キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズvol.28 飯田遥歩と「脱出ゲームについて語る」の巻Part2

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「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ十三期生で現2年生の飯田遥歩さんと、ゲームゼミの恒例プロジェクトとなっている「脱出ゲーム」について語っていきます。

 

脱出ゲーム_210131_0

脱出ゲーム企画の指示を出す飯田さん(中央)

 

 

村上

脱出ゲームの概要について触れてきたので、今度はゲームのバランスというか、勝率について聞いていこうかな。

 

飯田

企画段階で想定してたのは、脱出成功率50%でした。結果的にもちょうど50%に…あ、でも、石鍋先生が参加された回は実際にはゲームオーバーだったんですけど、過剰にヒントを出して無理矢理ゴールさせたので、あれを数字に入れていいものかどうか…。

 

村上

過保護はよくないね。石鍋先生はゲームオーバーということで(笑)

 

飯田

分かりました(笑)

 

村上

今回は感染症対策が大きな課題になってたから、ゲーム作り以上に気配りが大変だったよね。

 

飯田

それをギミックとして利用できる場面もあったので、そこは良かったです。ただ脱出ゲームなのに密室にできない部分をどうするかは悩みましたね。企画当初は扉を開けた状態で入口に針金を張り巡らせておいて、「触れたら電気が流れて死ぬぞ」とか、バリアー的な何かが張られてるとか、いくつか換気とギミックを融合する案は出てました。でも映像や仕掛けを制御するための設備がそこに配置されてたので、それを見られないように暗幕で仕切るという方法をとりました。

 

脱出ゲーム_210131_1

脱出ゲームの進行管理や映像の再生などを行なっている舞台裏の様子。

 

村上

最初の構想だと、部屋にスモークを焚いて、そこにレーザーポインタをあてて光線状のバリアみたいにしようとか色々出てたけど、それはそれで何かと制約が大きくてお蔵入りという事に…。

 

飯田

密室じゃない部分をどう補うかっていうところと、消毒に気を配る部分が大変でした。毎回ギミックを消毒したり使い捨ての手袋をつけてもらったり。でも薄手のゴム手袋を配った時は、医療現場っぽく演出できてお客様のテンションも上がってたみたいです。

 

村上

最初ファミレスのサラダバーにあるビニールの手袋にしようと話してたよね。結果的にゴム製にしたことで雰囲気作りには貢献できてよかった。

 

飯田

そういう意味では、コロナに振り回されてる感じはなかったですね。

 

村上

じゃちょっと話を戻して、脱出ゲームならではの面白さとは?

 

飯田

コミュニケーションそのものの遊びですね。

 

村上

「ゲーム制作応用」の授業の中で「マイナスのものをプラスにするのは簡単だけど、プラスのものを更にプラスにするのは難しい」って話をしたよね。つまりゲーミフィケーションを企画するとき「ネガティブな要素をポジティブに変える過程に面白さ盛り込むアイデアは簡単に思いつくけど、逆にポジティブな要素つまり心が満たされている状況に対して更に何かをプラスするのは困難」って話。

 

飯田

あの課題は本当に難しかったですね。

 

村上

脱出ゲームって、お宝を目指して頑張るんじゃなくて、そこに居たら殺されるから脱出するっていうネガティブな動機があるから目的作りは簡単。応用の授業の中で出した課題は「欲求を満たしている状態で、更に何を足せば新たな遊びが生まれるのか」だから、皆頭抱えてたよね。

 

飯田

宝探しだと人によってモチベーションが変わると思うんですよ。宝があればラッキーだけど別に宝がなかったとしても現状維持だから構わないっていう。

でも脱出ゲームに関しては「脱出せざるを得ない」って目標が明確なんですよね。向かうところはみんな一緒だし、

 

村上

今度は運営の話をしてみよう。ゲーム作りって、締め切りに間に合うようにワークフローを組んで、最終的にみんなの作ったデータが一つに統合されてゲームの形になれば一通り完成はするよね。でも脱出ゲームって、演劇と同じで、本番を迎える段階で一人でも欠けるとアウト。しかも60分という制限時間の中で全てのことがリアルタイムで動くから、一秒たりともお客様を退屈させないためにスタッフ・キャスト全員が脳みそフル回転状態で全力で動かないといけないよね。

 

飯田

今回の脱出ゲームの強みは、演技力の高いメンバーがいたり、キャストの一人が途中で覚醒したり(笑)。キャストが頑張ってくれたお陰で世界観も確立できましたし、そのテンションに引っ張られてスタッフもモチベーション上がりましたね。私がシナリオを書いてるときから「この役どころはこの人のイメージでいこう」「この人ならできるだろう」って考えてて、結果アンケートをみても演技力の部分を凄く褒めていただけてました。

 

村上

本番中のキャストとスタッフの連絡方法は?

 

飯田

LINEで逐一状況を知らせ合いながら各自が動いてましたね。タイムラインがすごいことになってました。

 

村上

それくらい状況を見て、今こうだからそろそろヒント出して、とか、**さんは何を用意して、とか。ゲーム制作のワークフロー以上に、あの極限の緊張状態での運営そのものを経験することにこのプロジェクトの意義ってあると思うのね。

 

飯田

本当そうですね。お客さんが入ったらもう一時停止もできないし、最後までやり切るしかないですよね。大変でしたけど本当に良い経験でした。

 

村上

一度このプロジェクトを経験すると途端にゼミ生同士の結束が固まって、相当色んな部分が鍛えられるなって感じる。今後社会に出たり物づくりをするときラクになると思うよ。

 

飯田

プランニングの面ではゲームバランスを考える勉強になりました。私は運営のリーダーだったんですけど、ゼミの他のメンバーから怖がられてたみたいで、なかなか話しかけてもらえなかったんですよ。私、思ったことはストレートに言うので。そこが徐々に打ち解け合えたのが良かったです。

 

村上

今年度ってコロナの関係で前期授業がZOOMで始まって、メンバーの特性もよく分からないまま後期の脱出ゲーム制作本番を迎えたから、余計に壁は大きかったね。

 

飯田

前期のZOOM授業では全然交流も何もできなかったですね。それが脱出ゲームを通してやっと見えてきて、運営本番を通してまた更に分かって来て、ゲーム作りでの発見もたくさんあったんですけど、それ以上にゼミのメンバーに対する発見も多かったですね。

 

村上

緊張感の高いグループワークだと本性が表れやすいからね、良くも悪くも(笑)

 

飯田

今まで気を遣ってあまり言えなかったんだろうなってこともズバズバと言ってくれるようになりましたし、ただ大人しい印象しかなかった人が凄い仕事をしてくれたりとか。性格だけじゃなくてそれぞれのポジションが見えてきたのが大きな収穫でした。

 

村上

実は毎年授業計画を練る段階で、そろそろ脱出ゲームに変わる何か他のプロジェクトをやろうかなって悩むんだよね。他の大学でも普通にやり始めたからもういいかなって。

でも実際にこうやって終わってみて、その後の皆の表情を見てると、来年はもう少しハードルを上げてやってみようかなって思う。

 

飯田

それ大事だと思います。脱出ゲームでなくてもいいのかも知れないですけど、共同作業で何か一つのことを成し遂げるっていうのは絶対にあった方が良いですね。

ゲームゼミの伝統行事になってるっていうのも良いと思います。どうやって先輩を越えるかっていうのもモチベーションを上げる要因だったりするので。

あと、アンケートで「来年も挑戦したいです」って書いてくれた他学科の学生が何人かいたので…。

 

村上

そうかぁ。じゃあ来年もやるかぁ。

というわけで来年もやります(笑)

 

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