こども芸術学科

親子のための卒展鑑賞ツアー

 27日から卒業制作展がはじまっています。寒の戻りで少し寒い日が続いていますが瓜生山キャンパスは学生たちのキラキラした作品と大勢の来場者で熱気に溢れています。こども芸術学科の卒業展の会場には28日(日)と29日(月)には小さなお客さんで賑わいました。ここではコロコロクラブキッズアートスクールの親子のためのこども芸術学科卒業展鑑賞ツアーの様子をお伝えしますね。

 

風は冷たいですが春の日差しを感じる28日の日曜日には、枚方にあるコロコロクラブキッズアートスクールの親子13名が朝早くから展覧会に来てくれました。コロコロクラブキッズアートスクール主宰の緒方希さんは京都造形芸術大学通信教育部空間演出デザインコースの卒業生で、昨年こども芸術学科の卒業展を子どもさんと一緒に見にきてくださいました。来年はご自分が主宰されるアートスクールの子どもたちを連れてきたいと思ってくださいました。そして、年明けにお会いする機会があり、その時に卒展鑑賞ツアーの相談を受けました。私も常々、こども芸術学科の学生の作品はつくって,展示して終わるだけでは勿体ないと考えていたので、即答でお受けしました。学生たちと相談して、ただ会場を巡回すだけのツアーではなく、作者である学生と子どもたちが対話ができる鑑賞ツアーをしようということになりました。会場全体を巡回しながら、大きな立体作品の中村萌さんのちょっと怖くて不思議な世界を表現した「実に前向きなウツ」と松井梨紗さんの自分の生まれ育った山をイメージして制作した「懐声がきこえる」の2作品に少し時間をとって、子どもたちと作者が作品をとおしてお話をすることにしました。 案内係を小泉友菜さんと舟橋未紀さんがアシスト してくれました。彼女たちはツアー用の三角の旗をつくって親子を誘導してくれました。学生たちははじめて出会う子どもたちからどんな言葉や感想が聞けるかとても楽しみに当日を迎えました。

会場の受付の前で親子をお出迎えです。さあ!ツアーのはじまりです。 IMG_0002_2 IMG_0008_2

 

 

中村萌さんの「実に前向きなウツ」

闇、背徳、狂気、不吉。それらは私たちにとって抹消すべき 対象なのでしょうか。子どもの描く平和な世界(もとい大人が 子どもに求めている世界)とはほど遠く、問答無用で悪いモノ として扱われます。幼い頃、血を流しながら微笑んでいる人間 の絵を描いて大人から懸念されたことに疑問を感じたことがありました。 私は頭の中で平穏と不吉を行き来します。こうすることで生 きて実感する明るい日々を大切にできると思ったからです。気づけば不安を招く禍々しさは、現代社会と向き合うために自分の背中を押してくれていました。 なので今日も引き連れていくのです。

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とキャプションには書かれています。

 

子どもたちはそんな作品を前にどんなふうに感じたでしょうか。 萌さんが子どもたちに「これは私がつくった面白い仲間たちです。へんてこな仲間です。」と作品を紹介。そして、どうやってつくったかを丁寧に説明しくれました。子どもたちは身近な新聞紙や段ボールでつくられていると聞いたことで親近感が湧いたのか、「あそこから水道や」「目玉がたくさんある」「そこにも大きな目玉や」「あっ!王子様」「注射器もある」と作品を構成している一つひとつが見えてきたようです。「水道から流れ出た黒い水の中にたくさんの目玉がたくさんあるのが面白い。でもなんで黒いの?なんで目玉があるの?」「木が帽子を被っているけど人じゃないのに…木でしょ。木じゃないの?ノコギリとか注射器があってちょっと怖い。危ないよ!」と「旗のところで逆さにぶら下がっている人は何をしてるの」と、すっかり作品の中に入っています。萠さんは、「私はこの作品をとても楽しく制作しました。けれどちょっと怖いなと思う子もいるかもしれないけど、そんな風に思うのも人それぞれだけど、私はこうゆう世界が大好きです。そしてこうゆう世界を好きだと思う私が好きです。だからこれをつくっている時に他の人から怖いし嫌いだなって言われることが怖かったです。でもつくっていくうちに周りの友だちから応援してもらったり、できた時にすごいねっていってもらえたのがすごく嬉しかったです。」と制作している時のことを子どもたちに分かるように一生懸命、言葉を選んで応えてくれました。

 

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萌さんの作品展示の部屋からぐるっと他の会場を回って子どもたちがやってきました。

 

松井梨紗さんの作品タイトルは「懐声がきこえる」です。

小さい頃から身近にある存在。それが私を形成するエネルギーとなっている。私の祖父母は農業をしており,夏は梨畑で梨を、冬は北山で柿を収穫している。それを手伝うのが今でも好きだ。同時に、木々たちを大切にして、畑、山全体にも目を向けていることから私の作品が生まれた。私の周りの環境はまるで生きているようで、嬉しい表情や悲しい顔も見せる。その環境と一緒に過ごすことで、今の自分が存在しているのだ。

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とキャプションには書かれています。

 

森のような不思議な世界に迷い込んだように入ってきました。 IMG_0044_2

 

松井: 「ここはどんな場所かな? 」と子どもたちに言葉を掛けました。

子ども:「森みたいや」「山の中や」と。「葉っぱも一杯落ちてるし」

松井:   「みんなはお山に行ったことはある?」「お山には何がいるかな?」

子ども:「さる」「しか」「たぬき」…

松井:   「ここのお山にはなにがいるかな?」

子ども:「変な顔した大きいの」「小さな変な生き物もいる」「狐も…」

松井:   「お山にはいっぱい生き物が居るね。ここに居るのは木の皮の鱗があるガラポというのが暮らしているの。

 

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松井:   「ガラポは恥ず かしがり屋だから、みんながここに入って来ないにと見ることが出来ないの。」

子ども:「この大きいのがガラポ?」

松井:   「そう!ここにいるのはみんなガラポ。何匹いると思う。」

 

子どもたちは山を散策するようにガラポの数を数えはじめました。

木の裏や大きなガラポの肩や天井からぶら下がっていたり、宝探しのようで楽しそうでした。

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子ども: 「33びき」

松井:    「そう!正解。33びき。そしてこ一番安心できるこの場所が大好きで、この場所をガラポは守っているの」

子ども: 「あの大きいがラポはなんで帽子見たいの被ってるのかな。サボテン見たいのも付いてる。」「ガラポは歩

けるのかな?」「小さいガラポが火の周りで躍っている」などいろいろ聞えてきました。

子どもたちの言葉も増えてきています。

 

松井さんのつくったファンタジーの世界と子どもたちの世界がだんだん一つになってきたようでした。

松井さんんも緊張がだんだん解れて、いい表情です。   IMG_0052_2

 

 

舟橋さん、小泉さんの案内と作品の説明を聞きながら、親子でゆっくりと 作品鑑賞しました。

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子どもたちには大人気の作品です。

「あれ!くっ付いた。」「しゃべった!」磁石やボタンを押すと音が出ることに驚きの連続です。 IMG_0006_2

これも子どもたちには大人気です。飼育員さんに扮した作者がいますよ。

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そして,みなさんお疲れさまでした。ツアー最後の記念写真です。は〜い!パチリ。 IMG_0058_2

 

●鑑賞ツアー後の子どもたちの感想カードから

・白と黒の友だちがよかった。(小学生)

・目玉がたくさんあったのがおもしろかった。(幼児)

・ガラポが不思議な世界だと思いました。(小学生)

・ガラポがペットだといいなと思いました。

・ガラポを数えたのが楽しかった。(幼児)

・山や公園などの自然なものを広いながら作品をつくってみたくなった。(小学生)

・アイロンビーズが解けていてすごいと思った。(小学生)

・きれいな形や色だった。(小学生)

・抜け殻がかっこ良かった。(小学生)

・鎧が本物みたいだった。 (小学生)

・動物園がみれて楽しかった。(幼児)

・動物園のせまいところを通れたから嬉しかった。(小学生)

・動物園の動物がわたで全部できていて面白かった。(小学生)

・洋服屋さんみたいのがよかった。(幼児)

・動物がたのしかったです。わたしもつくりたいです。(幼児)

・雨のチョウチョがかわいかった。(幼児)

・雨のをみれてたのしかった。(幼児)

・ぜんぶ楽しかったです。(小学生)

 

・大学生の先輩がステキな作品を見せてくれて、ありがとう。(小学生)

・大学生さんの考えるアートの道がすごく素敵です。(小学生)

・大きな画用紙に自由なテーマで1年かけて素敵な作品を作ることがしたくなった。(小学生)

●鑑賞ツアー後の保護者の方の感想カードから

・学生の方が自分の思いを一生懸命お話くださったのが嬉しかったです。 良い時間を過ごさせていただきました。

・卒業制作と一言で言っても,ジャンルがいろいろあることに驚きました。

どれも素敵で、でもそれぞれ制作した方の歩んできた人生、性格なども垣間みれる感じがしました。

・いろいろな素材を使って、それぞれの個性的な作品で面白かったです。

ガラポン、前向きなウツ、広葉さんの葉っぱの作品、ZOO、がよかったです。抜け殻も格好よかったです。

・いろいろな手法やテーマ、作品を作り上げる経緯が分かり、楽しい見学でした。

子どもも楽しめる作品が多くてよかったと思います。

・子どもを連れて美術館などへ行くのは難しいので、なかなか行けません。今回はとてもいい時間が過ごせました。

これからの作品づくりの刺激になればいいと思っています。

・作品を作った人の話を聞けるのはとても良かったです。

・不思議な世界に入ったような気持ちになりました。その中でも伝えたことや幼い頃の基盤のような土台があって、

そこから作品ができあがってくるのだなと感じました。色や素材などの拘りなどすらしいと思いました。

・学生さんから直接作品の意図や制作する上での思いを聞くことができ、面白かったです。ただ作品を見ているより

響いてきました。個人的には「実に前向きなウツ」が印象的でした。ウツを肯定的に捉えるという概念があまり私の

中になかったので、そういう気持ちを白黒のちょっときも?こわ?かわいい世界で表現できるなんてと感動しました。

 

コロコロキッズアートスクール主宰の緒方さんからもコメントをいただきました。

親子とも、鑑賞ツアーを楽しんでくださったようです。ある小学生の子が「先輩みたいになりたい!」と目標ができ

たみたいです。また作品から「家族の愛情』」を感じられた保護者の方もおられたようで、子育て真っ最中の親御さ

んにとっても、アートという枠では計り知れない、キラキラした何かを得られたことだろうと思います。

 

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コロコロキッズアートスクールのみなさん、朝早くから遠いところをありがとうございました。

こども芸術学科の学生の作品は作品を制作する過程で自分の子ども時代に経験したこと、家族のことがいっぱい詰ま

っています。作品について言葉で語ることで、作者自身も自分を客観的に見ることができます。また鑑賞してくださ

る方と言葉を交わすことで自分が気づけなかったことに辿り着くこともあります。今回は子どもたちとの対話で子ど

もの素直な見方や言葉から多くの気づきを得たようです。ありがとうございました。

 

29日月曜日はこども芸術大学の子どもたちの卒展鑑賞ツアーでした。

生憎の雨の中、年少さんと年中さんは2人ずつ仲良く手をつないでやってきました。子どもたちは首からスタンプラ

リーのような台紙をぶら下げて、決められた作品を見た後にシールを貼ってもらえるそうです。こども芸術大学の先

生が予め見せたい作品を選んでカードをつくってくださったようです。年少さんと年中さんが見終わった頃に年長さ

んと時間差で入れ替えで見にきてくれました。年長さんは昨日のコロコロキッズアートスクールと同じように中村萌

さん、松井梨紗さんの作品を見ながらお話しました。

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こども芸術大学の年長さんとの様子はこども芸術大学の先生がブログにアップしてくれています。

右のURLより覗いてみてください。https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=55823

 

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上の作品は今回のツアーでは回れなかったのですが体育館で展示中のこども芸術学科の学生の作品です。

こちらにも足を運んでくださいね。

 

卒業展はまだ今週いっぱい続きます。こども芸術学科の学生の作品は作品を見るだけでなく、より作品を楽しむため

に子どものように素直な言葉でそこにいる作者に語りかけてください。廊下にはポートフォリオも並んでいます。

明日からは少し暖かくなるようです。是非瓜生山に足をお運びください。

こども芸術学科の展示は至誠館2階です。お待ちしています。

 

(教員:梅田美代子)

 

 

 

 

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