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お地蔵ご近所ものがたり

一地蔵盆で紡ぐ地域のコミュニケーション・京都市N町の場合一

(大学院)映像デザイン分野 遠藤 真依

領域奨励賞

本作は、京都市郊外のN町を舞台に、地域行事「地蔵盆」と映像を組み合わせることで、失われつつある地域のつながりを再び立ち上げる試みである。
少子高齢化や生活様式の変化により、近年、地域行事は縮小・形式化が進み、住民同士が顔を合わせ、語り合う機会は減少している。その結果、地域の中で孤立や孤独を感じる人の存在が、静かに増えつつある。

本プロジェクトの出発点は、町内会の倉庫から見つかった1970年代から平成までの8ミリフィルムである。そこには、かつての地蔵盆の様子が毎年記録され、翌年の地蔵盆で住民が集まり上映するという、記録と鑑賞が循環する文化が存在していた。
映像を「みんなで見る」ことで語りが生まれ、再会や笑いが自然に起きていたのである。

本作では、この「撮る・見る・語る」という循環構造を現代に再構築するため、過去の8ミリフィルムと、現在の地蔵盆や町の日常をスマートフォンで撮影した映像を組み合わせ、上映会を実施した。上映の場では、映像をきっかけに住民同士の会話が生まれ、世代を超えた記憶の共有や、新たな参加への意欲が確認された。

映像は、単なる記録や情報ではなく、人と人の関係性を媒介する「装置」となり得る。本作は、地蔵盆という行事を通して、映像が地域の共体験を生み出し、つながりを更新していく可能性を提示する。
「みんなで撮って、みんなで見て、縁を結ぶ」——その小さな循環が、地域の日常に静かに根づいていくことを目指している。

遠藤 真依

(大学院)映像デザイン分野

映像とコミュニケーションデザインの視点から、地域や人のあいだに生まれる「関係性」や「共体験」をテーマに制作・研究を行いました。
地蔵盆や8ミリフィルムといった身近な文化やメディアを起点に、映像を鑑賞や記録のためのものとして完結させるのではなく、人と人が集い、語り合い、次の行動につながるための「媒介」として捉え直す実践に関心があります。
本作《お地蔵ご近所ものがたり》では、地元・京都市N町をフィールドに、行事・記録・上映を組み合わせたコミュニケーションの仕組みを設計し、地域のつながりを現代的に再編する試みを行いました。
今後も、映像を通じて多様な立場の人が関われる「小さな共体験」のデザインを探求していきたいと考えています。

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