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Letʼs talk

(大学院)グラフィックデザイン分野 許 靖易

本作品は、対人関係に不安を抱える若者や、他者とのコミュニケーションにおいて文脈理解に困難を感じる人々を対象にした、匿名型コミュニケーション支援デザインの提案である。
日常生活において、学校や家庭では十分に学ぶことのできない「人間関係の距離感」「暗黙の了解」「言葉にされない感情や意図」は、多くの場合、失敗や誤解を通して個人的に獲得されていく。しかし、そうした経験は共有されにくく、また直接的な対話の場では語られにくい側面を持っている。

本研究では、この「語られにくい経験」や「理解されなかった出来事」に着目し、それらを安全に共有・交換できる仕組みとして、オンラインとオフラインを横断する匿名明信片交換システムを構築した。
参加者は、日常の中で生じたコミュニケーション上の違和感や出来事を匿名で投稿し、テーマタグに基づいてデザインされた明信片として出力する。明信片は実際に投函・回収され、他者の経験と物理的に交換されることで、個人の体験が他者の視点と接続される。

匿名性を採用することで、評価や立場から切り離された率直な経験の共有を可能にし、また明信片という物理的メディアを介在させることで、即時的な反応や対立を避け、読み手が自分の速度で他者の経験と向き合う余地をつくっている。
本作品は、正解を提示するための装置ではなく、他者の経験に触れ、自身の文脈を相対化するための「緩やかな接点」を提供することを目的としている。

沈黙や誤解、言い淀みといった一見ネガティブに扱われがちな要素も、視点を変えれば重要なコミュニケーション資源である。本作品は、それらを可視化・構造化することで、他者理解への新たな入口を提示する試みである。

既存の郵便システムとの連携。(Unsplash/クレジット:HENG YIN)

木陰で一時的に立ち止まり、交流する人々。(unsplash /クレジット:Richard Vance Cabusao )

許 靖易

(大学院)グラフィックデザイン分野

中国の美術大学を卒業後、日本へ留学。現在、桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン専攻3年在学。デザインを視覚表現として完結させるのではなく、生活の中で機能し、他者理解やコミュニケーションを支える実践として捉えている。あわせて京都芸術大学大学院コミュニケーションデザイン/グラフィックデザイン領域で学び、異なる専門領域との対話を通して、デザインが社会の中で果たし得る役割と可能性を探究している。

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