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モヤモヤのすゝめ

─ネガティブ・ケイパビリティを社会の資源にするコミュニケーションデザイン研究─

(大学院)グラフィックデザイン分野 岡田 英明

参加型Webプラットフォーム/インスタレーション装置/生成AI活用

本研究は、成果や正解が重視される現代社会において見過ごされがちな「問いの喪失」という問題に着目し、日常の中で生まれる“言葉にならない違和感=モヤモヤ”を、個人の弱さではなく「問いの芽」として捉え直すコミュニケーションデザインの提案である。とりわけ、違和感を表明することで評価が下がることを恐れ、沈黙を選びがちな若手社会人の姿を現代社会の縮図として捉え、その沈黙構造を解きほぐすことを出発点としている。

成果物は、①参加型デジタル書籍『モヤモヤのすゝめ』、②モヤモヤした感情や投稿をリアル空間で可視化する装置(モヤモヤボックス/モヤモヤの木)、③投稿を補完・分類し対話を支援するAIアシスタント「モヤザワ先生」の三点から構成される。デジタル書籍では、生活者から寄せられたモヤモヤが自動的に章立てされ、読み手自身が“編集者”として関与できる共同編集型の仕組みを設計した。投稿はAIによる翻訳や共感的フィードバックを経て次の投稿へとつながり、オンラインとオフラインを往還する循環を生み出している。

本研究の特徴は、モヤモヤを解消すべき感情として扱うのではなく、すぐに答えを出さず、曖昧さを抱えたまま問い続ける力―ネガティブ・ケイパビリティという概念を、社会の中で実践可能な装置として具体化している点にある。AIは答えを与える存在ではなく、感情と言葉のあいだに補助線を引く「翻訳者」として機能する。またリアル装置は、参加の入口と出口として機能し、個人の内面に留まりがちな違和感を、都市の風景の中に「言葉の光」として立ち上げる。

本研究は、福沢諭吉が『学問のすゝめ』によって知識を社会に開いた営みになぞらえ、ネガティブ・ケイパビリティを基盤とした現代における「問いの民主化」を志向する試みである。モヤモヤを共有し、問いを共に抱え続ける循環を支えることで、個人・組織・社会における内発的動機と対話の回復を促す、新たなコミュニケーションデザインの可能性を提示した。

※以下アドレスより、AI 対話プロトタイプ「モヤザワ先生」を体験できる。
(GPT-5.2[OpenAI]を使用、著者設計・検証、2025年)

https://chatgpt.com/g/g-6940c0651e84819180d053653331c148-moyasawaxian-sheng-hurototaihu-1-0

『モヤモヤのすゝめ』ロゴタイプおよびタイトル構成。モヤモヤの質感を可視化するため、手書き風のタイポグラフィと色彩を用いて構成した研究タイトルのデザイン。(筆者制作、2025年)

モヤモヤの社会的共有を示す可視化図版。生活者が抱える言語化困難な違和感を図示し、ネガティブ・ケイパビリティの概念を視覚的に示した。(筆者制作、2025年)

参加型デジタル書籍『モヤモヤのすゝめ』の概念図。モヤモヤを「問いの芽」として再定義し、共有可能な問いへと編み直すプロセスを示す。(筆者制作、2025年)

『モヤモヤのすゝめ』への参加導線図とAIキャラクター「モヤザワ先生」概念図、対話プロトタイプQRコード。本研究の実験的実装を示す。(筆者制作、GPT-5.2[OpenAI]使用、2025年)

『モヤモヤのすゝめ』の循環構造と、問いの民主化に向け「モヤモヤの木」から「光の森」へ展開する問いの可視化プロセスを示す全体構造図。(筆者制作、2025年)

岡田 英明

(大学院)グラフィックデザイン分野

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