- 2021年1月16日
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ゼミ通ヒーローズvol.26「岩本穂ノ実&伊藤舞とデジタルゲーム『へんしょくトラベラー』について語る」の巻 Part 1
※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。
今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十二期生で現3年生の岩本穂ノ実さんと伊藤舞さんの合作となるデジタルゲーム『へんしょくトラベラー』について語っていきます。
村上
今回の対談相手はゲームゼミ3年生の伊藤舞さんと岩本穂ノ実さんの二人です。二人は以前も「ゼミ通ヒーローズ」のゲストとしてピックアップしたので、素性についてはこちらをご覧ください。
ゼミ通ヒーローズvol.11 伊藤舞と「Japan Expo」について語るの巻
https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=105036
ゼミ通ヒーローズvol.13 岩本穂ノ実と「ゲーミフィケーション」について語るの巻。
https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=106014
岩本穂ノ実(以下岩本)
今回私たちは『へんしょくトラベラー』、略して『しょくトラ』というゲームを制作しました。私の担当はプランニング兼プログラミングでした。
伊藤舞(以下伊藤)
私は岩本さんとペアを組んでデザイナーとして制作を行ないました。
「しょくトラ」のゲーム画面
村上
では『しょくトラ』のゲームの内容を聞かせてくれるかな?
岩本
一見普通の2D横スクロールアクションゲームなんですけど、簡単にいうと「補色で捕食せよ」というキャッチコピーが示す通り、遊びながら補色の関係性を覚えられるアクションゲームになっています。
伊藤
プレイヤーが操作するのはカメレオンをモチーフにした主人公キャラクターで、色がついた色んな虫を捕食していきます。このとき、虫の色に合わせて自分の体の色を変えながら捕食していきます。
岩本
PlayStation4のアナログスティックを使って、左のスティックで自分の体の色を変えて、〇ボタン入力で舌を伸ばして虫を食べます。ジャンプがR2ボタンっていう変わった配置になってるんですけど、ボタンを押している間大きなジャンプになります。
アナログスティックの回転操作と色相環UIの色選択が一致していて、スティックを回すことで主人公の体の色が変わっていきます。それで、敵の色の補色にあたる色にして敵を食べます。
村上
補色ではない色の敵を食べたらどうなる?
伊藤
その場合はペナルティとしてちょっと画面が止まってしまいます。
岩本
おいしくないものを食べたために主人公が「おえ~っ!まずい!!」ってなって暫く動けなくなるという設定です。これによってゲームオーバーになったりはしないんですけど、単にタイムロスとなってスコアが下がります。
村上
内容的にはすごくシンプルなものになってるけど、その中での面白いポイントとは?
岩本
結構脳みそフル回転させて遊ぶゲームなので、次々にやってくる敵に対して「この色に変えなきゃ!」って焦るところですね。
村上
初めて試遊した時、操作が難しくてジャンプすらまともに出来ない状態だったんだけど、
二回目のプレイの時には操作に慣れてスムーズになって、やればやるほどうまくなっていくことを実感できるゲームになってたね。よくあるパターンとして、ゲームの内容を分かってる人間にとってちょうどいい難易度にチューニングしていく傾向があって、だから初めてのプレイの場合だと全然満足に動かすことができない場合が多い。
伊藤
これでもかなり簡単にしたんですよ。
村上
伊藤は試遊したときどうだったの?
伊藤
最初はもうボロボロでしたよ。1ステージ目でもろくに飛ぶことすらできずに…。
でも最終的には最後のステージをAランクでクリアできるようにはなりました。
岩本
え、まだSランクちゃうの?
伊藤
いやいや、最後のステージでSランクは無理やって。
岩本
最後の方に三段ジャンプをしないといけない場所があって、これうまくいったらめっちゃ気持ちいいですよ。
村上
今回は色相環をモチーフにしたゲームシステムってことだけど、実は色を使ったゲーム企画はほぼ毎年出てくるんだよね。途中で企画が消えることが多いんだけど。
岩本
あ、そうだったんですか?
村上
なんかパズルゲームとして企画する場合が多くて、そうなると作業ゲーになりがちで。要はこの色に対してこの色を割り当てろ、って感じで答えが固定されるから、「そんなの面白くない」って却下してしまう。でも今回の作品はそこにアクション要素が入ることによって、覚えるだけじゃなくて反射神経を要する部分がかなりアツかったから企画にGOを出した。
さてさて、そんな『しょくトラ』がインディーズゲームのサイトでも紹介されたとか。
岩本
そうなんです。インディーズゲーム投稿サイトの「Freem!」からゲームをダウンロードしていただけるようにしています。「もぐらゲームス」っていうサイトで管理人さんから高く評価していただいて、記事も掲載していただきました。
村上
もうダウンロード数とか出てるの?
岩本
今朝は93でした。毎日チェックしてます。
伊藤
もう少しで100やね!みなさんぜひ遊んでみて下さい!
岩本
PlayStation4のコントローラーでしか操作できないのがネックになってて…。もしキーボード操作のゲームにしてたらもう少し数字が伸びたかもしれないですね。
村上
でもあのインターフェースはアナログスティックしか考えられないしね。あるとしたらマウスを使うか、カーソル設定にしても6色選ぶのに6方向だから…ちょっとキーの割り当てに無理があるかな。
伊藤
でも元々この企画は配信向けに作ってないっていうか、学科展(3年生の学生作品展)の会場で直接遊んでいただくことを想定して作っていたので、PlayStation4のコントローラーでの操作を実装してたんですけど、学科展がオンラインになるということで、途中から配信を決めました。
村上
学科展はコロナの影響で残念ながらwebでの公開のみとなったけど、そこは単にサムネイルが並ぶだけで、そのサムネイルをクリックするとダウンロードサイトに飛ぶってことが分かりにくくなってたね。
岩本
結果、Freem!さんの方でもピックアップはしてもらってたみたいですよ。新着ピックアップとかおススメゲームとか。アクションゲームの枠でもおススメゲームとして紹介されてましたね。
村上
何が評価されたんだと思う?
伊藤
多分ですけど、Freem!さんって元々アクションゲームが少ないから目立ったのかもですね。
岩本
サムネの絵のクォリティと、あと補色の奇抜さが良かったのかなって個人的には思ってます。
村上
確かに、コメントの所にもその2点は書かれてたね。ここからどう広がっていくかが楽しみだね。
岩本
この記事を読んだ人、絶対ダウンロードして下さい(笑)
村上
そういうの大事。あとはウチの広報課の努力次第。
岩本
そうですね。在学生が全員ダウンロードしたら凄い数になるのでぜひ(笑)
伊藤
少なくとも学内で周知したいですね。
「Freem!」
https://www.freem.ne.jp/win/game/24210
「もぐらゲームス」
http://www.moguragames.com/entry/freegames-in-progress-2020-11/#title02)
村上
そもそもこの「ゼミ通ヒーローズ」の連載を始めたのも、キャラクターデザイン学科にゲームゼミっていうのがあることすら学内で知られてないし、実は面白い取り組みをたくさんやってるのに勿体ないなって思って始めたことだしね。
さて、今度はこのゲームの企画の経緯を聞かせてもらおうかな。
岩本
そうですね。1年生の頃から補色をテーマにしたゲームの企画を考えてて、学科展に向けてこれを形にしたいなと思って。でもそのときはアドベンチャーゲームで考えてたんですよ。
当初は補色というか、例えばオレンジ色を使えば部屋が暖色に染まって温度が上がるとか、色の持つイメージを使うことによって状況がどんどん変わっていくような、それでギミックを解いて物語を進めていくゲームシステムでした。でも企画書を村上先生に見せた時にめっちゃダメ出しされて(笑)
村上
「作業ゲー」「覚えゲー」だって突っ込んだね。
岩本
それと、単に物量勝負になるとも指摘されました。
村上
覚えゲーにしないようにしたら、ありとあらゆる状況で色ごとに違うイベントを設計しないとゲームとして成立しなくなるから、そうなると作った労力に見合うだけの面白さが得られるのかと。で、正直どうかなって思ったわけ。
岩本
二択で条件を出されたんですよ。ゲームのクォリティを下げて発想の奇抜さを売りにするのか、展示を意識してビジュアルを重視して作っていくのか。どっちかに絞って気合入れて作れって言われて。大人の事情を突き付けられて「おもんねー」って思って違う企画に切り替えました(笑)
村上
あの時は展示会までの限られた期間があって、この少ないリソースの中でUNITYもゼロから覚えつつビジュアルとシステムの両方で満足のいくものにするのは厳しかろうと思って。そしたら絵が描ける伊藤を連れてきて「合作でやります」っていうから、それならOKだよと。
岩本
色々ダメ出しされる中で、過去に私が書いた企画書を見返してたら、その中に今の『しょくトラ』に近い内容の企画書を見つけたんです。これを取り入れて「補色で捕食せよ」っていうキャッチコピーを思いついたあたりからどんどんイメージが広がっていった感じですね。
村上
そこは歴代ゲームゼミの先輩方がよくやってきた、言葉遊びと駄洒落と親父ギャグからゲームの構想を膨らませるやりかたを踏襲してるのね。
岩本
完全にそうですね。
伊藤
ブログでもここは注目されてたもんね。駄洒落かよ!って。
Part2に続く