キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.49 亀田幸寛とゲーミフィケーションについて語るの巻

 

 

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

村上

今回はゲームゼミ2年生の亀田幸寛君(以下カメ)と、「ゲーム制作応用Ⅰ」の中で研究制作を行った「ゲーミフィケーション」での成果物について話を聞いていきたいと思います。

 

亀田

はい、ゲームゼミ2年生の亀田幸寛です。宜しくお願いします。

 

 

村上

ゼミ面談をそのまま文字起こししたらこうなった的な感じで記事にしていくので、いつもの感じで行きましょう。

まずは月並みな質問から。カメがこの道を目指した経緯を聞かせてくれる?

 

亀田

高校までは陸上を頑張ってきて、それ以外はあまり深く考えずに生きてきたんですけど、コロナの影響で大会がなくなって拠り所がなくなってしまったんですね。自粛生活の間中、友達と朝までLINE通話とかして何となくダラダラと時間が過ぎていって、この時にふと「昔からゲーム好きでずっと遊んできたな」って思ったんですよ。単にゲームが好きというだけじゃなくて、これだけ長く続けてこれたっていうのは何か理由があるんだろうって思って。

部活以外だと、ゲームと絵を描くことはずっと続けてきたので、これを活かせる大学はないかなと思って、ここのオープンキャンパスに来て「これやーん」ってなりました。

 

村上

「これやーん」の決め手は何だったの?

 

亀田

授業説明だけじゃなくて、理念とか概念的な部分も掘り下げて説明してくれたからですね。

好奇心は強い方なので、ここならそれを満たしてくれて、学びたいことが学べると思ったんです。

 

村上

で、実際に入学して、今はオープンキャンパスのスタッフをやったり、マンデープロジェクトのスタッフと、代議員と、その代議員の中でもリーダーズっていう全体統括的な役割を担っていたりして、かなりアグレッシブだけど、それは陸上の大会がなくなったことによるフラストレーションの発散?それとも好奇心旺盛だからとりあえず何でもやってみたいと思った?

 

亀田

どっちも違いますね(笑)

 

村上

違うんかい

 

亀田

僕実は石橋を叩きすぎる性格で、正直ビビりなんですよ。今はだいぶ無理して頑張ってますけど。でもオープンキャンパスでの話を聞いて、挑戦するっていうことに否定的な考えが湧かなくて色々やれるようになった、って感じですね。

 

村上

なにそのカッコいい名言(笑)

蜂が飛べる理由が「飛べないことを知らないから」だったり、『STAR WARS』の制作チームが「不可能の基準がよく分からないから凄い映画が出来ちゃいました」っていう話を思い出した。

 

 

村上

では本題になっているゲーミフィケーションの概念について聞いていこうかな。

 

亀田

ゲーミフィケーションっていうのは、ゲームの中のゲーム性を抽出して別の物事に置き換えることで、人の動きを能動的なものに変えていくっていう考え方のことですね。

…あってます?

 

村上

あってる

 

亀田

何気なく過ごしている日常生活の中で、何か問題が起きたときにそれを直接解決するんじゃなくて、楽しみながらいつのまにか夢中になっていて、その副産物として実は根本の問題解決に繋がっているっていうものです。

 

村上

よくできました。副産物っていうキーワードがミソだよね。

よく「ゲームを使って問題を解決する」と勘違いされがちなんだけど、ゲームではないっていうところも大きなポイント。

さてそんなゲーミフィケーションを勉強した上で、今回カメのチームが制作したものを紹介してくれる?

 

亀田

コロナが流行って、アルコール消毒だったり距離感だったりマスクの着用だったり、エチケットが注目されてましたよね。でも時間が経つにつれて、慣れによって気持ちも緩んできてるなと思ったので、今回はその中でもアルコール消毒について考えてみました。

プッシュ式のアルコール消毒液が置いてあってもスルーする人が増えてるので、これをゲーミフィケーションで解決できないかと。

手をかざすと自動で噴霧されるものとか色々出てきてる中で、「プッシュする」動作そのものを面白くできないかと考えました。消毒しようとして押すんじゃなくて、押したくなるような楽しい仕掛けがあって、結果として消毒できているというイメージですね。

 

 

村上

元々の意図はそうだったけど、作っていくうちに変わってきたよね。

 

亀田

そうなんですよ。企画当初は、ただ「押したくなる」を重視していて、その流れで偶然今の形になっていきました。

SONY製の「MESH」っていう大変お世話になったセンサーがありまして、これを使ったらもっと面白くできるんじゃないかと思って色々試してるうちに、「消毒をすると、普段は聞こえるはずのないウィルスたちの叫び声が聞こえてくる」っていう案が出てきて…。

ボタンを押したくなるんじゃなくて、悲鳴が聞こえてきたら面白がって他の人も消毒したくなるんじゃないかと。

で、僕が自分の絶叫を録音して、その声を流すことにしました。

 

村上

プロセスは変わったけど、最終的な目的はブレずに維持できたね。

 

亀田

そうです。最初は「押す」だけが目的だったので、触れたくなるように猫の肉球みたいな装飾を加える案が出たりしました。でもMESHを仕込んだらやれることが急に増えて面白くなってしまって。

 

村上

なるほどね。じゃ、具体的な仕組みについて説明してくれる?

 

亀田

まず、アルコール消毒用ポンプのノズル部分に、MESHの人感センサーを仕込んで、台の裏に音声再生用の端末を一台設置しました。

ポンプを押すとセンサーが反応して、Bluetoothで端末に情報が送られて、そこで予め録音されていたウィルスの絶叫が再生されるという仕掛けになってます。

音声が再生されるまでに若干のタイムラグが設けてあるので、プッシュして両手をこすり合わせるタイミングで絶叫が聞こえるというわけですね。

 

村上

あのタイミングは絶妙だったね。

 

亀田

そうですね。更に、MESH側でカウントのプログラムを組み込んで、5回プッシュすると、絶叫の後に「ち~ん!」という効果音が鳴って、これで完全にウィルスが昇天されましたよと(笑)

この仕様は企画当初は存在してなくて、もう少し面白いことができないかって思って色々いじっているうちに後から加わった形になります。

ちなみにこれ、完成したものを実験的にビットサミット主催の学生ゲームジャムの会場とか、オープンキャンパスの入り口に置かせてもらったりして、大勢の方に触れてもらってました。

 

 

村上

稼働回数もMESH上で登録されてるよね。何人くらいだった?

 

亀田

ゲームジャムの会場では300カウントになっていたので、60人分の亀田がヤラれました

で、オープンキャンパスの会場では200カウントだったので、40人分の亀田がヤラれました

 

村上

結構やられたね(笑)

カメの絶叫だけでもインパクトあるのに、会場では「ち~ん!」て鳴った瞬間は確実に全員笑ってたのが印象的だったな。

 

亀田

ぎゃあぁぁぁ!!からの「ち~ん…」なので、テンションの落差で笑っちゃいますよね。

 

村上

このチーム、最初から仕上げまで、授業中ずっと大爆笑してたよね。

教室中にカメの絶叫が鳴りっ放しで、他のチームからも「笑っちゃって集中できないのであのチーム何とかしてください」って指摘されるレベルだった(笑)

 

亀田

自分で言うのもナンですけど、俺おもろいっスね(笑)

 

村上

そういうの大事。

今まで色んなゲーム会社で仕事してきたけど、笑いのある会社って、雑談からどんどんアイデアが生まれてきて、気付けば面白いゲームが出来上がってたっていう部分もあって、そういう所とは長くお付き合いしたいなって思うよね。

 

亀田

作り手が楽しまないと人に楽しんでもらうものが作れないんで、ずっとバカみたいに笑ってました。

 

村上

課題が出されると、大抵「こんな課題を出された。だから締め切りまでに仕上げなければならない」っていうやらされ感を持ってしまって、結局締め切り前は徹夜続きでSNSが荒れる(笑)

このチームの場合は、触れた人がどんな風に反応するかがイメージできてるからモチベーションも維持できたのかなって思う。もっと楽しませてやれ、って。

 

亀田

それはありますね。何が面白いのかを明確に説明したわけでもないのに面白さのポイントが人に伝わっていくっていうのが嬉しかったですね。最初はサンプルで声を吹き込んで実験をしただけだったのに、それを偶然聞いた他のチームメンバーが笑ってるところを見て、人の反応を見ながらどんどん形にしていくっていう作り方もアリなんだなって思いましたね。

 

村上

デジタルゲームの場合は最初にガチガチに仕様を固めてから作らないと後で致命的なバグが発生したりシステムが破綻することがあるけど、今回みたいな課題の場合には、とにかく手を動かしてたくさん実験をしながら形にしていくのが大事だね。

 

亀田

試行錯誤の間に面白さが見つかることがあるので、臨機応変っていう創作姿勢が凄く大事だなって思いました。

 

村上

「面白さ」に気付く力と、その断片的な面白さを編集して繋ぎ合わせていく力が大事だね。

単純に経験値が面白さとか自信を生むってことに気付いてもらえたらいいかな。

ちなみに、これからのゲームゼミの野望として「京都をおもしろくしよう計画」が進んでいて、ゲーミフィケーションだったりシリアスゲームだったりと、単なるゲーム作りに留まらない色んな研究をして、とにかく京都中のゲーム研究機関や行政、ゲーム開発企業を巻き込んで社会を面白くしたい。

 

亀田

でっか(笑)

 

村上

細かい数字の話ばかりするのも精神的にしんどいし、どうせうちは独立愚連隊みたいなゼミだから、多少他学科から煙たがられても面白いと思うものならなんでもやっちゃえ、て感じ。

で、カメの野望は?

 

亀田

最初は単純に自分のゲームを作りたいとか学んでみたいとか、でしたね。

 

村上

ちっさ(笑)

 

亀田

ゲーム作りだけじゃなくて、ゲーミフィケーションの研究もできたことで、もっと人を面白がらせたり驚かせたいっていう方向に変わってきてますね。その過程でまずゲーム会社に入って実績を積みたいなと。

 

村上

目的と手段の順番が素晴らしいね。会社に就職することを目的にすると辛くなるけど、入った後で何をしたいのかをイメージできてるって最強の武器だと思う。

 

亀田

最初に、石橋を叩いて渡るって話しましたけど、過去の自分は、石橋を渡ることすらできませんでしたからね。でも実際に色んなものを作って、笑っていただいて、とりあえず石橋を渡ることはできるようになりました。

 

村上

じゃ次の目標は「石橋を叩く」じゃなくて「鋼鉄の橋を作る」ことかな(笑)

 

亀田

絶対壊れない橋(笑)

そうですね、とりあえずゼミを面白くすることに関しては任せて下さい。

 

村上

了解。これからのゲームゼミをよろしく頼むよ。

というわけで今回はありがとうございました。

 

亀田

ありがとうございました!

 

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