キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol.09

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中西由弥と「枯れた技術の水平思考」について語るの巻

 

今回のゼミ通ヒーローズは、村上ゼミ4年生の中西由弥さん(相愛高等学校出身)をピックアップします。

ゲームゼミの中で「玩具」の研究と制作を続けているアナログ人間。

ゲームの神様である故・横井軍平氏(知らない人はすぐにググろう)の哲学「枯れた技術の水平思考」に基き、

新しい面白さを生み出す秘訣について語ります。

 

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学科展の会場にて、自身のゲームのルール説明をする中西由弥さん。

 

村上 横井軍平氏(1941-1997/任天堂で様々な玩具、コンピュータゲームを開発してきたヒットメーカー。退社後、株式会社コトを設立。ゲーム業界の神様とも称される)が提唱する「枯れた技術の水平思考」っていう概念は、ゲーム制作の授業の中でもかなりしつこく説明してきたね。

 

中西 既に使い古された遊びの中に新しい発想をプラスして新しい価値を生み出すっていう考え方ですよね。

これ、おもちゃ会社の説明会に行ったらよく言われますね。

 

村上 ちなみに横井軍平さんって知ってるよね。

 

中西 もちろんです。でも先生から授業の中で聞いて初めて知っただけなんで、なかなか一般の人は知らないかもですね。

 

村上 ゲームゼミの中でも横井軍平さんの存在とこの思想は散々刷り込んできたからかなり根付いてきてるね。

この考え方が分かってると面白い企画がどんどん溢れ出てくる。今の流行を追いかけるんじゃなくて、新しい価値を生み出すのが大学としての使命なんでね。

我々からすると軍平さんといえばゲーム業界の神様として崇め奉るけど、普段テレビに出るようなこともないから、学生はなかなか知る機会はないかもね。海外に行ったら、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、グンペイっていうレベルの人として知られてるんだけど。

 

中西 ゲームっていうか、この哲学は遊びの根本にあると思いますね。

この前芸人さんがおもちゃ会社に行って「面白さとは何か』みたいなことを教えるっていう番組があったんですよ。その中で、失敗したネタを一回見せて、失敗の理由を考えてその答えを元にもう一回ネタを見せるっていうのをやってたんです。ぶっ飛んだネタを見せたら、身に覚えがなさ過ぎてついていけないけど、ありふれたネタの中にぶっ飛んだ要素を組み込んだら面白さが伝わる、て言ってたんですよ。

それ、すごい遊びに繋がるなーって思って、へぇ~って思って見てました。

 

村上 それこそ「枯れた技術の水平思考」だよね。枯れた技術ってことはみんな知ってるものってことだから、まず「こういう内容です」って言われたら頭の中でイメージを構築しやすい。そしてそこにコレ(新しい価値)を足したら「おお、なるほど!」ってなる。

仮にパソコンもスマホも触ったことがない民族に「ソサエティ5.0がね」とか言ってもワケ分からんだけで好奇心も何も湧いてこないよね。

 

中西 そもそも何すかそれ!?てなりますよね。そうなると気持ちが離れちゃう。

 

村上 ちなみに、横井さんの作品って知ってる?

 

中西 以前コトさん(株式会社コト。横井軍平氏が任天堂退社後に設立した会社)にお伺いしたときに

紹介していただいたので大体は分かります。

 

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株式会社コトさんの会議室に展示されている横井軍平氏の偉大な発明品の数々。

 

村上 あの時は、学生を大勢引き連れて押し掛けたにも関わらず懇切丁寧に会社の中を案内してくれて、新しい発想を引き出すような貴重な裏話を聞かせてくれて、ピザをご馳走になって、お土産に新商品までいただいて…。職人気質で人間味に溢れた良い会社だったよね。

で、話を戻して…。横井軍平さんの作品で有名なものって、まずはファミコン登場前の任天堂時代に開発した『ウルトラハンド』があるね。

 

中西 あの伸びるやつですね。

 

村上 あれは元々軍平さんがセクハラにならないように女性のスカートめくりをしたくて開発したって聞いたけど。

あとは『ラブテスター』。手をつないで二人の相性度を測るメーターが動く玩具。

これは軍平さんが女性社員と手をつなぐ口実がほしくて作ったという逸話がある。

 

中西 そんなんばっか(笑)。あとは野球のピッチングのおもちゃもありましたね。

 

村上 『ウルトラマシン』ね。今言ったやつ、子供の頃全部持ってたわ。

あと有名なものといえば『ゲーム&ウォッチ』。電卓が普及した頃に、この液晶を使って何か面白いことができないか、っていうアイデア商品ね。電卓の数字をキャラクターに置き換えたらゲームになりました、っていう。

 

中西 私は触れたことはないですね。子供の頃にゲームを買ってもらったことはありますけど、他の学生に比べるとそんなにデジタルゲームをやってきた方ではないんで。

デジタルのゲームっていうのが、まず任天堂しか家になくて、PlayStationとかやったことないですし、おもちゃもあるにはありましたけど、何でも買い与えられてたってわけではなくて、一つ買ってもらったものを延々遊んでましたね。一日一時間と決められてましたけど。

小学一年生のときにNintendoDSを買ってもらって、そこから『どうぶつの森』とか『さわるメイドインワリオ』とかで遊んでました。あとはゲームボーイの『ポケモン』で友達同士が通信してたのを横で見てただけですね。

 

村上 それほどデジタルゲームに興味があったわけではない?

 

中西 興味はあったんですけど、ピアノ、水泳、英会話、公文と習い事をやってた関係で時間がなくてあまりゲームで遊んでた記憶がないんですよ。

 

村上 いつからこの道に進もうと思ったの?

 

中西 昔から絵を描くのは好きで、中学3年生の頃に美大の存在を知って、そこから絵をちゃんと勉強したくて高校1年のときに既に勉強は切り捨ててたんですよ。で、大学に入ってゲームの授業を受けて、最初の授業のときにポケモンのゲーム性分析みたいなグループディスカッションをやったんですね。そこでストーリーとかキャラクターではなくてゲームシステムのことを意識するようになって、ゲームの企画を考えるのってこんなに面白いんだって思いました。

それでもそんなにゲームをしてたわけではなかったんで、このままここにいていいのか、って悩んだんですけど、課題のゲーム企画をするとき、私は「たまごっち」みたいな媒体を作って、その中で遊ぶ企画を立てたんですね。その時に「あそび」を考えようと思ったら、ハードウェアありきのものを考えるんじゃなくて、媒体から考えちゃえばいいんだって思って、そこからおもちゃにますます興味が出てきた、ていう経緯があります。

 

村上 なるほど。じゃキミもゼミで洗脳されたクチだ。

 

中西 そうですね、完全に(笑)。ゲームというより遊びですね。とにかく楽しいことを考えたかったんです。

おもちゃも面白そうだなってなったときに『おもちゃショー』に行ったんですけど、そこに来てた子供達の必死に遊ぶ様子を見たんです。

笑顔の子もいるんですけど、どちらかというと真剣になってるんですね。で、達成感を得た子供が「できた!」って大声で喜んでる顔を見て、あ、私がやりたいのはコレだ!て思いました。

 

村上 人を喜ばせるのはこの仕事の醍醐味だしね。ちなみに一番面白かったおもちゃって何?

 

中西 やっぱり『たまごっち』ですかね。最初はそんなに好きじゃなかったんですけど、ピアノ教室でのレッスンが終わった後にみんなで通信する時間がすごく楽しくて、そのためだけに行ってたって感じでした。赤外線通信ができたのでそれぞれのたまごっちを見せ合ったり交換したりして。あれが楽しくて楽しくて。

同時期に『でかたま』ていうのが流行ってて、親の携帯でネットに繋いだら、自分が今育ててる前の世代の子からプレゼントが送られてくるんです。そんな遊び方もできて楽しかったですね。

 

村上 『たまごっち』が出たときは業界内でも話題になったからね。

その頃の男子はなんだろう、『ムシキング」かな。

 

中西 女子も『ムシキング』やってましたね。あと『ラブandベリー』とかも。お小遣い全部使いましたもん。

ゲームを買ってもらえなかった分、外でそうやって遊んでました。

 

村上 遊ぶのが嫌いな子供なんていないんじゃないかな。いるのかな。

 

中西 勉強しなきゃいけないから遊びを切り捨てる子はいましたけど。

 

村上 でもそれって我慢してるってことだよね。

 

中西 でも私は我慢できなかったんで(笑)。

 

村上 以前山中楓のインタビューの中でも言ってたけど「勉強はゲームだ」っていう考え方があって、問題を解くことを楽しむっていうか。

 

中西 私はそれが出来なかったですね。中学生の頃、勉強しろって言われて自習室に8時間閉じ込められたことがあったんですけど、8時間の中でどれだけポケモンを育てられるかってことに一生懸命になってて、監視されてる中でどこまで遊べるかっていうのを楽しんでました。

 

村上 『ポケモン』というゲームじゃなくて、『ポケモンで遊ぶ』というゲームってことね。

じゃ今度は作り手の方の話に移ろう。「ゲーム制作応用」の授業の中で、廃材置き場で拾ってきたガラクタや木材を使って新しい玩具を作ろうっていう課題を出したけど、あれは『枯れた技術の水平思考』の実験だったね。

 

中西 あの時私何作りましたっけ…?たくさん作ってたからもう忘れました(笑)。

でもそこでの蓄積をもとに学科展用の作品として『Beeeeee Bearful』を作りましたね。

 

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中西さんの作品『Beeeeee Bearful』。

 

村上 このゲームの発想の原点って何?

 

中西 あれはtwitterを見てるときにデザイナーさんの絵で六角形をモチーフにした画像がたくさんアップされてて、それ見て単純に可愛いなと思ったんですよ。四角形でも五角度形でもなく六角形が可愛いなと思って、これを使って何かできないかと思ったのが切っ掛けです。まだその時はシステム(ゲームのルール)も何も考えてなかったですね。

 

村上 内容ではなく形から入った?

 

中西 形から入るのって結構大事かなって思ってます。おもちゃを買う時って、遊び方を重視して買うよりも、特に小さい子供って「あ、これかわいい!」ってなって商品に近づくじゃないですか。そこで触ってみて遊び方を知るって感じなんで、見た目として何を触りたいと思うのかというのは一番大事にしてるんです。

その分システムを考えるのに時間がかかっちゃうんですけど(笑)。何をやりたいかの前に何を触りたいかっていう考え方ですね。

 

村上 ゲームの作り方にルールはないから、それも一つの正解だと思うけどね。要は面白けりゃいいわけで。

 

中西 はい、そこからシステムを考える上で色々とアイデアをメモしていきました。

私が大事にしてるのは独り言のような内容でも全部文字に起こすことなんです。例えば、何かアイデアが出たときにそれをメモして、そこに矢印を引いて自分でツッコミを入れて、その時の思考を全部書き留めるんです。

企画が迷走して行き詰った時も、メモを見返せばその時の思考やテンションまで全部振り返れるので、その時の感情になってもう一度考え直すんです。

結局「Beeeeee Bearful」も試行錯誤したんですけど、回り道した挙句に結局一番最初の案に落ち着きましたね。

 

村上 企画あるあるね。結局最初の直感が一番正しかったってやつ。

 

中西 奥の深いゲームにしようと思ってあれこれ要素を足していくと複雑になって対象年齢がどんどん上がっていくんですよね。どうしてもカードが増えたりサイコロが増えたり。

 

村上 アイデアを足し算にすると複雑になるしプレイヤーとしても覚えなきゃいけないことが増えるばかりで分かりにくいものになるよね。掛け算にすると原型は変わらずに中身が濃くなる。

 

中西 そうなんですよね。だとすると最初のシンプルなルールが一番スッキリしていて遊びやすいんじゃない?てなりますね。考えて形にするというよりはパッと思いついて形になる方が多いですね。

 

村上 直感で動くタイプね。

 

中西 完全にそうですね。ちなみにあのゲームって、一つの枠の中に三枚までパネルを押し込める構造になってるんですけど、あれってウルトラファクトリーで木工のレーザーカッターの使い方を教えてもらってるときにたまたま思いついたものなんで、「あ、それできるんじゃない?」ってなって、その場の思い付きで広げていきました。

考えようとすると逆に思いつかないですね、直感型なので。

 

村上 直感ってことは、つまり日頃の観察の結果でネタが蓄積されてるってことだね。脳ミソの中身がゼロの状態では直感も何もないから。

発想っていうのは記憶の中にある情報Aと情報Bを瞬間的に編集して創出することだから、直観力=観察力とも言えるよね。

 

中西 意識して観察するとしんどいんで、なんか楽しそうだなーくらいの感じで物事を見るようにしてます。

 

村上 楽しいって思える条件って何?

 

中西 楽しいにも色々あるんですけど、例えばアンパンマンのDIYを出してるところがあって、インパクトドライバーを使う体験をしてる子供がいたんですね。でスイッチを入れるとドライバーの先のアンパンマンがクルクル回るんですけど、それを見てるだけでも楽しくて子供たちが夢中になってるんですね。

気持ち良さを求めて一生懸命やってるっていう楽しみもあれば、その過程そのものを楽しむ子がいたり、楽しいといっても色々あるんじゃないかと思いますね。続けたいって思えたらそれは楽しいってことなんじゃないですか?

 

村上 何があったら続けたい?

 

中西 普通に気持ち良さじゃないですかね。私はあんまり結果とかを求めてないんですよ。

単に気持ち良さというものを突き詰めていったら結果的に面白いものが出来上がったって感じになりますね。

 

村上 さっきのアンパンマンのDIYの場合「できた!」っていう成功体験が大きいんだと思うんだけど、その成功体験の前に「やってみる」ってことが必要なわけだよね。インパクトドライバーって普通だったら怖いから触らない。でも触りたくなるのはアンパンマンっていうキャラクターの力があったからなのかも知れないね。

 

中西 ていうか既に何人かの子供たちが体験してる様子を外から見てるんで、その姿を見て私もやりたいって思うのかも知れないですけど、そこの社員の方たちのプレゼンの盛り上げ方とかオペレーションによるものも大きいと思います。

 

村上 おもちゃショーはネタの宝庫だもんね。メジャーなものもあるけどマイナーなものの方が得られる刺激が大きい。

ゲームでいうと、東京ゲームショウよりもビットサミットの方がクリエーターとしては刺激があって楽しいと感じるし。ソフトの展示が中心だけどハードというか新しい実験的なインターフェースやデバイスの紹介が多いからここから更に発想が広がるよね。枯れた技術の水平思考を体現したような作品が多いというか。

 

中西 すごいヘンなコントローラーとかたくさんありましたもんね。

 

村上 でっかいハサミの形をしたコントローラーとか、シャンプーのボトルの形をしたものとか。

これどうやって遊ぶんだ!?ってなるけど触ってみて感動して納得する。

 

中西 今やってる卒業制作では、その辺の見た目とか触り心地とか、今まで作ってきたものを総動員して、

とにかくコミュニケーションそのものの面白さを追求できるようにシンプルなものにしようと思ってます。

 

村上 コンポーネントが多いと、箱は大きくなるし難しそうな印象になるし、もっともプリミティブな遊びを突き詰めていって、そこに遊びのバリエーションを足していくっていう形で作れるといいね。

 

中西 何度か言われてきた「モノ」ではなく「コト」のデザインという点が重要ですね。見た目の美しさはもちろん重要ですけど、それ以上に「体験をデザイン」するんだって意識してます。

 

村上 そのコトとして印象に残ってるゲームってある?

 

中西 うーん、『ナンジャモンジャ』じゃないですかね。

 

村上 あれは何であんなに面白いんだと思う?授業でも『ナンジャモンジャ』のゲーム性分析をしたけど、

誰がやっても5秒でルールを覚えられて、しかも絶対盛り上がるよね。

 

中西 盛り上がりますね。普遍的なネタだけじゃなくて身内ネタでも盛り上がれるっていう幅の広さですかね。

ゲームのシステムっていうよりは、その途中の会話が面白いのかなって思います。発想力とか、それに対する周りのリアクションとか。

 

村上 説明文もなく、パラメータ設定もなく、キャラクターの絵が描いてあるだけでUIも何もない。

 

中西 あれって勝ち負けとかどうでもいいじゃないですか。騒げたらそれでいいっていうか。

あとは今流行ってるのは『キャット&チョコレート』ですね。あれも想像力が問われるアナログゲームですね。

 

村上 『ナンジャモンジャ』に近い思考性はあるよね。提示されたお題に対して何かを考えて、それを聞いた周りの人が「あ、この人こういう人なんだ」って分かる。このあたりからじゃないかな。コミュニケーションゲームっていう形で爆発的に売れ出したのは。

 

中西 元々は人狼かTRPGあたりですよね。

 

村上 TRPGは自分が中学生くらいの頃に流行ってたな。今はクトゥルフ神話が人気だけど、当時はTRPGの元祖となる『D&D(ダンジョン&ドラゴンズ)』っていうのにハマったね。

でも当時は設定もルールも全部自分で作りたかったから、マニュアル作りも含めて友達の家に泊まり込んで何日も徹夜してずーっとこればっかりやってた。勉強は…しなかったな。

 

中西 そうなりますよね。アナログゲームというかコミュニケーションゲームって、相手がその場にいるっていうのが強みなんでしょうね。

 

村上 任天堂がやってきたことって、実はソレなんだよね。ネットで繋げるんじゃなくて、相手と一緒にいるとか、対話をするとか、家族のコミュニケーションツールにするっていうところ。

ファミコンなんて最初から「ファミリー」って名前がついてるしね。元々ゲームボーイも通信ケーブルで繋ぐものであって、相手と顔を合わせながらその場を共有する喜びが重要になってた。逆にオンラインゲームってどう思う?

 

中西 周りにネットゲームにハマってる子はいますけど、でもSkypeで会話しながら遊ぶので、やっぱり直接のコミュニケーションは重視してますよね。

知らない人と繋がる類のオンラインゲームであれば、単に自分の強さを見せつけるというのが大きな目的なのかと思いますね。

 

村上 MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game-大規模多人数同時参加型オンラインRPG)だとそうなると思うけど、『スプラトゥーン』の場合は44という人数設定が心地良いのか、知らない相手のはずなのにヘンな連帯感が生まれて、新鮮な楽しみがあったな。個人的には10年に一度の名作だと思ってる。

で、また枯れた技術の水平思考の話に戻すね。アナログゲームの場合、何が「枯れた技術」なのかというと、「コミュニケーション」になると思うのね。ここに「意味不明なキャラクター」や「あり得ない状況」が組み合わされて『ナンジャモンジャ』とか『キャット&チョコレート』が生まれたと。

その面白さによってコミュニケーションの面白さがより引き立っていく。

 

中西 人間の本能的な部分での「楽しい」っていう感覚は今後も変わらないと思うので、枯れた技術の水平思考という考え方も変わらずどんどん面白いものが生み出されていくんだろうなと思いますね。

相変わらず私は直感で面白いと思うものを作っていきますが。

 

村上 結局はそれが全てなんだけどね。全ての物事から面白いを探せる観察力が大事。

 

中西 私は常に「死ななきゃセーフ」の考え方で楽しく能天気に生きてます。明石家さんまの「生きてるだけで丸儲け」って言葉もありますけど。

ポケモンのロケット団の歌で「くよくよタイムは5秒でじゅうぶん。そんなことより明日のためのご飯です」っていうのがあるんですよ。このフレーズが物凄く好きで、悩む時間を切り捨てて何か新しいものを作らないと時間が勿体ないって思っちゃうんですよね。

 

村上 そのシンプルさが幸せの秘訣なんだろうな。軍平さんが枯れた技術の水平思考って言ってるのは結局情報の蓄積であって、「そういやあんなのあったな」ってすぐに引き出せるようになってる。

あとは本能に正直。『ウルトラハンド』のときに「スカートをめくりたい」っていうのも、『ラブテスター』で「あの女の人とお近づきになりたい」っていうのも全部自分の本能に従った考え方。あとはそこに何をくっつけたら良いんだろうって考えた時に如何に周りを見るか。

枯れた技術っていうのは言わば過去の経験に基づく記憶であって、水平思考は「今のもの」なわけだから、どれだけ普段からアンテナを張り巡らせて周りを観察してるかが問われるよね。で、「これだ!」って言ってその二つを合成することで全く新しい価値のあるものを生み出すことになる。

 

中西 最初の授業でそれを言われて確かに納得したんですけど、やっぱり最初は絵を描きたくてこの大学に来たので、観察力が大事だと言われても「難しいなぁ」くらいにしか思ってなくて。

でもこの職に進みたいって決めると自然に周りをじっくり見れるようになるもんですね。意図せず出来てる感じがします。

 

村上 戦闘態勢に入れるかどうかなんだろうね。ただボーっと日々を過ごすんじゃなく。

 

中西 昔は視野が狭かったんですよ。自分の考え以外は全部良くない、みたいな。

でもプランナーを目指すようになってからは「あ、こういう考え方もアリなんだ」って思えるようになってきましたね。

 

村上 遊びを知ることによって視野が広がるっていうか、心が広くなるっていうか、枯れた技術の水平思考によって面白いゲームを作ろう、ではなくて人生を面白くしようってことだね。

というわけでインタビュー収録お疲れ様でした。

 

中西      ありがとうございました。

 

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