告その2、畠山元成くんのレポートを紹介します!

 

 

★美術工芸学科の現代美術・写真コース4年の畠山元成です。

 

台湾の高雄市にある国立高雄大学で行われたワークショップについて報告をします。

このワークショップは、日本がかつて植民地として統治していた台湾という国において、現地の学生と写真を通じて交流し、歴史に対する理解を深めることを目的として行われました。僕のコースの教授である小野先生と、国立高雄大学のルル・ホウ先生のお二人が共同で企画されたものです。

 

ワークショップの内容は、大判カメラを用いて、日本政府がかつて高雄市に建設した日本軍のための住宅街を撮影し、記録しようというものです。

その住宅街はミリタリー・ヴィレッジと呼ばれ、今も台湾に複数残っています。

しかし、台湾政府はそれらミリタリー・ヴィレッジを正式な史跡として認めているわけではなく、マンションの建設など再開発を望んでいるようです。

ホウ先生はそうした政府の計画に疑問を持ち、クリエイティブな方向でミリタリー・ヴィレッジを活用しようと考えておられます。

そして、それが今回のワークショップを行う発端となりました。

 

僕らは高雄市内にある二つのミリタリー・ヴィレッジを訪れました。

一つ目に訪れたミリタリー・ヴィレッジは下町感の漂う地域にあり、南国の植物が生い茂る中にそれら日本軍の住宅街(木造家屋)がありました。

殆ど風化し今にも崩れ落ちそうな木造の家々が通りに沿って建ち並び、その周辺を野良犬が徘徊しているといった様子です。

その居住区は碁盤の目に区画されており、都市計画にもとづいて建設されたものなのですが、風景を軽く一望しただけでは、他国によってつくられた史跡だとは思えません。

もし、史跡であることを堂々と示す看板や、しっかりと保存がされた家々がその場所にあるならば、誰もがそこを史跡として感じ、過去に対してアクセスするための道具となり得ます。だけど、それらの要素がその史跡には殆どなかったので、歴史を想像することの困難さや、過去の記憶を忘れまいと抗する意味や必要性など、色々と考えさせられる結果となりました。   そのミリタリー・ヴィレッジでは、まずホウ先生によるレクチャーが行われました。

その後、小野先生を中心に、大判カメラの使い方の説明を京都造形の皆で行い、撮影をスタートしました。

 

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ワークショップで使用した大判カメラについて、少し説明をします。

そのカメラは一眼レフと比較して、形状や撮影スタイルが大きく異なります。

三脚を必要とするし、イメージを見るために黒布を被らなければいけません。

しかも、完全にアナログのカメラなので、作業の一つ一つを手作業で行います。

だから、1枚の写真を撮影するのに10分以上の時間を必要とします。

昨今の手軽なスマホカメラに比べれば、それはマイナスポイントに思えるかも知れませんが、対象をよく観察し、フレーミングを入念に考える場合においては、優れたカメラだと思います。

そして、1コマのサイズ(10x12cm)が大きいので、とても解像度の高いイメージを得ることが出来ます。

また、カメラの背面にはフィルムと同じ大きさのすりガラスがセットされており、そこに、レンズを通した光が上下左右に反転された形で投影されます。

その画面を見る感覚は静止画像を見るそれとは違い、映像を見ている感覚に近いので、木々の微かな揺れや光の移ろいなどを感じることが出来ます。

初めてビューカメラを経験した国立高雄大学の学生は、すりガラスに投影されるイメージの美しさに驚いていました。

ワークショップを手伝っていた僕としては、とても嬉しい反応でした。 (ここにアップしている写真は大判カメラで撮影した写真ではありません)

 

二つ目に訪れたミリタリー・ヴィレッジは軍の施設のすぐそばにあり、一つ目に訪れた場所と比較すると、清潔で静かでした。

隣には広い運動公園があり、お年寄りたちがそこで太極拳や世間話に興じ、平和な雰囲気が漂っていました。

しかし、ミリタリー・ヴィレッジの路地を歩くのには少し緊張感を必要としました。

歩行者や車の通行がほとんどないので、私有地っぽい印象を無意識のうちに受け取っていたのだと思います。

 

そのミリタリー・ヴィレッジでの撮影は、街の中心のロータリーで行いました。

円状の道路に囲まれた小さな緑地に、見事な榕樹(ガジュマル)が生えていて、その巨木の撮影や、真っ直ぐに延びる通りや、その通り沿いに点在する家々を撮影したりしました。

その撮影の後は皆で弁当を食べ、大学に戻り、午後からは小野先生による講義が行われました(講義は滞在中に2回ありました。” Reflection on Cultural Landscape“という題の、文化や歴史的背景を孕んだ風景写真についての講義、それから、現代美術・写真コースの紹介を中心とした講義です)。

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僕は高雄市に滞在中、高雄大学で教員をされている方が住む部屋に相部屋をさせて頂きました。

ただ、その方は英語がかなり不得意だったので、コミュニケーションは漢字による筆談が中心でした。

紙に日本語を書いて、ひらがなを消し、残った漢字を相手に見せ、意思疎通を図ってみる。

すると、結構通じるのです。これは驚きでした。

 

他の僕の同期の三人は、高雄大学の学生らがシェアしているアパートで寝泊まりをしていました。

なので、学生同士の交流は起床してから寝るまで続くという、とても濃いものでした。

もちろんお互いに使う言葉は違いますが、他国に住む親しい友人を作れたことは大きな喜びでした。

 

高雄大学でのワークショップが終わった後は、各自が高雄市内を観光して過ごしました。

11月21日には高雄市を離れ、京都造形の皆で台湾の首都である台北に向かいました。

翌日には台北ビエンナーレ2014に行き、その後に解散となりました。

帰国日は各自バラバラです。

同じ飛行機に全員揃わないあたりが、現代美術・写真コース生らしいなと笑ってしまいます。

僕は台北からそのまま香港へ移動し、自身のプロジェクトを進めました。

卒業制作を平行しながらの旅行でしたが、複数の東アジアの国に滞在ができ、かなり刺激的な毎日でした。

 

畠山元成

 

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