- 2021年1月17日
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ゼミ通ヒーローズvol.26 「岩本穂ノ実&伊藤舞とデジタルゲーム『へんしょくトラベラー』について語る」の巻 Part2
※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。
今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十二期生で現3年生の岩本穂ノ実さんと伊藤舞さんの合作となるデジタルゲーム『へんしょくトラベラー』について語っていきます。
ゲーム制作中の岩本穂ノ実さん(左)と伊藤舞さん(右)
村上
二人でチームを組んだのは経緯は?
伊藤舞(以下伊藤)
私は元々誰かと組みたかったんですよ。ただ前期が始まった時、ゼミのみんなは既に一人でゲームを作るって言ってどんどん企画が進んでて…、そんな中私は完全に孤立して「え、マジか!」ってなって(笑)、そこで岩本穂ノ実様からの救いの手が(笑)
岩本穂ノ実(以下岩本)
そりゃそうですよ。こんな絵のうまいやつ放置するなんて皆どうかしてるぜって思いましたもん。早いもの勝ちや!て思ってすぐ声をかけました。
村上
そうだったね。3年になって初回のゼミで「さあこれから始めよう!」って言おうとしたらもうみんな春休みの間に企画を固めてたっていう。一人でやることに拘るのは何だろうな。みんなプライドが高いのかな。
岩本
私にプライドがないって言いたいんですか(笑)
伊藤
(爆笑)
村上
キミはすぐに人の揚げ足を取るな(苦笑)
伊藤
(爆笑)
岩本
そういう性格なんで、許してください(微笑)
伊藤
もし私一人やったら何作ってたんやろ?プログラミングとか無理やしな。
村上
ちなみに今回はUNITYの習得を含めて完成まで5カ月くらいだったかな。ゼロから企画を考えて、UNITYを覚えて、ビジュアルの制作をして、レベルデザインまで含めて全部で5か月。なかなかえげつないスケジュールだったね。
岩本
はい、死ぬかと思いました(笑)
毎週分からんとこ出てくるし、ずっとUNITYとにらめっこしてました。最初はキャラクターが動いただけで嬉しくて、いちいち伊藤舞に動画を送ってお祭り騒ぎ(笑)
村上
アナログスティックで色相環をコントロールできたときとか、テンション上がったよね。
岩本
あれ自体は割とすぐ実装できたんです。でもそれによって主人公の体の色を変える仕様が難してくヤバかったです。
7割くらい全体のシステムを組んで、その後に主人公の色替えを実装しようとしたんですけど、やり方が全然分からなくて、プログラミングの先生に相談しに行ったら「全部見直した方がいいね」って言われて。
村上
最初から作り直し…?
岩本
しましたっ(笑)
村上・岩本・伊藤
うふふふ(苦笑)
村上
その、途中で全部捨ててゼロから作り直した期間を含めて5か月?
岩本
そうです。泣きそうでした。
村上
なるほどね。じゃ今度はデザインの話をしていこうか。デザインといえば伊藤舞。
伊藤
あ、はい。ありがとうございます。
村上
今回の場合、いつものイラストとは違って、絵がうまけりゃいいってもんじゃない。
伊藤
今回はカメレオンのキャラクターなんですけど、走るキャラでもあるので足が発達していて、風を受けてるような髪型だったり、カメレオンらしくもあり、しかも宇宙が舞台なのでそういう要素も入れなきゃいけないんです。アクションゲームなので動きも考えて設計しなきゃいけなくて。
主人公となるレオン君のイメージ
村上
最初のラフスケッチを見せてもらったときに、それは「イラスト」であって「ゲームキャラクターになってない」ってダメ出しをしたよね。
伊藤
実際に村上先生にも描いていただいて、色々参考にさせていただきながら検討していきました。
村上
アクションゲームは静止画でキャラクターを見せるわけじゃないので、キャラクター画像を真っ黒に塗りつぶしてもシルエットだけでキャラ立ちするかどうか、とか、そもそも何をしてる絵なのかがハッキリ分かるようにしないといけない。今回のゲームではキャラクターの立ち位置が基本固定だから、そこまでシルエットに対して神経質になることもないのかなって。ただカラフルなビジュアル設計だし、その中で主人公の色が変わったことを視認させなきゃゲームにならないし、パッと見たときに一番面積の広い部分の変化をしっかり表現しないとゲームとして問題が出てくるのでね。だから出るとこ出して引っ込めるところ引っ込めてっていうメリハリは重視してたね。
伊藤
そうですね。頭の形のカーブとか、頭と体のバランスとか、かなり修正しましたね。
岩本
黄金比を意識して何度も描き直してたよね。
村上
絵を描くだけじゃなくて、今回伊藤にとっての試練だったのは、パレットの管理かな。
主人公のボディは状況によって色が変わるけど、当然変わらない部分もあるわけで、そういう画像データとかパレットデータの管理って、今まで描いてきたイラスト作品では考えたこともなかったと思うし。
伊藤
その辺は岩本さんと常に検証を重ねながら効率の良いデータ作りの方法を考えていきました。あとは、主人公が背景に埋もれないようにするとか。
岩本
最初のバージョンだと、背景画が賑やかだったから主人公が埋もれちゃってたんよね。敵の色を見てそれに対して自分を何色にするかっていう遊び方がしにくくなってたよね。
村上
アニメーションの設計も今回が初めて?
伊藤
そこは岩本さんの方でラフのアニメーションを作ってもらってUNITY上で動かしていって、そこでOKになった動きに関して私が清書していく流れで作っていきました。
岩本
UNITY上で作画枚数とか速度は全部調整してたので、ゲーム制作を止めることなく同時にイメージを固めていくことができてましたね。
村上
ワークフローとしても効率が良かったよね。岩本が企画書と画面遷移図を作りながら、同時進行で伊藤が世界観のイメージボードやキャラクターデザインのラフスケッチをまとめていって、ダミーデータが上がったらシステム設計をして実装していって…と一切の無駄なく作業が進んでて、毎週のゼミの時間に着々と形が出来上がっていく様子が伺えた。
岩本
確かに、初めてデジタルゲームを作る割にはかなりスムーズでしたね。
村上
あとは、ゲーム会社の方にも講評をしていただいたけど、色々指摘を受けてみてどうだった?
岩本
かなり突っ込まれましたけど、全部その通りだなって思いましたね。例えば、自分の色と敵の色が補色の関係になったことをゲーム的に分かりやすく伝える方法として、一瞬コントローラーが振動するとか、主人公が発光するとか。そういう具体的なアドバイスもいただけて勉強になりました。
村上
アーケードゲームを作ってる人たちだったから、ゲームデザインについては凄く厳しいよね。アーケードゲームの場合、最初に100円を入れないとゲームが動かないわけで、ある程度プレイサイクルが理解できて「面白いぞ!」ってなってきたときにゲームオーバーになって「コンティニューしたければ100円入れてね」となる。最初に100円入れるわけだから、プレイヤーの立場からすると、「それなりに楽しませてくれなきゃ怒るぞ」ってなる。ま、それは当然だよね。
そういう姿勢でゲームを作ってる人たちだから、アドバイスの内容としては厳しいようで実は当たり前のことしか言ってない。
もっと根本的なところでいうと、「初めてこのゲームで遊ぶ人にとって『色相環』という要素がハードルになってる」っていう点。色に興味のないプレイヤーが色を面白いと思わせるためにはどんな導入が必要なのか。今回は無料のゲームだから、「遊んでみて面白いと感じたら続けて下さいね」で済むけど、もしこれがアーケードゲームだったらそういうわけにはいかないよね。
岩本
ほんとその通りだと思います。
村上
今年の前期はゼミも全てリモートだったから、完成までの過程で結局一度も直接会うことなく作業が進んでいったよね。
伊藤
私たち大阪勢なので、一日だけ設けられた登学日も出席できなかったんですよ。
岩本
あの日は京都の学生しか大学に行けなかったしな。ZOOMでは二日に一回は打ち合わせをしてたので、本当に一回も会いませんでした。
村上
デジタルゲームだからできたんだろうね。
岩本
アナログゲームのメンバーはかなりしんどかったんじゃないですかね。テストプレイどうすんねんって思いましたもん。
伊藤
コミュニケーションはかなり密にとってました。連絡取れなくなったら終わるから(笑)
岩本
半年間ほとんど一歩も外に出ませんでした。完全に引きこもりでしたね。
村上
今の3年生は、授業はZOOMの方が良いって話してる学生が多いね。特に男子なんか8時50分まで寝てて9時の授業を受けられるし。
伊藤
私たちは家が遠いですしね。あと多少体調が悪くても授業に出られるから、そういう点では良かったですね。
村上
それ考えると、ZOOM授業なのに欠席する人の状況がよく分からんよね。一体何が起こってるんだろうって思ってしまう。
伊藤
時間の感覚がなくなって朝までゲームしてたとか。
岩本
腹痛くて数時間トイレから出られないとか。
後期から対面になったけど、ゼミだけ対面にして、それ以外の授業は全部ZOOMでええんちゃうかなって思います。あ、マズいこと言いましたかね。ここカットしといてください。
村上
わかった。カットしとくわ。
伊藤
でも、ZOOMでも対面でも関係なく作業は出来て、結果完成したので良かったです。
岩本
自分でいうのもナンですけど、私たちって基本真面目なんだと思うんですよ。
連絡だったりワークフローだったり。そういう基本的なところがキッチリしてなきゃ嫌だと思うのは性格の問題なんですかね。
村上
今、「性格」って言ったけど、ゲーム作りに限らず創作の良し悪しって、技術やクォリティじゃなくて性格なんだなって思うことがあるのね。絵が下手だったとして、そこで「悔しい」って思えたら勝手に練習してうまくなるだろうし。パクるのがうまい人がいたら、数をこなしていくうちに自分なりの表現手法が見えてくるだろうし。
伊藤・岩本
(激しく頷く)
村上
技術は高いけどやる気がない人もいるしね。だからただ単純に「作りたい!」って思ってるかどうか。あとは我々がやってることはゲーム作りなので、「お客様に喜んでいただく」っていう当たり前で謙虚な姿勢があるかどうかが重要だと思う。
今年の3年生の作品を見てても感じるけど全員物凄くレベルが高いので、「性格」+「組み合わせ」によるものって大きいのかなって思うね。「隣の席の人がレベルが高いけど、絶対こいつにだけは負けたくない」っていう気持ちが物凄く高くて。
伊藤
本当にみんな負けず嫌いだから、みんなで一緒に楽しくゲームやったりしますけど内側の闘争心はかなり凄いですよね。
岩本
たまに怖くなるけど(笑)でも負けたくないよな。
村上
わかるわかる。君らの生態を外から観察してる分にはかなり面白いんだけどね(笑)
手取り足取り指導しなくても勝手に切磋琢磨して高め合う環境が作れたから、それは凄い幸せなことだな。
というわけで、今回の『しょくトラ』の紹介はここまで。
今後はデジタルとアナログの境目はどんどんなくなっていくだろうし、遊びと学びの境目もなくなっていくだろうし、そんな多様性に満ちた世の中で何を表現するのか、みたいなことを考えながら次年度の卒業制作に臨んでもらえればなぁと思います。
伊藤
はい、ありがとうございます。
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