キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズvol.45「奥田菜陽と菊竹茉由と卒制作品『i』について語るの巻」 Part3

「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

 

ゼミ通ヒーローズV ol.45 「奥田菜陽と菊竹茉由と卒制作品『 i 』について語るの巻」Part 2 の 続き

 

 

村上

リズムゲームって、これからどう変わっていくと思う?ぶっちゃけコナミの『ビートマニア』からゲームデザインとしては何も変わってないわけでしょ。ノーツが飛んできて、タイミングに合わせてボタンを押すっていう。

 

奥田菜陽(以下、奥田)

処理の仕方のレパートリーが増えてますよね。「横にスライドする」とか、VRの『ビートセイバー』なんかだと「斬る」っていう遊び方だったり。

 

村上

動作のバリエーションは増えてるけど、結局は「タイミングに合わせてノーツを叩く」ことに違いはないよね、プログラム的には。だから体験デザインとして拡張するしかないのかもね。介護施設に『太鼓の達人』が導入されてて、リズムに合わせて体を動かすことが脳の活性化につながったり老化防止につながったりと言われてるけども。

 

奥田

体験の拡張以外にも、他ジャンルとの組み合わせのパターンもよく見かけますよね。リズムゲームとしての進化というよりかは、何か他のものと融合して新しい価値を生み出すみたいな感じですかね。

 

村上

『SEKIRO』なんかが分かりやすい例かな。リズム感がないと瞬殺されるっていう。

 

菊竹茉由(以下、菊竹)

デバイスもどんどん変わっていくだろうし。ボタンを押すだけっていうのも多少の気持ち良さはあるけど、また違う何かがほしいですね。

 

村上

究極的には、本当にプレイヤーが指揮者になって、自分の動きによって全体が変わっていくようなものが理想的なんじゃないかな。今は、曲が固定で、それに自分が合わせていく形だけど、実際に奏でていく感覚があった方が能動性も高まるんじゃないかと。

 

菊竹

初期の企画書だと、自分で音を出してそれをマイクで拾って、実際に演奏するのどうよ、って話したことがあります。

 

奥田

確かに、もっと創造的な要素を加えたいっていう話が出てましたね。

 

村上

では、ぼちぼちしめようか。

 

菊竹

私は、合評のときに先生全員にコントローラーを実際に持ってもらいたかったっていうのが一つ心残りなんですよね。振った時の気持ちよさって、見てるだけでは伝わらなくて、コントローラーの振動も実装してたので、それは触らないと絶対分からないことで。

画面を賑やかにしたり演出に拘ったりはしたんですけど、それはあくまで表面的なものであって、ゲームの本質はボタンを押したときの感触に全て込められてるので、ぜひプレイしてほしいなと思いますね。

 

村上

それはゲームゼミ全体が抱える本質的な問題だよね。限られた合評時間で企画の説明とビジュアルの紹介はできるけども、ゲームは鑑賞物ではないから、ゲームを知らない先生にも体験としての面白さを理解してもらうにはかなり伝え方を考えないといけないよね。今年はみんな高い評価をいただいたけど、それは体験デザインとしての評価ではなくてビジュアルのクォリティに対する評価だから、次年度はそこが大きな課題になるのかな。

 

奥田

私の場合、ゲームを学んできて良かったなって思うことは、圧倒的に視野が広がったところですね。特に今年のゲームゼミはジャンルもバラバラで、それぞれがやりたいことやるぞ!って感じで。だから皆の作品がどんなプロセスを経てゲームとして出来ていったのかを知ることができて嬉しかったし勉強になったんですよ。

先生も「ゲームは究極の総合芸術」って言ってましたけど、それは嘘偽りのない良い言葉だなって思ってます。今後の人生に彩が持てるというか、絵を一枚描くにも、テーマの掘り下げから完成までのプロセスをしっかり考える力が身に着いたのは良かったですね。

今回このゲームに関われて、菊竹さんに壮大に仕上げていただいて、とても自信がつきました。

 

菊竹

私も「究極の総合芸術」でシメたかったな(笑)。でも本当に、ゲームって実際に創ってみてわかることばかりでしたね。色んなゲームで遊んできましたけど、細かい演出だったりプレイヤーの誘導だったり、そういう部分に注目できるようになってきたのは、実際にゲームを作ったからこその成果だと思ってます。

あとは、ゲームプランナーとしてやってきて一番良かったと思うところがあって、これ本当に個人的な話なんですけど、私、結構悪夢を見るんですよ。

 

村上

は?

 

菊竹

昔から、うなされて起きることが多いんですよ。でも、「あれ?このネタ、ゲームに使えるんじゃね?」って思い始めて、今ではもう全部メモを取って残してます。良いことも悪いことも、日常の中で起きるあらゆることに対して、見方を変えれば世界が変わるって感じで、結構ポジティブに捉えられるようになってきたので、作ってきて良かったです。

あとは、ゼミリーダーとしてやってきましたけど、普段からあまり人のことを気にかけるようなタイプじゃなかったので、それでも割と全体が見られるように成長できたかなって思ってます。4年間頑張りました(笑)。

 

村上

荒くれ者ばかりのゲームゼミをよく束ねてきたね。

 

奥田

でもお陰で最高の卒展になりました。私が4年間で見てきた卒展の中で一番出来が良かった。めっちゃ好きだったので全員のゲームやり込みましたもん(笑)。

3年生からコロナで隔たれてしまって全然話をしなくなったから、その分最後にまとめてたくさん話ができて楽しかったですよ。

 

村上

打ち上げも何もできなかったもんね…。仕方ないけど。

話す機会は減ったとはいえ、この代は拳で語り合うというか(笑)、根が戦闘集団なので、多くは語らずとも作品を見ればどれだけ本気でやってるかが一発で分かる。

 

菊竹

全員プライド高いよね。

 

奥田

みんな自信ないって言いながらも凄い負けず嫌いだもんね。

 

村上

うちのゼミ生は「攻撃は最大の防御なり」と言わんばかりに、先手必勝で凄いモノを出してくる。ダメ出しされるとメンタルやられるから(笑)、傷つく前に凄い結果を残そうっていう。俺が昔からそういうスタイルで仕事してきたから、知らぬ間にゼミ生にも伝染するんだね…。

 

菊竹

本当にみんな先生に似てきてると思いますよ。

 

村上

みんな春からプロのゲームクリエーターになるので、ここで培ったものを活かして頑張って下さいね。

では、今日はありがとうございました。

 

菊竹奥田

ありがとうございました。

 

 

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