- 2022年6月11日
- イベント
「思い通りにならへんことはおもろいねん」 美工教員展・福本双紅さんの「越境と変化」【文芸表現 学科学生によるレポート】
違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。
文芸表現学科・2年生の山口楓生です。
いつのまにか日中の気温が30度近くまであがるようになり、夏の気配を肌で感じる季節がやってきました。
窓の外が眩しいほど晴れている日は、大学から出るのも少し億劫で、ついつい構内から様子を窺ってしまいます。
今回は、そんな時期にもぴったりな展覧会についてです。
(なお、美工教員展にまつわる一連のレポートでは、一人ずつの教員のみなさんの「つくる人」としての姿をおもに捉えたいので、あえて「〇〇さん」と伝えさせてもらっています)
自然の産物を昇華してゆく、陶芸という営み
今月9日からギャルリ・オーブにて開催される「逸脱する声:美術工芸学科専任教員展」。
普段、美術工芸学科にて教鞭を取られている22名の作家の方たちが、「越境」をテーマにさまざまな作品を出展されている。
今回は、作品とともに展示される、作家たちの「声」をおまとめするにあたって、陶芸家の福本双紅さんにお話をうかがった。
(展覧会について、詳しくはこちらからご覧ください。)
※竹内万里子さん展覧会記事
https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=147939
福本さんにとって陶芸の魅力とは、「思い通りにならないことを、どう受け止めるか、どう投げ返すかという力が試されるところ」だという。
なめらかに波うった口縁、今にも群れをなして流れてゆきそうな紺碧の釉薬。福本さんの陶磁器は、その静謐な佇まいのなかに、ちょっと耳をすませば、すうすうという呼吸の音が聞こえてくるような、生き生きとした表情が窺える。
この生命感は、成形後に器が窯のなかで動き歪んでしまった輪郭、流れ落ちる釉薬の描いた軌跡、そういった自然の産物をそのまま作品へと昇華していく、福本さんならではの向き合いかたのあらわれである。
「関係性って足すだけじゃないと思うんですよ」
そんな福本さんにも、私たちと同じように悩みがあり、スランプがあり、そして先生がたとの出会いがあった。
大学生の頃、失敗経験という武器に気付かせてくれた陶芸の巨匠。大学院生の頃、それまでとことん避けてきたことに向き合うための、ひとつの考えかたを授けてくださった日本思想の教授。そして現在、コラボレーションという形を取りながらも、傷つけあい、揺さぶりあい、自身の常識に風穴を開けてくれる多和田有希さん。
数えきれないほどの出会いが、自分ひとりでは見えなかった選択肢に光を当て、視野や可能性をどこまでも広げてくれる。
思い通りにならないものも、傷つけられるようなことも、福本さんは積極的に受け入れて、自分が変化していく過程を楽しまれている。
いかに、口先だけでなく伝えられるかどうか
芸術家のありかたは、独自の作風や思想を一貫するだけではない。
作りたいものの形や、大切にしたいこと。それらがどれだけ変化しようとも、そこに至るまでの唯一無二の経験がある限り、私たちの独創性は揺るがないのだ。
話が学生のことに及ぶと、それまできっぱりとした京都弁で、過去を辿りつつ真剣に話をしてくださっていた福本さんの声色に明るさが加わった。
この展覧会で、作品が、そして先生方が語るのは、教員としてではなく、先輩作家として、これからの作家となっていく学生たちに向けられた声だ。先人たちがあらゆるものを「越境」してきた過去が、今の私たちが突き当たっている障壁の乗り越えかたを教えてくれるかもしれない。
この貴重な機会に、ぜひ一度、会場へ足を運んでみてはいかがだろうか。
▼ 福本 双紅先生(陶芸家)
https://www.kyoto-art.ac.jp/info/teacher/detail.php?memberId=19025
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