大学院

[報告]サマーキャンプTOKYO2018

 

京都造形芸術大学大学院 サマーキャンプTOKYO2018

 

 

大学院夏期プログラム、「サマーキャンプTOKYO2018」が、8月30日、31日、9月1日にかけて、東京・外苑キャンパスにて実施されました。

 

本企画は、大学院生の交流プログラムとして、2012年度に東北芸術工科大学との合同企画として始まり、2015年度から現在に至るまで、本学大学院主催によって、本学の大学院生と全国の芸術系大学大学院からアーティストを志す学生有志が選抜され、本学の外苑キャンパスを主会場として運営されてきました。この企画は、現役作家であり、本学大学院芸術研究科准教授の鬼頭健吾と大庭大介がプログラムのコーディネーターを務め、参加学生と3日間、密なコミュニケーションをはかりつつ、学生間の交流とディスカッションを促進し、各自の研究と制作の強化をはかります。そして、何より、本学大学院美術工芸領域の目標である、「プロのアーティストになる」を実現する上でも、社会と接続する実践的な学びの場として機能することを目指しています。

今年度は、東京藝術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、女子美術大学、愛知県立芸術大学、京都市立芸術大学、東北芸術工科大学で教鞭をとる、現役作家教員にお声がけさせていただき、各大学から、この企画に賛同する大学院生を1名ずつを推薦していただきました。

本学からの選抜は、参加希望者のポートフォリオ審査をTAKA ISHII GALLERY代表であり、本学大学院客員教授の石井孝之先生が行い、6名を決定しました。

プログラムは、東京・三宿にある、「CAPSULE」ギャラリーと「SUNDAY CAFE ART RESTAURANT」を主催、運営されている、アートコレクターの吉野誠一氏にご協力いただき、「CAPSULEでの個展を開催すること」を目標に、アート業界の第一線で活躍している特別ゲストの講義や、学生間の交流とディスカッション、各自の展示プランの構想を行い、最終日には、3日間の成果として、CAPSULEでの個展開催プランの発表を経て、吉野氏の審査のもと、グランプリ(CAPSULEでの個展開催の権利)、準グランプリ(SUNDAY CAFE ART RESTAURANTでの個展開催の権利)を決定するという内容です。(グランプリ、準グランプリを獲得した学生は2019年にCAPSULE・SUNDAYにて個展を開催します。)

今年度の引率教員として、池田光弘先生(画家・美術工芸学科准教授)にも参加していただき、特別講義では、片岡真実先生(森美術館チーフキュレーター・大学院芸術研究科教授)にも参加していただきました。

 

 

 

サマーキャンプTOKYO2018 3日間の記録

 

 

<8月30日>

 

開催初日は、企画趣旨説明、参加学生12名の自己紹介プレゼンテーション、片岡真実先生の講義を行った後、三軒茶屋にあるCAPSULE GALLERYに移動し、空間の把握、展示プランの構想を行います。

 

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片岡真実先生による授業風景です。

テーマは「現代アートの現状と課題」についてです。第一線で活躍する、日本を代表するキュレーターとしての立場から、世界のアートの現状・状況について話していただきました。初日は初顔合わせということもあり、皆、緊張しつつも、真剣に講義を聴いています。

 

 

 

sc2CAPSULE GALLERYにて、空間把握とプラン構想をしている様子です。

展示されている作品は、2017年度の準グランプリを獲得した、東京藝術大学大学院の楊博くんの展示風景です。

皆、楊博くんの展示を参考にしつつ、各自の展示イメージを膨らませています。

CAPSULE

http://capsule-gallery.jp/exhibition/index.php

 

 

 

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空間把握の後は、CAPSULE GALLERYの横にある、吉野さん経営の「SUNDAY CAFE ART RESTAURANT」にて、吉野さんと個展開催中の楊博くんを囲んで、交流会を行いました。

美味しい食事とアートが飾られたオシャレな空間から、少し緊張感から解放されています。大いに盛り上がりました。

SUNDAY CAFE ART RESTAURANT http://sunday-cafe.jp

「現代美術コレクターの自宅」に見立てられた店内には、リビングやダイニング、書斎やテラスのようなスペースがあり、それぞれに、アート作品が飾られています。

 

 

 

 

<8月31日>

 

2日目は、午前に交流を兼ねて、学生間でのディスカッションと、午後には中間発表を行います。

 

テーマは昨日の片岡先生の講義テーマ「現代アートの現状と課題」を起点に、3つのテーブルに分かれて、ディスカッションを行いました。各自が全員と話せるよう席替えも行いました。

 

現状では、個人的な繋がりがない限り、なかなか、国内の芸術・美術大学の学生間での交流がないので、貴重な体験なっているようでした。テーマを起点としながらも、アーティストとして生きていくこと、現状の問題点、自分の大学の話等、熱い意見交換がなされ、大いに盛り上がりました。

 

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午後から夜にかけて、個展開催に向けての中間プレゼンテーションの準備と中間プレゼンテーションを行います。

 

各自の近年制作してきた作品や、新作の可能性を含めて、ギャラリーの空間写真を使って、展示のシミュレーションをしています。

 

アーティスト志望の学生が集まっているだけに、「絶対に個展開催を獲得したい!」という強い思いが伝わってきます。

午前のディスカッションとは違い、かなりの緊張感が漂っています。

 

 

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↓↓↓中間プレゼンテーションの様子です。

 

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中間プレゼンテーションでは、発表8分、質疑応答5分で行います。

質疑応答は、鬼頭、池田、大庭、3名の教員が行いました。

個々が考えるコンセプト、展示構成と内容が、聞き手に、最善に伝えることができるよう、アドバイスを行いました。

中間発表では、まだまだ、内容は荒削りではありますが、ここからブラッシュアップしていきます。

この発表をもとに、夜から明日の最終プレゼンテーションに向けて内容の修正を各自行います。

 

 

 

<9月1日>

 

最終日。午前中は、準備、午後1時から最終プレゼンテーションを行います。

 

さて、いよいよ、吉野氏をお招きして、3日間の成果を見せる、最終プレゼンテーションが始まります。

例年、ほとんどの参加者が、ほぼ、徹夜で準備をしてきます。

プレゼンの順番は、くじ引きで決まります。

 

↓↓↓写真は朝一番にトラックで、外苑キャンパスに実作品を運び入れ、プレゼンテーションを行なっている様子。すごい意気込みを感じます!

 

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↓↓↓自己紹介にも様々な工夫があり、紙芝居風の自己紹介もありました。

聴きごたえがあるプレゼンテーションが続きます。

 

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↓↓↓皆、真剣に発表を聞いている様子です。かなりの緊張感があります。

 

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昨日の中間発表からうって変り、各自のプレゼンテーションの質が飛躍的に上がっています。これには、毎年驚かされます。

 

目標が明確にあることから、普段、大学で行われる研究発表とは比べ物にならないリアリティがあります。

 

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↓↓↓吉野さんが参加者に質問している様子です。

コレクターと、ギャラリーオーナーからの視点で真剣に質問がされています。

作品のコンセプトや質、メディア等、個展を開催することにあたっての具体的な質問がされていました。

 

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さて、いよいよ、最終審査です。

グランプリ、準グランプリの決定は吉野さん1人で行います。

公平を期するために教員は口出ししません。

武蔵野美術大学の小林耕平先生も最終プレゼンテーションを聴講しに駆けつけてくださいました。

吉野さん、誰にするか、すごく悩んでいる様子です。

今年は例年に比べても全体的にプレゼンテーションのクオリティが高いと絶賛していました。

 

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さて、いよいよ、グランプリ、準グランプリの発表です。

参加者一同、一番緊張する場面です。

 

皆の緊張感がこちらにも伝わってきます。

 

吉野さんから発表をしていただきます。

果たして、今年のグランプリ、個展開催の栄冠を獲得するのは?

 

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グランプリは、東京藝術大学大学院修士1年の磯崎隼人くんに決定しました!

周りから拍手と歓声が上がりました。発表直後の磯崎くんです。

 

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磯崎くんは自身の身体をテーマに、樹脂を支持体として、刺青が施された絵画や

インスタレーション、パフォーマンス映像等、メディアを超えた表現を行なっています。

どの作品も完成度が高く、プレゼンテーションも秀逸でした。磯崎くんおめでとうございます!!!

 

次に、準グランプリの発表です。

 

SUNDAYでの個展開催を獲得するのは、、?

 

 

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準グランプリは、

京都造形芸術大学大学院美術工芸領域油画分野修士2年の小谷くるみさん

に決定いたしました!

また、拍手とともに、歓声が上がります。

発表直後の吉野さんの総括に耳を傾ける小谷さんです。感動からやや放心状態です。

 

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小谷さんは関係や空間、痕跡をテーマに絵画を制作しています。香料を使った絵画や、テニスボールの軌跡を描いた絵画、水滴がついた曇りガラスのような水墨画やホラー映画を想起させる絵画を制作しています。プレゼンテーションも、非常によくまとまっていて、聴きやすい内容でした。小谷さんおめでとうございます!

 

 

皆さんハードな3日間、本当にお疲れさまでした!!

賞を獲得できた学生も、獲得できなかった学生も、達成感と疲れからいい表情をしています。

 

短い3日間でしたが、濃厚な内容で、緊張感がある日々を過ごすことがきました。何より、賞の獲得の有無以上に各自の実践的なプレゼンテーション能力が飛躍的に上がり、皆、アーティストの卵として、一枚殻を破ったのではと思います。

 

この企画をきっかけに同世代の学生間同士、さらなる交流を深め、この世代が将来の日本の美術界を牽引するアーティストになることを切に願います!

 

 

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サマーキャンプTOKYOプログラムコーデネーター

大庭大介(大学院芸術研究科)

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