キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol 28 飯田遥歩と「脱出ゲームについて語る」の巻 Part1

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「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

 

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十三期生で現2年生の飯田遥歩さんと、ゲームゼミの恒例プロジェクトとなっている「脱出ゲーム」について語っていきます。

 

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ゲームゼミ2年生副リーダーの飯田遥歩さん

 

 

村上

まず、定例となった質問から。どうしてゲームゼミに入ったのか、そこから聞いていこうかな。

 

飯田遥歩(以下飯田)

私、東京の出身なんですけど、東京から出たかったんですよ。あっちは便利なんですけど、なんかつまらなくて。で、関東以外でゲームを学べるところを探したら最初にこの大学のキャラクターデザイン学科がヒットしたんです。で、京都いいなぁって思って。あとはキャラデの中でコース分けがされてないところも色々学べそうで魅力があって。

 

村上

最初から希望はゲーム一本?

 

飯田

そうですね。ずっと昔からゲーム制作に興味があって。

男兄弟に囲まれて過ごしたのでゲームに馴染んでたのもあるんですけど、アクションゲームよりは『UNDERTALE』とか『ワンダと巨像』みたいに、じーんとくるようなストーリーが入ってるゲームに興味が出てきて、だんだん作る側に回りたいなって思い始めました。

 

村上

京都なら芸術大学が集中してたり任天堂のお膝元だったりと、土地柄は恵まれてるかもね。で、主にやりたいのはデジタルゲーム?

 

飯田

そうですね。どっちかというとデジタルゲームです。

 

村上

うちは最初にアナログゲームを作るところからあそびの本質を学ぶというやりかたをしてるわけだけど、そこで今回飯田は「脱出ゲーム」の制作の中で素晴らしいリーダーシップを発揮してくれたから、今回は代表としてインタビューを録らせてもらおうかなと。

 

飯田

いえいえそんな、ありがとうございます。

 

村上

というわけで、今回の脱出ゲームの内容を説明してくれる?

 

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「カミムラ研究所脱出ゲームからの脱出」のポスター

 

飯田

はい、今年のゲームの設定としては、人口の臓器や手足を開発している研究所が舞台となっていて、プレイヤーはその研究所の助手が開催している脱出ゲームに参加することになりました、というところからストーリーが始まります。

 

村上

助手が開催する脱出ゲームね。

 

飯田

はい。ゲームが進行していくと、途中から助手よりもそこに隠れていた博士の存在が強くなってきて、博士の登場から物語が急展開していきます。最終的に助手は全ての企みがバレて、施設もろとも爆破しようとするので、それを阻止して脱出するという展開になります。

 

村上

サブタイトルの「脱出ゲームからの脱出」がメタ的な表現な上に意味深で面白いね。

 

飯田

助手が、博士の残したある謎を解くために、謎解きの好きそうな人を集めようと偽の脱出ゲームを企てるんですけど、物語の途中でそれが実は脱出ゲームではなかったことに気付く、という展開ですね。脱出ゲームという企画から脱出するための脱出ゲームになってます。

 

村上

脱出ゲームに慣れた人をいかに陥れるか、てことね。

 

飯田

はい。ゲーム本編自体はオーソドックスな脱出ゲームの構造ではあるんですけど、途中に物語としての驚きもうまく組み込めたかなと思いますね。脱出ゲームの案内役であり物語を進行させるキャストが実は黒幕だったっていう裏切り系のギミックとか。

あとはアルコール消毒を利用したギミックみたいに、コロナ禍だからこそ生まれたアイデアもありましたね。ゲーム開始の前にプレイヤーに手を消毒をしてもらうんですけど、実はそれが毒でした…的な展開が後から明らかにされたり。

 

村上

今やどこへ行っても入口で義務的に手指消毒を促すのが当たり前になってるけど、まさかそれが物語のギミックになってるとは誰も思わないもんね。

 

飯田

そこは思った以上にウケてたので良かったです。

 

村上

プレイヤーとしては、例年学内の学生、それもキャラクターデザイン学科の学生だけで定員が埋まってしまうんだけど、今回は一般のお客様とかコアな脱出ゲームのファンの方が大勢来てたよね。

 

飯田

そうですね。参加者の募集を開始した次の日に応募フォームを確認したら、キャラデの副手さん以外のお客様が全部一般の方だったんですよ。その後からは他学科とか他大学の学生でほとんど埋まりました。キャラクターデザイン学科の学生はゲームゼミの先輩以外ほとんどいませんでしたね。

 

村上

脱出ゲームのプロジェクトを始めてかれこれ6年くらい続けてるけど、ようやく外部に認知され始めた感じだね。ねぶた、お化け屋敷に続くうちの大学の名物企画にしてやろうかな。

でも今回コアなファンが来られたということは、当然ながら厳しいフィードバックもあったということかな。

 

飯田

ありましたね。アンケートを見たら、謎解きとストーリーの導線が弱いとか、かなりの理解力がないとストーリーの読み込みが難しいとか。

 

村上

物語として表現するんじゃなくて、謎解きから得られる断片的な情報を得て、そこからストーリーの流れや世界観を感じ取るようなナラティブとしての演出は結構盛り込まれてたと思うんだけど、そこの説明が不足しててお客様の理解に結びつかなかったということなのかな。

 

飯田

そうかもしれないですね。実際制限時間がある中で謎解きのみに集中してしまうと、その外側に広がる世界観とかストーリーの部分まで気持ちがいかないというか。助手と博士の関係性がヒントになるような展開が用意出来たら良かったかなって思います。

 

村上

それは謎解きの内容で、てこと?

 

飯田

謎解きのギミックもですし、あとは小道具であったり、雰囲気作りそのものも含めてですね。

 

村上

スケジュール管理の問題なのかな。企画のスタート時はかなり順調で、かつてない速度でゲームの方向性やストーリー設定が決まってたんだけど、年末あたりで一人一人がストーリー設定の矛盾を正そうと細かいところに拘り出したことが原因かもしれない。

 

飯田

細部の設定を考えすぎてる人もいれば時間に対して危機感がない人もいたり、難航した要因は色々ありましたね。

 

村上

初めての通しリハのときに、馬場(ゲームゼミ2年生馬場歩愛さん)が視力検査のギミックを物凄く丁寧に作って来てて、その仕上がりを見たときに、「あ、ここまで精度の高いものを作る必要があるんだ」って、そこで温度差に気付いた人はバリバリ働くようになってきたよね。

 

飯田

いやもうほんとあれはお手柄でした。すごいクォリティですし。裏方全般を通してあの人の頑張り具合にはもう頭が上がらないです。

 

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村上

あと今回目指したポイントは?

 

飯田

研究所っていう舞台に合わせてプレイヤーの役職が医療系の専門家としてそれぞれ割り当てられるんですけど、謎解きギミックの内容も全部医療系の要素で統一した形でアイデアを出していきました。

 

村上

プレイヤーに医療の専門知識がなくても、ゲームとして表現が簡略化されてるし、それぞれの役職が活かせる活躍の場を散りばめてあるから能動的に参加できるようになってたね。

 

飯田

はい。知識がなくても全員が楽しめるようにバランスを調整するのは難しかったですけど面白かったですね。今年度のゲームゼミはプランナー志望の子が多くて、最初の企画会議でいきなり世界観も設定もどんどん形になっていって、あまりにスムーズに進んだのでそこは苦労はしなかったですね。

 

 

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企画内部でのテストプレイの様子

 

 

村上

ゲームプランナーの中でも割とシナリオライター希望の学生が多いのも今年のゼミ生の特徴かな。

 

飯田

そうなんです…けど…、それが災いして、ギミックを組み込もうとした時に細部の矛盾にブチ当たって、そこから解消されないとなかなか企画が先に進まないという…。

 

村上

企画あるあるだね。暫定的な仕掛けで構わないからエンディングまでの筋道を立てて、一通りのゲーム進行がまとまってから細部の矛盾を解消させてくれって話もしたんだけど、やっぱり実作業になると細かい所が気になるんだね。脱出ゲームで一番大事なのはお客様のテンションのコントロールだから、そこを中心に考えていく形で軌道修正をしないといけないんだけど、でもこの感覚って、何本かゲームを実際に作らない限り理解できないんだよな。3年生になったらそれぞれがゲームを作ることになるから、そのとき「このゲーム企画の中で一番大事なところはここ」とか「こんなところに拘ってる場合じゃない」とかっていう感覚も養われていくんだと思う。

 

Part2に続く

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