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芸術研究の世界#6「能とはいかなる演劇なのか ー世阿弥の『忠度』をめぐって」

2021年11月4日

アクティビティ

 11月3日(水)18:30より、文哲研オンラインセミナー「芸術研究の世界#6」をzoomにて開催いたしました。

 

芸術研究の世界#6

「能とはいかなる演劇なのか ー世阿弥の『忠度』をめぐって」

講演者:天野文雄(京都芸術大学舞台芸術研究センター 所長)    

日 時:2021年11月3日(水)18:30-20:00

参加者:55名(京都芸術大学教職員・学生)

*講演概要ほか詳細:http://www.kyoto-art.ac.jp/iphv/topics/4816/

 

 

【講演補足】(天野先生にお答えいただきました)

*どのような能から観はじめるのがよいか。

-講義ではこれという順番はないと答えましたが、「追っかけ」を作るのもよいかと思います。演目ではなく、役者から入るということです。能の予定はネットで分かります。

 

*『千載集』に採られた忠度の一首

-ささなみの志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな

講義では失念して紹介できませんでしたが、この歌は『忠度』には出てきません。これも「読人知らず」へのこだわりを暗に示した趣向と思われます。

 

*短冊に書かれていた忠度の歌

-行き暮れて木の下蔭を宿とせば花や今宵の主ならまし

春の景色に見惚れて家に帰るのを忘れて、花の木蔭で一夜を過ごした、という風雅な歌です。この歌は他の歌集にはみえず、『平家物語』にしかみえないのですが、忠度の墓標を

若木の桜としたのも、この歌を念頭においた趣向です。前半、忠度の化身の老人が旅僧に、今宵はこの桜を宿としなさいと勧めるのも、この歌をふまえています。

 

 

【参加者感想(一部抜粋)】 

*私は今まで能を断片的にしか見たことがありませんが、見るたびに目が覚めるような感覚になりとても興味がありました。今回、天野先生があらすじを熟知してみることが重要ということで今後注目してたいと思います。ありがとうございました。

 

*描かれていなことの文脈を読み取ることが大切であり、それを読み解くのが楽しさなのかなと思いました。

 

*シテの台詞、ワキの台詞、三人称としての台詞と分けて考えられていない現状に驚きました。ゆっくりとした動きのなかに情念や気が込められているのかなと想像しています。映像で見るとそこが伝わりにくく退屈してしまうのでしょうか。

 

*ついつい早く能を楽しめるようになりたいことが先走ってしまい、考えながら見るという大事なことがかけていました。わかりにくいことを自分なりに発見して腑に落ちることが面白さなのかと勝手に想像しました。今回、能に触れる大変良いきっかけとなりました。

 

*先生のお話は、すべてのことに通じるのだと心に響きました。特にどんな小さなことも見逃さないように努めることと同時に全体の統一性、総合的把握に留意することという点です。お能は、薪能や能船、他に一度ネット配信でも、観せていただいたことがありますが、能楽堂での経験がありません。能楽堂で本日講義くださいました≪忠度≫を観せていただく日が来るよう、日々精進いたします。

 

*興味深い内容でした。スクーリング等で狂言について触れることは多かったのですが、能の鑑賞はテレビのみで、学ぶ機会が少なかったので、是非ともと思い、受講させていただきました。
時代の変化でテンポが長くなった、能の中に和歌のセリフが多くあるという内容にもそそられました。また、同じセリフの中の言葉が謙譲語、尊敬語と変化があるというところだけで、役の機微が感じられるというのが非常に面白いと感じました。なぜなのか、どうしてなのか、研究することの基本姿勢を改めて、身が引き締まりました。

 

*今まで能はあまり見たことがなかったのですが、今日のお話を聞いてみてみたいと思いました。テンポの話が出ていましたが、いつの時代からあんなに遅いテンポになったのか、気になりました。

 

 

 

ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。

対面での開催が難しい情勢ではありますが、今後もzoom等を活用しながらセミナーや研究会などを開催する予定です。一般公開セミナー開催の際はこのホームページにてお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

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【文哲研オンラインセミナー「芸術研究の世界」】

このセミナーの講師は、文部科学省科学研究費(通称:科研費)の研究代表者である、11名の本学教員です。科研費は、人文・社会科学から自然科学まで、あらゆる分野の優れた研究を発展させることを目的として国から支給される研究費で、厳正な審査を経て採択され、数年間、申請した研究計画に沿って研究に取り組み、その成果を公表します。オンラインセミナー「芸術研究の世界」では、本学の教員が現在取り組んでいる芸術研究について、その研究を発想した経緯や研究の面白さ、難しさなども含めて存分に語っていただきます。セミナーでの質疑を通して、参加者の皆さんとともに、芸術研究の奥行きと拡がりに触れる機会となることを願っています。

 

【今後の予定】 (タイトルは科研の採択課題です。講演内容は追ってご連絡します)

12月1日 河上眞理  〈美術建築〉の観点から見た明治期における家屋装飾の歴史的位置づけに関する研究

1月12日 町田香  『四親王家実録』を中心とした近世四親王家の生活環境に関する復元的研究

1月19日 齋藤亜矢 描画のプロセスにおける想像と創造の関わりの検証

2月2日 増渕麻里耶 希土類元素に着目した古代鉄製品の非破壊製作地推定法の開発

3月2日 森田都紀 日本の芸能「能」の演奏技法の伝承過程に関する歴史的研究‐能管を中心に‐

※日程は講師の都合等で変更の可能性があります

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