キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.60 俵迫かなめ・パクイニョン・山室美菜子と学科展作品「Candaor(キャンドール)」について語るの巻 Part2

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

「Candaor」を制作したパク・イニョンさん(左)、山室美菜子さん(中)、俵迫かなめさん(右)

 

 ゼミ通ヒーローズVol.60 俵迫かなめ・パクイニョン・山室美菜子と学科展作品「Candaor(キャンドール)」について語るの巻Part1の続き

 

 

村上

このゲームを制作する上で苦労したポイントってある?

 

パク・イニョン(以下イニョン)

最初から仕様のビジュアルイメージも明確だったし、途中で企画が変わることなくずっと一つのコンセプトを守って作ってきたので、私としては苦労した点はなかったですね。

 

村上

企画立ち上げの段階から全くコンセプトがブレなかったもんね。

 

俵迫かなめ(以下俵迫)

そうですね。最初にしっかりと仕様の軸を決め切ったので、そこが良かったですね。

プログラマーの山室さんと連携するときに、デジタルゲームとしてしっかりしたものを作るのが初めてっていうのもあって、自分が考えたギミックをプログラミングに落とし込むときにどれだけの労力がかかるのかが見えない点はちょっと難しかったです。なのでまず簡単にプレイヤーに遊んでもらえそうなギミックを提案して、プログラミング的に作業量がどれくらいになるのかを山室さんに検証してもらって、期限を守れる方法を考えながらお互いがうまく進行できるような落としどころを探していきました。

 

山室美菜子(以下山室)

私はとにかく「できない」っていうのが嫌な性格なので、とりあえずやってみるよって返して、夏休みに入るまでに細かい打ち合わせを全て済ませておいて、夏休みはもう作業をするだけという形になってたかと思います。

 

 

 

村上

4月に企画がスタートして、6月頭にはバグだらけで構わないから一通り遊べるものを用意せよ、とそれだけ伝えたらちゃんとプレイアブルなもので想像を超えるものが時間通りに出来てきたから感心した…ていうか驚いた。

 

イニョン

みなさんすごく頑張ってくれました。

 

村上

イニョンの場合は、イメージボードというか仕様を渡されてからこれも早い段階で全体のビジュアル素材が上がってたよね。

 

イニョン

そうですね。最初に世界設定とゲームコンセプトを決めてあったので、ビジュアルデザインは進めやすかったですね。ステージデザインは私がやったんですが、一人でやると自分でスケジュールを組んで進捗も把握できてました。まあ、私が早く終わらせないと次にみんなに回す仕事が遅くなってしまうので、その辺はちょっと焦りながら作ってました。

 

村上

最初の段階で渡してたダミーデータが既に本番を想定したようなクォリティだったから、全体でのイメージ共有がやりやすかったんじゃないかな。それにかなり早い段階でゲームの基本形ができてたから、残りの期間はとにかく面白くするための調整とか、状況を伝えるための細かい演出を入れることができてたね。

特に今回はアジャイル方式でのゲーム開発を徹底するよう伝えてたから、しっかりゼミの方針を守って、最も理想的なワークフローが実現したと思う。

 

俵迫

そうですね、早めにゲームとして動くようにしてもらったお陰で、あとはゆっくりとクォリティアップした素材に差し替えていく感じで、着実にブラッシュアップすることができました。

 

村上

業務提携みたいな感じの人間関係だったからか、それぞれ言いたいことも遠慮なく言ってたような気もするんだけど。

 

俵迫

みんな仕事人タイプだったんですごいやりやすかったです。

 

イニョン

でもステージをUnity上で組み立てるときに地面のブロックを一つ一つ配置するのが本当に大変で…。もっと効率の良いやり方があったと思うんですけど、それが分からなくて数字入れながら一個一個を調整したのが本当に大変でした。

 

村上

なるほど。マップのモデルデータを丸ごと渡したんじゃなくて、ブロックを一つ渡してそれをUnity上で一個一個手作業で座標を指定して配置したと。

 

山室

はい、1750個(笑)。

だからマップのレイアウトを組むときに、ブロックの配置が変わるのは別に良いんですけど、ブロックのサイズが変わったりしたらもう全部の座標がズレていくから最初からやり直し(笑)。

 

 

イニョン

そういうときはキャラクターのサイズを変えることで対処してましたね。

 

村上

そうね。その場合だったらそっちの方が効率はいいかもね。修正が入った時に、デザインの方で対応するのかプログラマーが対応するのか、そこも効率化を考えてうまくやれてたってことだね。

 

山室

キャラクターを調整する際に、移動速度とかジャンプの高さをめちゃくちゃ細かく調整していきましたね。ブロックの落下速度とジャンプの速度がかみ合わないと絶対面白くないなと思って、落ちる速度を上げたんだったらジャンプをちょっと高くするみたいなことをずっとやってました。

 

村上

速度と高さのバランスがかみ合わなかったらアリ地獄状態でゲームとして成立しなくなるから、這い上がろうとジャンプ連打する焦りを表現できる仕様の実装にすごく苦労してたね。あとはエフェクトに凝ってたように、プレイヤー自身が今何をしててどういう状況にあるのかがちゃんとわかるところが凄いと思った。プロが作る商品では当たり前にやっていることでも、慣れないうちはこのあたりの仕様がおざなりになりやすいから。

 

山室

プログラミングが初めてっていうのが大きかったですけど、最初は何も分からず日々バグとの戦いだったんで、まあ大変でしたね。

 

イニョン

ステージデザインでちょっと惜しかったのが、プレイヤーが実際に触れるギミック以外のただの背景としてのロウソクが所々に配置されてるんですけど、これがプレイヤーを混乱させてしまったみたいで…。最初にキャラクターに火をつけたり消すことはちゃんと理解できても、その火をゲームギミックとは関係ない背景のところに持っていく人が多くて、そこをなんとか修正したいなって思いました。

 

村上

これはプロの現場でもたまにあるんだけど、デザイナーって絵のクォリティを上げたがるから、開かないはずの飾りの扉まで丁寧に作り込んでしまって、結局プレイヤーがその扉の前でボタン連打して開けようとして、開かないと分かって激怒するっていう…。あと、宝箱とか木箱とか、中に何か入ってるんじゃないかと余計な期待をさせておきながら実はただの飾りでした…となると、絵としては美しくてもゲーム画面としては問題アリってことになる。

 

イニョン

そうですね。建物の階段を登ろうとしてる人が結構いたんですけど、あの階段も飾りなのでゲームの進行上は意味がないんです…。

 

村上

建物を描くと当然扉とか階段とか描きたくなるもんね。でもそれはプレイヤーにとっては不必要なものでゲーム進行の邪魔をするだけなので、どこまでを表現してどこまでを記号として割り切るかを考えてビジュアルの設計をしないといけないね。

 

村上

卒業制作とか、将来的にやってみたいことがあれば聞かせてもらいたいな。

 

俵迫

私は今回挑戦したエフェクトにすごく興味を持っていて、今後はもっと表現を高めていきたいですね。ゲームエフェクトがもたらすゲーム性とかゲーム内での演出とか役割っていうところをもっと学んでいきたいと思っているので、卒制ではエフェクトを使ってエンターテインメントが作れないかなと考えています。

 

イニョン

CGで背景を作り込んだのが初めてだったので色々大変なこともあったんですけど、やっぱり私も背景モデリングとかキャラクターのモーションを作るのが楽しかったので、今後はもっとスキルアップしていきたいと思っています。卒業制作はもう最後の学生身分としての制作になるので、社会人ではできないようなものを作りたいと考えてます。

 

山室

私は今回新しい挑戦ということでプログラミングを担当したんですけど、夏休み中に自分の企画を進めながら、ゲームプランニングも面白いなって思ったので、もっと自分のアウトプットしたいものを出していくのと、今イニョンちゃんも言ってたんですけど、学生でしかできないことでいうと、変わったコントローラーを触ってみたいっていうのが正直あって、色んなセンサーを使って何かできたら面白いなってずっと考えているので、小道具類を使ってみて面白いことができたらとふんわり考えてます。

 

村上

このご時世、どこからどこまでがゲームなのかっていう概念とか定義がどんどん曖昧になってきてるから、本当に何でもアリになってきてるね。

現代アートの作品を見て「鑑賞という行為の中にこういうゲーム性があります」と言われたら、確かにこれはゲームと言えるねって。そんな風に新しい価値をどんどん生み出していけるように、今後もぜひ頑張ってください。

 

 

 

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