文芸コース 黒岩 理恵
『デペイズマンの瞳』は詩や神話、聖書にまつわる絵画、ある画家の逸話、自然現象や野生動物の生態が一つの作品に散りばめられている。
タイトルにある「デペイズマン」は二十世紀初頭のシュルレアリスムで謳われた「コラージュ」と並ぶ手法の一つ。その意味は、フランス語で異なった環境に置くことを意味する。一方のコラージュは、フランス語で「糊付け」を意味し、新聞や雑誌の切り抜き、糸、釘、砂などの様々な素材を組み合わせた絵画技法。これをヒントに執筆したのが本作『デペイズマンの瞳』である。絵画技法と小説の意外な組み合わせ。一見、脈略のない様々な史実や伝説、現象の断片を空想でコラージュし見えてきた場面を筆者がテキスト化した小説なのである。
記憶を失くした主人公の青年は、英雄でもなければ人より優れた身体能力や知力、勇気を兼ね備えている訳ではない。そんなヒーロー映えしない青年が一日の長さが二百年だといわれている「ときの島」で物語を展開する。主人公の青年を通し、得たいの知れない島で記憶を失くすという困難に合い立ち向かわなければならなくなった「普通の人」を描いているのも、この作品のもう一つの見どころだ。
宮城県
デペイズマンの瞳
黒岩 理恵
文芸コース
このコースのその他作品